
7月26~27日にオートポリスで行われるスーパー耐久シリーズ第5戦に、ニュルブルクリンク24時間レースで鍛えたGRヤリスDATとバイオエタノール混合低炭素燃料「E20」を搭載したGR86が投入される。モータースポーツを開発の現場と位置付けるトヨタが、過酷なサーキットで得た知見を市販車へ還元し、カーボンニュートラルを見据えた挑戦が始まった。
●文:月刊自家用車編集部 ●写真:トヨタ自動車株式会社
ニュル24時間レースで鍛えたGRヤリスDATを国内の厳しい環境で検証
GRヤリスDATは、WRCやラリーイベントなどさまざまな道で鍛えられ、市販車にフィードバックするためスーパー耐久シリーズに「104号車」として参戦してきた。
今年6月にはこのGRヤリスDATをベースに、過酷な環境を走り切るための専用装備やセッティングを施し、6年ぶりにニュルブルクリンク24時間レースに挑戦。日本のサーキットで繰り返し磨き上げてきた成果を発揮して完走し、ドライバーたちが予定周回数を超えてなお走り続けるほど手応えを得たという。
オートポリス大会では、このニュル仕様のGRヤリスDATを32号車として投入し、高温多湿な日本の夏という異なる環境でサスペンション性能やエンジン出力などの知見を得る狙いだ。
従来から参戦している104号車も引き続き走らせ、仕様の異なる2台から収集したデータをニュルブルクリンクやスーパー耐久の活動に双方でフィードバックする。
低炭素燃料E20を搭載したGR86の挑戦
28号車GR86
もう1台の注目は、ENEOSが製造するバイオエタノール混合低炭素燃料「E20」を搭載した28号車GR86だ。
E20はガソリンに約20%のバイオエタノールを混合した低炭素燃料で、2025年5月の富士24時間レースでも使用され、燃料トラブルなしに523周分のデータと知見を収集できた。
今回のオートポリスでは前回と同じ燃料を異なる環境で使用し、さらなる技術検証を進めることで、ENEOSと自動車メーカーによるAll Japan体制でカーボンニュートラル社会の実現を目指す。
ミッドシップエンジン搭載のGRヤリスMコンセプトは開発を継続
東京オートサロン2025で披露されたGRヤリスMコンセプトは、GRヤリスのさらなる可能性を模索するため開発が進められている。
ミッドシップレイアウト特有の止まる・曲がる・走る動作の難しさに直面しており、より完成度を高めるため今回のレース参戦は見送られた。
今後のレース出場を目標に、課題抽出と改善を続けながら「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」に取り組む姿勢は変わらない。
トヨタは市販車の進化とモータースポーツ活動を両輪と位置付け、レースを通じて得た知見を商品開発へフィードバックする方針だ。
ニュルブルクリンクで鍛えたGRヤリスDATを日本の高温多湿なサーキットに持ち込み、低炭素燃料を積んだGR86で新たなデータを収集することで、環境技術や車両性能の向上を図る。さらに、ミッドシップのGRヤリスMコンセプト開発を継続するなど、未来のスポーツカーづくりに向けた挑戦も続いている。
今後のスーパー耐久シリーズでの活躍と開発成果に注目したい。
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