
「RX-7」といえば、スポーツカーを作り出すその哲学が世界的に認められている「マツダ」を代表するスポーツカーのブランドです。
「マツダ」のアイデンティティとも言える「RE(ロータリーエンジン)」を中核に据えて、その特性や高性能さを活かした動力性能の高さやハンドリングの良さが特徴のモデルです。その歴史を遡ると、1978年に発売された初代の「SA22C型」に辿り着きます。ここではその初代の「RX-7」である「SA22C型」にスポットを当てて、当時の話題などを振り返っていきましょう。
●文:往機人(月刊自家用車編集部)
ロータリーエンジンのために専用開発された、マツダのフラッグシップスポーツ
初代の「RX-7」が誕生したのは1978年です。
1959年に「NSU・バンケル社」が発表した夢のエンジン「RE」にその後の生き残りをかけて「東洋工業(マツダの前身)」の命運を預けて以来、「RE」の進化に情熱を捧げ続けてきた「マツダ」ですが、1970年代中盤に起こったオイルショックとそれに伴う不況という、「RE」にとって最大の逆境に巻き込まれながら、持ち前の強い信念と精神で乗り越えていきました。
撮影車は1978年式のリミテッド。全長×全幅×全高:4285×1675×1260mm、ホイールベース:2420mm、トレッド(前/後)1420/1400mm、車両重量:1005kg、乗車定員:4名 ミッション:5速MT/3速AT、駆動方式:FR、エンジン:573cc☓2 水冷直列2ローター、圧縮費:1:9.4、最大出力:130PS/7000rpm、最大トルク:16.5kg-m/4000rpm、燃料タンク:55ℓ(レギュラー)、サスペンション(前/後):独立懸架ストラット式/独立懸架4リンク式、ブレーキ(前/後)ディスク/リーディングトレーリング、タイヤサイズ:185/70SR13、販売価格:169万円(東京地区店頭価格・5MT)
そうして日本の経済も徐々に好転の兆しが見え始めた中で、「マツダ」はオイルショックによる痛手の傷も癒えきっていない状況にもかかわらず、「世界にREの良さを再認識させるには、REの特色を活かしたスポーツカーを開発するべきだ」との意気込みで、新たなスポーツカーの開発をスタートします。
そうしてできあがったのがこの初代「RX-7」というわけです。
リヤのガラスハッチ部は3分割式となり、センターのガラス部分のみがガス式ダンパーにより開閉する。
オイルショックを乗り越え、世界を魅了したリアルスポーツへ
状況的にも予算的にも苦しい中で開発がおこなわれた「RX-7」は、“火事場の馬鹿力”が発揮されたのかと思うくらいに出来が良く、世界的に高い評価を得ました。
「SA型」と名付けられたRE搭載スポーツカー専用のプラットフォームを開発することにより、エンジンをフロントミッドシップに搭載し、前後重量配分はスポーツカーの理想とされる数値に近い「50.7:49.3」を実現。いかにこの「RX-7」の開発が本気だったかが窺えるポイントのひとつです。
エンジンは先のオイルショックによる逆境を踏まえて、573ccローター×2の「12A型」に大幅な改良を加えました。
「REAPS」と名付けた排気ガスを再燃焼させる「サーマルリアクター方式」を開発して、排出ガスの清浄化を果たすと共に、その進化版の「REAPS5」では燃費を40%も改善しています。
それでいてパワーは130psを維持しています。
また、1983年のマイナーチェンジでターボ仕様の「12A-T」が追加され、最高出力は165psへと大きく引き上げられました。
足まわりもスポーツカーの最高峰を目指して練り上げられました。1005㎏という軽量な車重と相まって、当時のスポーツカーのベンチマークとされていたポルシェのフロントエンジン車「944」と比較しても遜色ないどころか、軽快性で上回っているというほどに高い評価を得ていました。
初期の12A型ロータリーエンジンはNA仕様。REAPSと呼ばれるサーマルリアクターで排気ガス規制に対応。ロータリーは排ガス対策がしやすかったという逸話も。1983年にはターボ仕様も設定されている。
空調、オーディオ、スイッチ類などを備えたセンターコンソールと、その上に左右対称デザインのダッシュボードが組み合わされる。
メーターはセンターがタコ、右がスピード、左が時計、水温、燃料の5連メーター。タコメーターは起動時に電圧計として作動する。
この車両には3速オートマチックミッションが装着されていた。ATはRX-7専用のもので、ロータリーとの相性も良好。
愛される一方で、「プアマンズ・ポルシェ」という不名誉な呼ばれ方も…
そうして動力性能もハンドリングも世界トップレベルに仕上げられ、価格もライバル的なスポーツカーたちより大幅に低く抑えられたことで、国内ではデビュー直後にバックオーダーを抱えるほどの人気だったそうです。
世界市場でも、北米を始め、欧州でも好評を博してヒットを実現しました。
そんな高評価を得た「RX-7」ですが、その一方で「プアマンズ・ポルシェ」という、直訳すると「貧乏人のためのポルシェ」となる不名誉なあだ名で呼ばれることもあったそうです。
そのうちの多くは、リーズナブルに高性能を味わえるスポーツカーということで親しみを込めてそう呼んだようですが、当時はそのデザインを揶揄する意見もチラホラ聞こえてきました。曰く「ポルシェ924のパクリ」というものです。
「RX-7」のデザインは、当時のスーパーカーのトレンドを採り入れた、ノーズがスラントして尖ったフォルムにリトラクタブル式ヘッドライトを採用したフォルムが特徴ですが、それが「ポルシェ・924」に酷似しているとしてパクリ疑惑が囁かれました。
その真偽のほどは分かりませんが、「RX-7」の開発コンセプトは「RE」を活かした本格スポーツカーを作るというものです。
それをカタチで表現するためにボンネットを限界まで低く抑え、当時のトレンドだったリトラクタブル式ヘッドライトを採用しました。
キャビンは飛行機のキャノピーをイメージして、全周をガラスが回り込む凝ったつくりとしています。
正直、似てるか似ていないかで言えば、明らかに似ていますが、個人的にはその経過を知る以上「結果的に似てしまった」という見解を採りたいと思います。
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