ドリフトマシンとして重宝された軽量・コンパクトなFRスポーツ。アニメの影響で、今も絶大な人気を誇る「不朽の名車=ハチロク」│月刊自家用車WEB - 厳選クルマ情報

ドリフトマシンとして重宝された軽量・コンパクトなFRスポーツ。アニメの影響で、今も絶大な人気を誇る「不朽の名車=ハチロク」

ドリフトマシンとして重宝された軽量・コンパクトなFRスポーツ。アニメの影響で、今も絶大な人気を誇る「不朽の名車=ハチロク」

5代目カローラレビンとスプリンタートレノは、その車両型式から「ハチロク」の愛称で親しまれたクルマだ。FFが主流になりつつあった当時にあって、あえてFRを選択。そして新開発の1.6LDOHCエンジン「4A-GEU型」を搭載。このパワーユニットはNAのみの設定で、必ずしも高出力を発生したわけではない。しかし、900kg台の軽量な車体と相まって、キビキビとした運転の楽しさを実現した。漫画『頭文字D』の主人公の愛車として有名になったことで、絶版後も国内外で爆発的な人気を獲得。そのシンプルなFRレイアウトと素直な挙動は、特にドリフトの練習車としても愛され、今なお多くのファンに支持される伝説的な名車なのだ。

●文:月刊自家用車編集部

最上級グレードであるGT APEX。カラードバンパーやフォグランプが標準装備されるなど、外観が豪華な仕様となっている。レビンとトレノの大きな違いは、ヘッドライト形状。レビンは固定式、トレノはリトラクタブル式となる。

ボディ形状も2種類用意された。当時人気が高かったのは、スポーティなシルエットの3ドアハッチバック。対して2ドアクーペは落ち着きのセダンライクなシルエットだった。独立したトランクルームをもつことから、剛性は2ドアクーペのほうが若干高かった。

FF化の風潮の中にあって、あえてFRを継承したスポーツクーペ

1966年に初代が誕生したカローラシリーズは、2015年5月末に世界で初めて累計販売台数が1000万台に到達した。その偉業は、市場に合わせて仕様/タイプを細やかに作り分ける手法で達成されたもの。1983年に登場した5代目の80系にFFとFRという2種の駆動方式が用意されていたのも、その伝統をよく表していた。

トヨタ車のFF化は比較的遅く、1978年のターセル/コルサが最初。しかも、エンジン縦置きというメカは必ずしも完成度が高くなかった。そこで80系カローラ/スプリンターのセダン系は新開発のエンジン横置きFFとしたが、クーペ系はコンベンショナルなFRとする慎重なやり方を選んだのだ。

独立したトランクをもつ2ドアクーペ。発売当時は3ドアハードトップのほうが人気が高かったが、2ドアクーペは、落ち着きのあるデザインで上級感を演出していた。

スプリンタートレノ

基本的にはカローラレビンと共通だが、ヘッドランプ形状がリトラクタブル式を採用して差別化されたスプリンタートレノ。

シャシーは先代の流用だったが、新開発4AGツインカムとFRの組み合わせは、刺激的な操縦性を発揮した

AE86は、FF化が進む1980年代初頭において、あえて先代のTE71型のFRプラットフォームをベースに開発された。これは、当時のトヨタがハイパワーFF車のハンドリング性能にまだ慎重だったことや、モータースポーツへの参戦を念頭に置いていたことが理由のひとつとされている。

先代のプラットフォームを流用したFRの足は、リヤサスがリンク式のリジッド。今日のFRスポーツのような高いスタビリティは望めなかったが、そのぶん、鋭い吹けを見せる新開発の4A -G型ツインカムエンジンとの組み合わせは刺激的な操縦性を実現し、腕のあるドライバーなら自在に振り回せた。レースでも、このクルマで派手なドリフトを決めた土屋圭市氏が〝ドリキン〞の異名で人気を呼ぶ。

4A-GE型エンジン
新たに開発された直列4気筒DOHCエンジン。当時の同クラスエンジンと比較して軽量かつコンパクトで、高回転までスムーズに回るフィーリングや鋳鉄製のシリンダーブロックによる高い耐久性で高い評価を得た。AE86の搭載されたNA16バルブエンジンは、グロス表示で130psを発生した。

元々、ドリフトベース車としての人気はあったが、現在の高人気は漫画での露出による影響が大きい

当時の他社のスポーツカーと比べると絶対的なパワーは劣っていたが、その非力さゆえにエンジンの力を使い切る楽しさがあり、ドライビングテクニックを磨くのに最適な車として愛され続けたモデルである。後に、漫画『頭文字D』の主人公の愛車として有名になったことで、その人気は不動のものとなったのである。

最上級のGT-APEXには、エレクトロニックディスプレイメーターも設定された。計器板左右の大型ロータリースイッチは左がワイパー、右がライト。

リクライニングとスライドに加え、サイドサポート、ヘッドレスト上下、シート先端の上下と合計5つのアジャストが可能なGT系のスポー
ツシート。5人乗りだが、後席は着座部分がえぐられた、実質2人掛けのラウンジシートを採用した。またシートバックは分割可倒式。

ツインカムの「ハチロク」、シングルカムの「ハチゴー」

先代までは、ツインカムエンジン搭載車だけをレビン/トレノと呼び差別化されていたが、このモデルからはノッチバックとハッチバックが用意されるクーペ系すべてがそれを名乗った。ただ、型式は、シングルカム車がAE85、ツインカム車はAE86だったこともあり、クルマ好きはツインカム車を型式名である「ハチロク」と呼び、シングルカム車と区別した。

その名を譲り受けた現在のトヨタ86の開発者自身も、そんな走り屋のひとりだったという。

スプリンタートレノ1.5SE(AE85)

基本的なシルエットは、AE86と共通だが、決定的な違いは搭載されるエンジン。外観の違いは、無塗装フロントバンパーやサイドモールの違い、そしてオーバーフェンダーがボディ同色となっている。

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