
今年6月のフルモデルチェンジで登場した新型キックスは、洗練された内外装の仕立てに加え、最新e-POWER搭載による走りの進化もあって、発売2か月で1万1000台を超える受注を集めるなど好調なセールスを記録している。そんな絶好のスタートダッシュを決めたキックスだが、日産はこの勢いをグローバル市場へと波及させるべく、欧州市場への本格投入と英国サンダーランド工場での生産決定を発表した。
●文:月刊自家用車編集部
40年の歴史を誇る英国サンダーランド拠点から、欧州の電動化市場に殴り込み
日産の欧州事業を支えてきた英国サンダーランド工場は、1986年の稼働開始から今年でちょうど操業40周年という節目を迎える。
初代「ブルーバード」の生産から始まり、これまで「キャシュカイ」や「ジューク」、「日産リーフ」など、数々のヒットモデルを世界へ送り出してきた同社最大の主力拠点だ。
日産はこの伝統あるサンダーランド工場に対し、新たに1億7000万ポンド(約350億円)規模の投資を実施することを表明。同工場で生産される10車種目のモデルとして、新型「キックス e-POWER」の生産ラインを立ち上げる決断を下した。
英国サンダーランド工場は、操業40年の歴史を持つ欧州事業のコアファクトリー。高い製造品質で欧州市場へ日産車を送り出し続けている。
欧州市場へ初導入されるキックスに搭載されるのは、進化を遂げた「第3世代 e-POWER」だ。モーター駆動ならではの素早い応答性と優れた静粛性を維持しつつ、ガソリン車同様の手軽さを両立したパワートレーンとして、多様化する欧州ユーザーの電動化ニーズへ力強く応えていくことも、今回の決断の狙いだ。
国内発売からわずか2か月で1万1000台超の受注を達成した新型キックス。洗練されたスタイルと確かな走りのポテンシャルが、目の肥えた日本のユーザーから絶大な支持を集めている。
とはいえ、すでに欧州にはコンパクトサイズのクロスオーバーSUV「キャシュカイ」も投入されている。サイズ的にはBセグに近いキックスに対して、Cセグ寄りのキャシュカイの方が格上のモデルではあるが、改めて過酷な競合がひしめく欧州市場へ新型キックスを満を持して投入するのか?
欧州市場における日産の看板CセグメントSUV「キャシュカイ」。英国価格3万635ポンド(約640万円)〜となる格上モデルであり、サンダーランド工場から世界へ送り出されている高質感な電動SUVだ。
国内でのヒットが証明。欧州市場でも「通用する」3つの絶対的強み
その背景には、欧州での本格展開に先立って日本国内で記録している大ヒットの存在があり、そこで実証された「3つの強み」こそが欧州ユーザーの厳しい目や道路環境にも充分対抗できる武器となるからだ。
第一に挙げられるのが、ヨーロッパの街並みにも映える「スペシャリティデザイン」と高い質感だ。
新型キックスは、先代のカジュアルなシティ派SUVから一転し、プレミアム感を強調したスタイリングへ刷新。全長4365mmという扱いやすいコンパクトサイズでありながら、厚みのあるフロントマスクや力強く張り出したフェンダーにより、一回り大きなSUVにも負けない堂々とした佇まいを見せる。
12.3インチディスプレイを配した先進的なインテリアや質感の高い仕上がりも、デザインとクオリティに妥協しない欧州のドライバーの満足度を確実に満たすはずだ。
全長4365mmという扱いやすいコンパクトサイズを維持しながら、踏ん張り感のあるロワボディと伸びやかなクーペ風フォルムを両立。欧州の狭い路地での取り回しの良さと力強いデザイン性を兼ね備える。
2枚の12.3インチ画面を繋いだ統合型デュアルディスプレイが目を引くコックピット。先進的なIT連携機能と直感的な操作性を両立する実用性の高さも、新型キックスの大きな武器になっている。
包み込まれるような心地よさを追求したシート構造。上級グレードでは上質な合成皮革が施され、肌触りの良さとホールド性を高次元で両立。室内空間全体のクオリティを一段引き上げている。
