「GT-R」と共通の心臓が与えられた、世界に誇るラグジュアリースポーツ「Z432」の魅力を解説│月刊自家用車WEB - 厳選クルマ情報

「GT-R」と共通の心臓が与えられた、世界に誇るラグジュアリースポーツ「Z432」の魅力を解説

「GT-R」と共通の心臓が与えられた、世界に誇るラグジュアリースポーツ「Z432」の魅力を解説

長いボンネットとコンパクトな居住空間、誰もが直感的に納得するカッコよさというスポーツカーの定型を、国産車として最初に体現したモデルが、S30フェアレディZだろう。その中でも異彩を放っていたのが、フラッグシップのZ432だ。

●文:月刊自家用車編集部

長いボンネットとコンパクトな居住空間、誰もが直感的に納得するカッコよさというスポーツカーの定型を、国産車として最初に体現したモデルが、初代フェアレディZ(S30型)。Z432はスカイラインGT- Rと同じS20型エンジンを搭載していることでも有名。

"最後の個性派スポーツ"と評価されたSR311フェアレディ2000

その軽やかな響きとは裏腹に、フェアレディという名は、国産スポーツカーのパイオニアの血統を受け継ぐ伝統の名称だ。その系譜をたどれば、ダットサンスポーツを祖先に持つフェアレディSPL212 にまでさかのぼることができる。だが、市販スポーツのアイコンとして、その名を不動のものとしたのは、なんといってもフェアレディ2000(SR311 型)だろう。それは、快適さとは程遠いスパルタンな乗り味も併せて"最後の個性派スポーツ"の評判にふさわしいものだった。

ダットサンスポーツ時代からフェアレディのメイン市場は北米。フェアレディSP310も国内向けと同時に輸出用(SPL310)を発表。北米で評判になった。その後、2Lに排気量アップされたSR311型。

新時代の量産スポーツとして開発された初代フェアレディZ

アグレッシブなパフォーマンスは国内よりもむしろ北米で高い評価を獲得し、既存の欧米コンパーチブル勢を押しのけて瞬く間に大人気スポーツの地位にまで上り詰めた。その人気を背景に、日産が海外市場をターゲットに組み込み、来る1970年代をリードすべく新時代の量産スポーツカーとして企画開発されたのが、初代フェアレディZ(S30型)である。

S30型フェアレディZは、開発当初から他車との部品共通化で原価を安く抑えることを目指した。とりわけブルーバード510とはシャシーをはじめ多くの共用関係にある。

スカイラインGT-Rと同じS20型DOHCエンジンを搭載したZ432

S30型の最大の特徴ともいえるロングノーズの内には直列6気筒エンジンを搭載するが、当初、国内仕様に設定されたのは2種類の2Lエンジンだ。中でも量販モデルとなったのはSOHC のL20型搭載車で、SUツインキャブで130PSを発生し、0→400km加速で優れる4速と最高速度で上回る5速という、2種類のトランスミッションを設定していた。

そして、残るもう一つのエンジンが、同じ2L直6でも、スカイラインGT-Rと共通のDOHCのS20型。この高性能エンジンを搭載するフェアレディZのトップグレードがここで紹介するZ432 なのだ。そのネーミングはエンジンの動弁系すなわち4バルブ、3連ソレックスキャブ、ツインカムシャフトからとられており、Zの中でもとりわけ高性能エンジンを搭載したシリーズ最高パフォーマンス仕様であることを誇示している。

レース界を席巻したスカイラインGT-R(ハコスカ)と同じS20型2L DOHCエンジンを搭載したS30型フェアレディZのフラッグシップ432。そのネーミングの由来は、4バルブ・3連ソレックスキャブ・ツインカムシャフト。

主要諸元:フェアレディZ432(1971年式)
●全長×全幅×全高:4115㎜×1630㎜×1290㎜●ホイールベース:2305㎜●車両重量:1040㎏●エンジン(S20型):水冷直列6気筒DOHC1989㏄ ●最高出力:160PS/7000rpm ●最大トルク:18.0㎏-m/5600rpm ●最高速度:210㎞/h●0-400m加速:15.8秒●最小回転半径:4.8m●燃料タンク容量:60L●サスペンション:前後ストラット式●ブレーキ:前ディスク/後ドラム●トランスミッション:5速MT●タイヤサイズ:6.95-14-4PR●乗車定員:2名 ◎新車当時価格:185万円(マグネシウムホイール付)

彫りの深い造形のダッシュボードに取り付けられた独立型3連メーター。右から水温/油温計、電流/燃料計、油圧計の順。

黒で統一されたインテリア。ヘッドレスト一体型バケットシートはリクライニングも可能。

エンジン回転計と速度計。回転計は1万回転、速度計は240㎞/hまで刻まれる。

同じエンジンを積むスカイラインGT-Rと違いブレーキは倍力装置付きで軽い。

レース前提で開発されたエンジンを搭載しながら、ラグジュアリー志向も併せ持つ高級&希少スポーツだった

ただ、どこまでもレースでの勝利にフォーカスしたGT-Rとは異なり、Z432 は高性能のGTに照準して開発されたモデルだった。ラグジュアリーグレード同様のインテリアも備えるなど日常ユースにも不足なく対応しているのが美点でもあった。そのため車両価格は、当時のベーシックなZのほぼ2倍にも相当する185万円で、フラッグシップモデルらしくLSDや贅沢なマグネシウム製ホイールまで標準装備する高級車だった。

まさに日産の技術の粋を集めたフラッグシップモデルといえる存在だった432。高回転までスムーズに吹け上がるフィーリングと、レーシングカー直系のメカニズムによる高い走行性能、そして心地よいレーシングサウンドは多くのファンを魅了した。

しかし、北米輸出仕様モデルだった240Zが2年後に国内発売されると、2.4Lエンジンを搭載する240Zのほうが、排気量のアドバンテージから低速トルクが太く、日常使用での扱い易さという点で評価が高かった。クルマとしての相性はむしろ240Zのほうが良かったのだ。

また、競技用ベース車両として徹底的に軽量化を図った、いわばフェアレディZ版GT-R的なバージョンの432R も存在したが、公道仕様に登録された例は極めて稀のようだ。

この432 を含むフェアレディZの初代モデルS30型は、世界規模の大ヒット車となり、日産のイメージリーダーとして9年間の長きにわたり生産され、グローバル販売52万台という、単一型式のスポーツカーとしては未曽有の大記録を樹立することとなった。ちなみに432の生産台数はわずか419台と当時としてもかなり希少なモデルであった。

スカイラインGT-R(ハコスカ)にも搭載されていたS20型エンジンは、1気筒あたり4バルブを持つ2LのDOHCエンジン。

対米輸出から2年遅れて日本でも発売となった240Z。240Z-Gはその上級グレードで、FRPのGノーズとヘッドライトカバー、オーバーフェンダーを持ち、25㎏重いにもかかわらず、向上した空力で最高時速は432と同じく210㎞/hを誇った。

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