「ニックネームは水中メガネ」そう呼ばれる理由はリアのデザインにあった。ユニークな愛称のホンダのカッコいいクーペスタイルの名車を紹介

360㏄ 時代の軽自動車販売台数のピークは、1970年の125万5000台。大阪で 万博が開かれ、東名、名神高速が全通して本格的な高速時代を迎えたこの時期は、日本の自動車産業にとってもひとつのピークとなった。庶民にもマイカーが夢ではなくなり、高級車から軽自動車に至るまで、個性豊かなモデルが各社から続々と登場する活況を呈したのだ。その時流に乗り、43か月連続で軽四輪乗用車国内販売台数1位を独走するN360をベースとして開発されたパーソナルクーペがZだ。

●文:月刊自家用車編集部

クーペのかっこよさと手頃な価格水中メガネの愛称で人気者に

ホンダが1967年春に発売したN360は大ヒットし、軽自動車ブームの火付け役になった。N360が街にあふれるようになると、並みの軽自動車では飽き足らない、というユーザーも増えてきた。上級クラスにはスタイリッシュなクーペやハードトップも珍しくない。多様化するユーザーニーズに応え、1970年10月にホンダが送り出したのが、N360をベースとして開発されたパーソナルクーペ、ホンダZだ。

ホンダZ。小さいながら粋なクーペスタイルで、丸形ヘッドライトに独立したグリルが当時新鮮だった。

軽自動車初のスペシャリティカーで、小さいながら粋なクーペスタイルを採用した。特に丸形ヘッドライトに独立したグリルが当時としては新鮮だった。また、リヤはハッチゲート付きとなり、ブラックアウトした窓枠が個性的だったため「水中メガネ」のニックネームが与えられている。

初期モデルのプラットフォームやエンジンは、N360の最終型から譲り受けている。そのため、エンジンは空冷4サイクル2気筒SOHCとなった。また、トップグレードのGSは軽自動車初の5速MTや前輪ディスクブレーキ、ラジアルタイヤなどを標準装備した。

発売当初空冷だったエンジンは、1年後に水冷に変更。画像はダイナミックシリーズに積まれた3 6馬力の水冷ツインキャブエンジン。

1971年11月にはライフベースとなり、水冷ツインキャブエンジンに換裝されている。さらに1年後には、当時流行していたセンターピラーのないピラーレスハードトップになり、これまでになかったスペシャリティカー旋風を軽自動車の世界に巻き起こすことになる。

ホンダZ 写真ギャラリー

独立丸形3眼メーターを採用。スポーティ感を演出する木目調パネルも奢られている。空冷エンジン時には「効かない」と悪評だったヒーターは水冷化で改善。「1800キロカロリーの強力な温水式」を謳う。

バケット調のスポーティな前席。

「水中メガネ」と呼ばれたリヤガラスは開閉可能なハッチゲートであった。

スタイルの特徴はガラスハッチを縁取る黒い樹脂部品。そこから「水中メガネ」という愛称で人気者となる。(※主要諸元データは記事下部に掲載)

1972年、当時流行していたセンターピラーのないピラーレスハードトップに変更された。

水冷エンジンに換装されたZ GTL(1971年)とセンターピラーを取り払いピラーレスとしたZ ハードトップGL(1972年)

【ホンダZ 主要データ(GTL・1971年式)】
●全長×全幅×全高:299㎜5×1295㎜×1275㎜ ●ホイールベース:2080㎜ ●車両重量:510㎏●エンジン(EA型):356㏄直列2気筒SOHC(水冷)●最高出力:36PS/9000rpm ●最大トルク:3.2㎏-m/7000rpm ●トランスミッション:5速MT ●最小回転半径:4.4m ●タイヤ:5.20-104PR ◎新車当時価格:46万1000円

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