
9月24日からリリースが始まるホンダの新たなパーソナルモビリティ「UNI-ONE(ユニワン)」。車いすのようでいて全然違う!? SFアニメの世界に出てきそうなとてもユニークな乗り物だけに、さまざまな活用法が考えられるがその魅力とは?
●まとめ:月刊自家用車編集部 ●文:鈴木ケンイチ
自宅からではなく「目的地で使う」
ホンダから新たなパーソナルモビリティ「UNI-ONE」が先日発表された。これは、ジャンル的には電動車いすと同等になるが、移動先の「目的地で利用するモビリティ」として利用される。
つまり、個人所有ではなく、施設などでインフラのように使われるパーソナルモビリティだ。そのため、発売は法人向けの「サービス契約(本体、バッテリー、メンテナンス、保険をパッケージ化)」で行われる。料金は、3年契約10台未満の場合で月々12万円。10台以上になると月々10万円になる。6年契約では10台未満が9万円、10台以上が8万円になる。発売は9月24日から始まるが、すでに10社ほどと契約済みであるという。販売計画は年間200台を5年間、合計1000台を予定する。
9月8日に開催された「UNI-ONE」発表会では、いち早く導入を決めた株式会社サンリオエンターテイメントの小巻亜矢社長が参加しており、大分にあるサンリオキャラクターパーク「ハーモニーランド」にて、来場者や場内スタッフに利用することが説明された。
ASIMOの技術とオムニドライブ
「UNI-ONE」は、ホンダがASIMOなどのロボット研究で培った技術が活用されている。椅子のような車体には左右に2輪のOmni Traction Drive System(オムニ・トラクション・ドライブ・システム)が内蔵されている。Omni Traction Drive Systemはひとつの車輪で、前後左右を自由自在に動けるという技術だ。
この上に人が座り、ASIMOで培ったバランス制御によって、自立・走行を実現する。座った人が、重心を移動すると、それにあわせて、前後左右に自在に移動することができるのだ。体重移動で操縦できるため両手が自由になる。
つまり、傘をさすこともできれば、移動しながらのショッピングやティータイムも楽しめるというわけ。もちろん、ショッピングモールなど広い施設の点検作業やオフィス内での移動などにも使える。健常者の就労サポートとしても利用できるのだ。また、VRやAR技術と組み合わせることで、アトラクションとしての活用も可能になるという。
体重移動だけで自由自在! 動きに安定感があって安心
「UNI-ONE」の操縦は、とてもシンプル。ローポジションで地面に4本脚で着地しているところに着座する。シートベルトを締めたら、右手にある操作画面の中央スイッチをスワイプすると、全体が立ち上がり、15㎝ほど高いハイポジションになる。ここまでが準備段階。その後は、座ったまま重心を移動すれば、その方向にバランスを取ったまま進んでいくのだ。
実際に試乗してみたが、想像以上に安定感があって安心。勾配がある状態でも安定していた。
前に重心をかければ前進、後ろなら後退、横にかけるとその方向に回転する。車輪は左右にあるだけだが、非常に安定感がある。身体をいろいろと傾けてみたけれど、転ぶような気配は一切なかった。坂道も車体は水平をたもったまま上ってゆく。坂道の途中で、向きを変えても安定しており、個人的にはまったく怖いと思う瞬間はなかった。どうやっても無理だろう、というような意地悪い姿勢も試してみたのだが、そういった場合は自動でローポジションに移行して4本脚を接地させた。とにかく安全なのが印象的だった。
ちなみに、「UNI-ONE」は、背もたれもひじ掛けもないため、上半身を自立できない人は乗車ができない。そういう意味では、車いすの中でも健常者に近い、もしくは健常者向けの乗り物と言えるかもしれない。
ホンダによる、パーソナルモビリティへの挑戦は、1989年ごろにまでさかのぼることができる。15年以上も前となる、2009年には、ASIMOのバランス制御技術とOmni Traction Drive Systemを組み合わせたひょうたん型の「U3-X」も発表している。「U3-X」には、当時、試乗したことがあったが、安定感にもうひとつ課題があった。しかし、ホンダは諦めずに、パーソナルモビリティの開発を続け、ようやく「UNI-ONE」で実用化にこぎつけたのだ。これはまさにホンダの執念。渾身の一台と言える。今後の展開に大いに期待したい!
