
ボーフェンジーペン05 GTは、かつてアルピナとして知られた系譜を継ぎ、アルピナ創業家が生産する最新グランツーリスモである。このモデルの設計思想、感性に訴えるパフォーマンス、クラフツマンシップを中心に分析する。単純にスペックだけでは語れない「なぜこのクルマが特別なのか」という本質に迫ってみたい。
●文:月刊自家用車編集部 ●写真:Bovensiepen Automobile GmbH + Co. KG
BMWでもアルピナでもない!「ボーフェンジーペン」の最新プロダクト「05 GT」とは?
ボーフェンジーペンは、ドイツ・ブッフローエを拠点とする家族企業であり、その前身は高性能ラグジュアリーカーで名を馳せた「アルピナ」である。
アルピナはBMWをベースとしながら独自の哲学を貫いてコンプリートカーを生産してきた。車体番号にアルピナ独自の打刻が許され、いわゆるチューニングカーやカスタムカーではなく、ドイツ自動車メーカーのひとつという立ち位置に収まっていたのだ。
そしてアルピナ創業家がアルピナの商標をBMWに売却し、その思想はボーフェンジーペンへと引き継がれた。ボーフェンジーペンとはアルピナ創業家の姓からとられ、アルピナブランドを手放して新たに名乗るにふさわしい名称だ。
ボーフェンジーペンはアルピナ時代と同様に、BMWをベースとしたコンプリートカーを生産し始め、そのコンセプトはアルピナ時代と変わらない。
すなわち「速さ」ではなく「質」を追求する姿勢である。この価値観が、05 GTというモデルにおいて新たな形で結実した。
BMW M5ツーリングをベースに内外をアップデートしたコンプリートカーのボーフェンジーペン05 GT。アルピナ創業家によるプロダクトだけに、より上質かつパフォーマンスアップを施した車体はかつてのアルピナを彷彿とさせる。
05 GTの基本性能とスペック
05 GTは、ステーションワゴン(BMW風に言えば「ツーリング」)形状のボディタイプを採用し、ベースモデルはBMW M5ツーリング。
搭載するBMW M5ベースの4.4リッターV8ツインターボ+PHVのパワートレーンはボーフェンジーペンによるチューンが施され、システム出力800hp、最大トルク1100Nmという圧倒的数値を誇り、0-100km/h加速は3.6秒、最高速度は305km/hに達する。
このスペックのみを見ればスーパーカーの領域に属するが、05 GTの本質はそこにとどまらない。車両重量は約2.5トンと重厚でありながら、その挙動は極めて洗練されている点に特徴がある。すなわち、単なる速さではなく「余裕ある高速性能」が追求されているのはアルピナと同様だ。
搭載するパワートレーンは、BMW M5ベースの4.4リッターV8ツインターボ+PHV。システム出力800hp、最大トルク1100Nmにチューニングされ、0-100km/h加速3.6秒、最高速度は305km/hを実現。4本出しのエキゾーストはアクラポビッチによるチタン製を採用する。
設計思想―美と機能の統合
05 GTの設計において特筆すべきは、デザインとエンジニアリングの不可分性である。外観は代BMW X5や現代的なMINIクーパーほか、数々の名車をデザインしてきたフランク・ステフェンソンによるもので、単なる空力性能の結果ではなく、視覚的均整と機能的合理性が同時に成立するよう設計されている。
フランク・ステファンソンは、数々の歴史的名車を手がけたモロッコ出身の著名なアメリカ人カーデザイナー。近年はマクラーレンのデザインを手掛けたことでも知られている。
その最たるものはボディの最下部全体を走る「ラップアラウンド・デザインライン」で、フロントバンパー、サイドスカート、そしてリアセクションを調和のとれたひとつの全体へと結びつけ、ベースになったBMW M5ツーリングとはまるで異なる趣を構築する。
内装においても同様であり、素材選定から触感、操作系の配置に至るまで、すべてが一貫した思想のもとに構築されている。このような設計は、従来の量産車的発想を超え、むしろ建築や工芸に近いアプローチであると言える。
デザインはフランク・ステフェンソンによるもので、サイドスカートの水平なデザインラインはサイドビューを長く見せ、ワイドなフロントおよびリアセクションと相まり、視覚的に低く、よりスポーティな外観をもたらしている。
ドライビング体験の核心
05 GTの真価は運転時にこそ顕在化する。800hpという数値にもかかわらず、その加速は暴力的ではなく、あくまで滑らかで持続的である。
