
キャンピングカーは欲しい、でも普段使いの不便さや運転の難しさが気になる。そんな悩みに応えるのが日産セレナベースの「ラクネルステイ・スイート」だ。ミニバンならではの快適な走行性能と、大人2人が余裕で寝られるフルフラットベッドを両立。あえて5人乗り仕様にすることで実現した広大な室内空間は、まさに「移動するスイートルーム」。日常と非日常をシームレスに繋ぐ、新しいキャンピングカーのカタチを解説する。
●文:月刊自家用車編集部 ●写真:編集部
キャンピングカー選びのジレンマを、解決すべく開発された
国内キャンピングカー市場は、レジャー需要の深化のみならず、災害時のシェルターやテレワーク拠点としての活用といった多用途性への関心の高まりを背景に著しい成長を遂げている。ユーザーがキャンピングカーに求める本質的価値は、「プライベートな空間でリラックスできること」や「時間を気にせず出かけられる」といった「自由」と「プライベート空間」の確保にあることが各種アンケート調査から明らかになっている。
しかしながら、従来のキャンピングカーにはいくつかの構造的課題が存在する。特に、居住性を追求するあまり車両が大型化し、運転の難易度や駐車場所の制約、燃費といった日常使用における機動性が犠牲になるケースが散見される。また、逆に機動性を重視したコンパクトなモデルでは居住空間の快適性や設備の充実度が不十分となるジレンマを抱えていた。
このようなトレードオフの関係性を打破し、日常的な機動性と非日常的な居住性の両立という、一見して二律背反的な要求に応えるべく設計されたのが、メティオがリリースした「ラクネルステイ・スイート」だ。
日産セレナをベースにした「ラクネルステイ・スイート」はミニバンをベースにしたキャンピングカーで、カテゴリーとしては「バンコン」と呼ばれるタイプ。対面ダイネットスタイルのリラックスモードでは大人4〜5人がゆったりとくつろげる。
ベッドフレームやファニチャーには軽量かつ強靭な3Dアルミフレームを採用。ナイトテーブルとしても使えるカウンター付きキャビネットにはAC100Vコンセントやシガーソケット、USB電源を集約したスイッチパネルを装備する。
設計思想の根幹をなすベース車両の選択がポイント
「ラクネルステイ・スイート」は、日産のミニバン「セレナ」をベース車両として採用している。
この選択自体が、本モデルの性格を決定づける極めて戦略的な判断だ。セレナは乗用車として広く普及しており、その走行安定性、静粛性、そして先進運転支援システム「プロパイロット」に代表される快適な運転環境は、既に多くのユーザーによって実証済み。
キャンピングカーの用途の約8割が「旅行」であり、そのうち約7割が「2泊3日以上」の行程であるというデータからも、目的地までの移動時間がいかに重要な要素であるかは自明であろう。
「ラクネルステイ・スイート」は、この移動の過程におけるドライバーの負荷を大幅に軽減し、「移動そのものを楽しむ」という価値を提供する。これは、従来の商用バンベースのキャンピングカー(バンコン)では到達し得なかった領域だ。
さらに、セレナが元来持つデュアルバックドアのような装備は、駐車スペースが限られた場所での荷物の出し入れを容易にし、ミニバンならではの利便性をキャンピングカーとしての利用シーンにおいても遺憾なく発揮する。まさに、日常使いの延長線上に非日常の旅をシームレスに接続するという、設計思想の根幹がここにあるのだ。
サードシートを跳ね上げれば最長1700mmのラゲッジスペースが生まれる。キャンピングカーとしてはもちろんのこと、トランポ利用も可能でユーティリティは高い。リアラゲッジの下に電装系を収納するため、e-POWERモデルは選択できない。
空間価値を最大化する、革新的なレイアウトと構造を採用
「ラクネルステイ・スイート」の最も特筆すべき点は、その独創的な室内レイアウトと、それを実現する軽量かつ高剛性な3Dアルミフレーム構造にある。
もともと8人乗りであるセレナを、あえて乗車定員5名へとコンバートしている。この「引き算の思考」こそが、本モデルの空間価値を飛躍的に高めることに成功した要因である。定員を減らすことで生み出された広大な空間は、対面ダイネットやフルサイズのベッドへと変幻自在に姿を変える。就寝時には頑丈なフレームの上にマットを展開することで、大人ふたりが寝返りを打っても揺らぐことのない安定したベッドが出現する。これは移動中の快適性だけでなく「滞在(ステイ)」の質を最大限に高めようという明確な意志の表れだ。