●UNI-ONE諸元
寸法:ローポジション 全長655×全幅575×全高860㎜/ハイポジション 全長787×全幅662×全高710㎜
シート高さ:ローポジション550㎜/ハイポジション700㎜
車両重量:80㎏
最高速度:時速6㎞(時速4.5㎞、時速3㎞、時速1.5㎞に設定可能)
航続時間:約3時間(航続距離10㎞相当)
バッテリー:交換式リチウムイオンバッテリー
充電時間:約2時間(AC100V専用充電器にて)
走行条件:車いす走行可能エリアを想定/段差は直進で20㎜/傾斜10度(時速4.5㎞以下時)/傾斜6度(時速6㎞時)/濡れたPタイル相当は走行可能/水たまり走行可能/移動用小型車として歩道(公道)を走行可能
防水/雨天対応:IPx4相当
写真ギャラリー
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(ホンダ)
軽の常識を破壊!「ブルドッグ」がEVで復活 「Super-ONE(スーパーワン)」を年配のクルマ好きが見たなら、「おっ!ブルドッグだ!」と盛り上がるはずだ。 ブルドッグとは、ハイトパッケージング採用の[…]
プレリュード以上に多段ミッションのマニュアル車の感覚 今回試乗した開発プロトモデル(ミッドセダン)に搭載されているホンダの最新技術群は、すでに一部の技術はプレリュードにも導入されているが、さらに走りの[…]
ホンダの電動スポーツは「プレリュード」だけじゃない Super-ONE Prototypeは、「e: Dash BOOSTER」をグランドコンセプトに、日常の移動を刺激的で高揚感あふれる体験へと進化さ[…]
薄型キャビンながら広い室内空間を実現 この「Honda 0 Alpha」は、都市と自然の両方に美しく調和し、あらゆる場面で人びとに寄り添うことを目指したSUV。2025年1月のCES 2025で発表さ[…]
「ビッグ3」が反対した法律「マスキー法」と、ホンダの逆転劇 世界で最も早く自動車が普及するモータリゼーションが起きたアメリカでは、1960年代にはその弊害が問題化していました。1940年代からカリフォ[…]
最新の関連記事(ニュース)
軽の常識を破壊!「ブルドッグ」がEVで復活 「Super-ONE(スーパーワン)」を年配のクルマ好きが見たなら、「おっ!ブルドッグだ!」と盛り上がるはずだ。 ブルドッグとは、ハイトパッケージング採用の[…]
30W急速充電対応のシガーチャージャーも投入 発表されたモバイルアクセサリー新製品群は、モバイルアクセサリー市場の拡大と、車両の仕様の変化に伴う車内でのスマートフォン利用増加に対応すべく投入される。 […]
TMS2025で、次期マツダ2のスタディモデルを披露 MAZDA VISION X-COMPACT(マツダ ビジョン クロスコンパクト)は、マツダ2の後継モデルと目されているコンセプトモデル。 もちろ[…]
「一人のため」に設計された、新時代の「ショーファードリブン」 「センチュリーはトヨタ車じゃないから」とは、随分と昔にトヨタの開発者から聞いた言葉だ。その後も同様の話はたびたび耳にする。つまりセンチュリ[…]
●先進のプラグインハイブリッドシステムを採用 「SEALION 6」の最大の特徴は、BYDが独自に開発した高効率プラグインハイブリッドシステム「DM-i(デュアル・モード・インテリジェンス)」を搭載し[…]
人気記事ランキング(全体)
基本を無視すれば、無用のトラブルを引き起こすことも… 整備作業においてボルトやナットの脱着は避けて通れない基本中の基本の作業。それだけに、ソケットレンチやメガネレンチの使用頻度は必然的に高まる。が、ボ[…]
小さな車で、自由が大きく広がる 軽バンが、ただの仕事車という時代は遠い。趣味の基地として、週末の逃避先として、そして日常とのブリッジとして、いま新しい価値を手に入れている。家具職人が仕立てたキャビネッ[…]
リーズナブルなのに本格派! フルフラットになって自由度UP! 福岡は大野城市を拠点とするFun Standard株式会社の、自動車アクセサリブランド「クラフトワークス」は、ユーザーの満足度の高いカー用[…]
TMS2025で、次期マツダ2のスタディモデルを披露 MAZDA VISION X-COMPACT(マツダ ビジョン クロスコンパクト)は、マツダ2の後継モデルと目されているコンセプトモデル。 もちろ[…]
●SUVの「死角」を減らす注目アイテム 人気のSUVだが、その車高の高さやボディサイズがもたらす「死角」は、ドライバーにとって常に付きまとう課題だ。カローラクロスも例外ではなく、運転席から遠い左前輪付[…]
最新の投稿記事(全体)
街乗りも遠出もOK! 運転しやすいコンパクトサイズのキャンピングカー マルチパーパスビークルWALK Jr.を製造•販売するドリーム•エーティーは北海道帯広市にあり、ハイエースやキャラバンベースのキャ[…]
軽の常識を破壊!「ブルドッグ」がEVで復活 「Super-ONE(スーパーワン)」を年配のクルマ好きが見たなら、「おっ!ブルドッグだ!」と盛り上がるはずだ。 ブルドッグとは、ハイトパッケージング採用の[…]
映画「スター・ウォーズ」のデス・スターなど帝国軍の世界観を再現! 大手自動車メーカーが今後の方針やコンセプトカーなどを展示する一方で、キャンピングカーゾーンでは様々なキャンピングカーの展示も行われてい[…]
渋滞はなぜ起こるのか、その根本にあるもの 渋滞は突然現れるように見えるが、実際には静かに積み重なった条件が臨界点を超えた瞬間に可視化される現象だ。最も分かりやすい原因は、道路に流れ込むクルマの数が許容[…]
プレリュード以上に多段ミッションのマニュアル車の感覚 今回試乗した開発プロトモデル(ミッドセダン)に搭載されているホンダの最新技術群は、すでに一部の技術はプレリュードにも導入されているが、さらに走りの[…]
- 1
- 2
