これはパワートレイン制御の緻密さに起因する。また、車内の静粛性は極めて高く、高速巡航時においても会話が自然に成立するレベルにある。一方で、ドライバーがアクセルを踏み込めば即座に応答するダイナミズムも併せ持つ。この二面性こそが「Fine Driving」の本質だ。
フロントエプロンのデザインはインテークおよび冷却エアーのために必要な空気の流れを確保。インテークファンネルを備え最適化されたエアインテーク及びアクラポビッチのエキゾーストはエンジンソフトウェアの最適化を実現、ナルドなど最高速テストコースで実証されている。
クラフツマンシップと個別性
05 GTは、ボーフェンジーペンの工房において一台ごとに仕立てられる。設計から製造、さらには顧客ごとのカスタマイズまでを一貫して行う体制により、各車両は固有の個性を持つ。
手作業で仕立てられたラヴァリーナ(Lavalina)製ステアリングホイールには、高品質な削り出しのアルミニウム製シフトパドルが備わり、コクピット内のその他すべての物理的な接触点(シートパネル、カップホルダーユニットの周囲のトリム、iDriveコントローラーなど)には、標準で最高級のレザーを奢る。
内装素材やカラーリング、細部の仕上げに至るまで顧客の意向が反映されるため、同一仕様の車両は存在しない。この点において、05 GTは単なる自動車ではなく「所有する作品」としての性格を帯びる。
手作業で仕立てられたラヴァリーナ(Lavalina)製ステアリングホイールの他、各部に上質なレザーを採用。シートバックのトリムパネルは、追加料金なしで希望のカラーに塗装可能だ。インサート自体はレザーで覆われ、「05 GT」のモデル名が刻まれている。
グランツーリスモとしての完成度
05 GTは、その名称が示す通りグランツーリスモとして設計されている。長距離移動における快適性、積載性、乗員の疲労軽減といった要素が高い次元で統合されている点が特徴だ。
その最高のハンドリングと快適な乗り味は、特別に開発されたピレリ製タイヤも功を奏し、タイヤのサイドウォールにある「BOV」のマーキングによって識別できる。
変更されたサポートベアリング、アイバッハ(Eibach)製スプリング、そして特殊なストラットタワーバーによって精緻にチューニングされたサスペンションは、正確でスポーティなハンドリングを提供すると同時に、後席の乗員に対しても最高レベルの乗り心地を届けるという 。
ボーフェンジーペンの哲学が生み出す生産車はパフォーマンス一辺倒のスーパーカーを目指すものではない。ドライバーと乗員に極めて上質かつ快適な乗り心地とそれらを担保する余裕ある運動性能が、結果としてスーパーカー並のポテンシャルに繋がっている。
市場における位置付け
05 GTは約20万ユーロという価格帯に位置し、明確に限定された顧客層を対象とする。すなわち、単なる性能競争では満足せず、ブランドの思想や製造背景に価値を見出す層である。
この点において、本モデルは一般的な高級車市場とは一線を画し、「理解されることで成立する商品」であると評価できる。それは前身であるアルピナとも共通する価値観の創造であり、これまでアルピナを愛好してきた玄人筋により強く訴えかけるだろう。
21インチの軽量鍛造ホイールは20本のミーリング加工(削り出し)されたスポークが軽量化を促し、10本の細長いダブルスポークが独特の視覚効果を生む 。小ロット生産の伝統に則り、各車両には番号入りの製造プレート(シリアルプレート)が配されている。
新時代のラグジュアリースポーツ
ボーフェンジーペン05 GTは、アルピナの伝統を継承しつつ、それを現代的に再解釈したモデルである。その本質は、性能・美・体験の三要素を統合した点にある。
800hpという数値は象徴に過ぎず、真に評価すべきはその制御と調和だ。ゆえに本車はありきたりなコンプリートカーではなく「完成度」という概念そのものを体現する存在だと評価すべきだろう。
真のエンスージアストこそボーフェンジーペンのプロダクトは心に刺さり、その魅力が伝わる玄人好みのハイパフォーマンス・ラグジュアリーカー。その気高き精神性はアルピナ時代よりいささかも損なわれていない。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
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