電装系においてもその設計思想は一貫している。信頼性の高いCTEK社製の走行充電システムと1500Wインバーター、そして外部電源入力端子を標準で装備。これにより、オートキャンプ場などでの外部電力利用はもちろん、走行中にサブバッテリーを効率的に充電し、エンジン停止後も安定して電化製品が使用可能だ。これらの電装ユニットは、ラゲッジアンダーボックスに集約されており、室内空間をスポイルすることなく機能性を確保している点もポイントだろう。
電装パックは、ベースパック/走行充電/サブバッテリー/1500Wインバーター/天井照明/ボルトメーター/4 連スイッチ/12Vソケット2箇所/USBをセットにして120万円。これにサイドキャビネットや脱着式センターテーブル、3rd 3点式シートベルトなどを架装した車両の価格を加えた金額が「ラクネルステイ・スイート」の販売価格となる。
ミニバンベースのメリットである走行時の快適性を担保しながら、滞在時(ステイ)の利便性を追求した「ラクネルステイ・スイート」フリップダウンモニターはオプション装備となる。フロアベッドのサイズは長さ1920mm、幅1270mm(いずれも最大時)を確保。
多目的利用の可能性を考慮した、本格的な装備機能も注入
「ラクネルステイ・スイート」が提供する価値は、単なるレジャー用途に限定されるものではない。その機動性と快適なプライベート空間は、現代社会が抱える多様な課題に対するソリューションとなりうるポテンシャルを秘めている。
第一に、ワーケーションやリモートワークの拠点としての活用だ。安定した電源と快適な室内空間は、場所にとらわれない新しい働き方を実践するための理想的なプラットフォームを提供する。
第二に、防災シェルターとしての役割。自然災害が頻発する我が国において、プライバシーが確保され、かつ最低限の生活インフラを備えた移動可能な空間の重要性は論をまたない。有事の際には家族を守るための「第二の家」として機能するだろう。
このように、「ラクネルステイ・スイート」は、個人のライフスタイルを豊かにするだけでなく、社会インフラの一部としても機能する多面的な価値を内包している。
デュアルバックドアを備え、ハーフドア(上部)とバックドア(全体)を状況に応じて開閉できるため使い勝手は広がる。左右スライドドアは駐車スペースが限られている際に大きな武器となる。
「移動」と「居住」の最適解から生まれた、ミニバンキャンパーという新しい提案
ここまで分析した通り、キャンピングカー「ラクネルステイ・スイート」は、乗用ミニバンをベースとすることで日常的な「機動性」を確保しつつ、独自のアルミフレーム構造とレイアウト設計によってキャンピングカーとしての「居住性」を極めて高い次元で両立させた、画期的なプロダクトであると結論付けられる。
それは、従来のキャンピングカーが抱えていた構造的ジレンマに対するひとつの明確な回答であり、「移動可能なプライベート空間」という新たな価値を市場に提示した。8人乗りをあえて5人乗りに変更するという大胆な発想は、単なる定員の削減ではなく、空間利用の哲学におけるコペルニクス的転回であったと言える。
キャンピングカー市場が拡大を続ける中、消費者のニーズはますます多様化・高度化していくだろう。そのような状況下で「ラクネルステイ・スイート」が示した設計思想、すなわち「日常と非日常のシームレスな接続」と「移動と滞在の質の最大化」というコンセプトは、今後のモビリティと居住空間の融合を占う上で、極めて重要な示唆を与えるものである。これは単なる一台の自動車の紹介ではない。我々の生活様式、ひいては社会そのものの未来のあり方を考察するための、重要なケーススタディなのである。
ミニバンをベースにすることで走行時も滞在時も快適性を確保した「ラクネルステイ・スイート」。豪華装備のキャンピングカーのようなシンクやトイレなどは無いため主な用途は車中泊になるが、日常用途に使える利便性は大きな魅力。また、強力な運転支援のプロパイロットが使えるのは、本当に大きなメリットといえる。
●ラクネルステイ・スイート車両価格(税込み)
・日産セレナ 2WD Xベース+電装パック:391万9200円
・日産セレナ 4WD Xベース+電装パック:418万5400円
・日産セレナ 2WD XVベース+電装パック:418万8700円
・日産セレナ 4WD XVベース+電装パック:445万4900円
※e-POWERモデルは対応不可。ガソリンハイウェイスターVモデルは別途相談
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(日産)
高級車路線から一転、小型のファミリーセダンへと方向転換 2代目「スカイライン(S50系)」が登場したのは1963年です。 戦後の国産メーカーのほとんどがそうであったように、「プリンス自動車工業」も公用[…]
デジタル機能と実用性の大幅アップデート 今回のマイナーチェンジにおける最大のポイントは、走行性能の磨き上げだけでなく、日常の使い勝手を底上げする装備の拡充にある。 Googleマップなどのアプリが車内[…]
自動車アフターパーツの総合メーカーである株式会社データシステムは、日産・エクストレイル用の「TV-KIT」をリリースした。「NissanConnect インフォテインメントシステム 12.3インチ G[…]
日産モータースポーツ&カスタマイズが幅広く展開する「AUTECH(オーテック)」は、スポーティさと高級感を高めることで日産車の魅力をより引き出したプレミアムモデルたちだ。ブランド発祥の地である湘南・茅[…]
「日産リーフ」B5 Sグレード B7グレードよりも、価格は約80万円ほど低く設定 3代目となる新型「日産リーフ」は、昨年10月に78kWhのバッテリーを搭載するB7グレード(518万8700円〜)を発[…]
最新の関連記事(キャンピングカー)
コンパクトボディにラクネルの独創性を詰め込みクラスを超えた居住性を実現 ラクネルは、埼玉県岩槻市でオリジナルキャンピングカーを展開するメティオの人気シリーズで、トヨタ•タウンエースをベースにしたバンコ[…]
車中泊を安心して、かつ快適に楽しみたい方におすすめのRVパーク 日本RV協会が推し進めている「RVパーク」とは「より安全・安心・快適なくるま旅」をキャンピングカーなどで自動車旅行を楽しんでいるユーザー[…]
キャラバンの広大なキャビンは、旅クルマとして理想的なサイズ感 バンコンこと「バンコンバージョン」。なかでもトヨタのハイエースをベースにしたバンコンは人気だが、受注が絞られている関係もあって、多くのビル[…]
「完成形」を押し付けない車内収納という発想 車内収納といえば、最初から用途が決められた完成品が主流だ。だが、ライフスタイルが多様化した今、その「完成度の高さ」が足かせになる場面も増えている。ワークヴォ[…]
ミニバンサイズに収まる取り回しと、ハイルーフが生む余白 バカンチェスは全長4695mm、全幅1695mmという数値は、ノアやヴォクシー、セレナといった国産ミニバンと大きく変わらず、日常の駐車場や狭い路[…]
人気記事ランキング(全体)
活用していないスペースにスッポリとハマる バラエティ豊かなカー用品・バイク用品を多数リリースするMAXWINがリリースする「トヨタ車系USBカーチャージャー K-USB01-T4B」の特徴は、空いてい[…]
大人になって手に入れる「秘密基地」という発想 子どもの頃に夢見た秘密基地は、大人になるといつの間にか忘れてしまう存在だ。ただ、N-VAN コンポはその感覚を現代的に、しかも極めて現実的な形で呼び戻して[…]
シガーソケット直挿しという、いちばん現実的な答え このスマホホルダーの大きな特徴は、アクセサリソケットに直接取り付ける構造にある。USBケーブルを別途引き回す必要がなく、電源確保から設置までが一気に完[…]
国内導入が遅れている状況だが、待たされるだけの魅力あり 新型キックスは、従来のコンパクトカーの延長線上にあるSUVという枠組みを大きく超え、クラスレスな存在感を持つ一台へと進化を遂げる。海外では202[…]
車中泊を安心して、かつ快適に楽しみたい方におすすめのRVパーク 日本RV協会が推し進めている「RVパーク」とは「より安全・安心・快適なくるま旅」をキャンピングカーなどで自動車旅行を楽しんでいるユーザー[…]
最新の投稿記事(全体)
WONDER NS660 ホンダS660をNSXにしてしまうボディーキット! 軽自動車をモディファイしてベース車とは違うカタチに仕上げるのは東京オートサロンでもお馴染みの手法ですが、徹底的にやろうにも[…]
愛車の「こだわり」が家族の思い出になる このコンテストは、リアルなパパ・ママの視点でカスタマイズされた「最強の子育て車」を決定するSNS参加型イベント。Instagramへの投稿を通じて、全国の子育て[…]
現行型フォレスター。外装ではボディサイドのe-BOXERオーナメントを廃止して、すっきりと洗練されたエクステリアに変更される。ボディカラーではカシミアゴールド・オパールがラインアップから外れるようだ。[…]
今回の一部仕様変更では、安全装備のさらなる充実が図られている。衝突被害軽減ブレーキを最新の「デュアルセンサーブレーキサポートII」に刷新し、車線逸脱抑制機能を全車に標準装備。さらに、全車速追従機能付の[…]
高級車路線から一転、小型のファミリーセダンへと方向転換 2代目「スカイライン(S50系)」が登場したのは1963年です。 戦後の国産メーカーのほとんどがそうであったように、「プリンス自動車工業」も公用[…]
- 1
- 2
