クーペライクなルーフラインを持ちながらも、リヤシートもしっかり確保された頭上空間を持つ。大人4名が乗車しても膝回りや頭上空間には相当なゆとりがある。
第二に、「第3世代 e-POWER」の走りの評価が高いことだ。
新開発の1.4Lエンジンを発電用に備え、最高出力143PS、最大トルク32.0kg-mを叩き出すパワフルなモーター駆動を実現したことは、高速走行の機会が多い欧州でも真価を発揮するのは明らか。さらにエンジン始動音やロードノイズを極限まで抑え込んだ抜群の遮音性能が与えられたことで、アウトバーンなどの高速巡航時でも静かでストレスのない長距離ドライブを約束してくれるだろう。
英国でのキャシュカイの価格は3万635ポンド(日本円で約640万円)からということを考えると、走り視点でも新型キックスに十分な競争力があることは明らかだ。
そして第三の武器が、ヨーロッパの多様な路面コンディションを自在にいなす電動4WDシステム「e-4ORCE」の存在だ。
前後モーターの駆動力とブレーキを統合制御することで、濡れた石畳や悪路での高い安定性はもちろん、オンロードでも加減速時の不快な姿勢変化を抑え込み、吸い付くようなコーナリング性能を発揮する。ドライバーが意のままに操れるハンドリングと フラットな乗り心地は、まさに「走りの質感」を重視する欧州市場でこそ強く支持される要素になるだろう。
新開発の発電用1.4Lエンジンを備えた「第3世代 e-POWER」。最高出力143PS、最大トルク32.0kg-mを叩き出すモーター駆動により滑らかで力強い静かな加速性能を実現した。
前後ツインモーターを高度に制御する電動4WDシステム「e-4ORCE」。濡れた石畳や雪道での抜群の走破性はもちろん、オンロード走行時の不快な姿勢変化を抑え、フラットな乗り心地を生み出す。
進化を果たした「第3世代e-POWER」は静粛性に優れ、走行音も極めてパワフルかつ静か。特に電動4WDの「e-4ORCE」は、しなやかな乗り心地とフラットな姿勢制御を実現しており、走りの質感は一クラス上のSUVに匹敵する。
長期ビジョンが描く未来へ。グローバル電動化戦略を牽引する大本命モデルにもなりうる
「キックス」は、日本をはじめメキシコやブラジルといった重要拠点で生産され、世界70以上の市場で累計180万台以上を販売してきたグローバルモデルだ。ここに今回、サンダーランド工場での生産体制が加わる。
1986年の操業開始から今年で40周年を迎えるサンダーランド工場は、初代「ブルーバード」の生産開始以来、「1分45秒に1台」というペースで累計1200万台以上を送り出してきた日産の欧州における主要生産拠点だ。かつてEV「リーフ」の欧州生産を担った同工場へ1億7000万ポンド(約350億円以上)を追加投資し、10車種目の生産モデルとして「キックス e-POWER」を組み込む戦略的意義は大きい。
日産は今年4月に発表した長期ビジョンにおいて、グローバルでの商品ポートフォリオを45車種へ集約&最適化し、e-POWERをはじめとする電動化技術の展開を加速させる方針を掲げている。その市場戦略において、欧州市場はリード市場(日本・米国・中国)を補完し、「日産の展開エリアを広げ、全体的な成長を支える」という明確な役割が与えられている。
欧州の研究開発拠点とも連携し、第3世代「e-POWER」や「e-4ORCE」といった最新技術を搭載した新型キックスは、欧州市場での存在感を高めることで、日産のグローバル成長戦略に大きく貢献することを期待されている。
操業40年を誇る英国サンダーランド工場。1億7000万ポンド(約350億円)の投資を経て「キックス e-POWER」の生産がスタートする。
サンダーランド工場の40周年を象徴する2台。1986年の生産開始を飾った初代「ブルーバード」と、欧州の電動化を牽引する最新モデルが並び、同工場が歩んできた40年の歴史と進化の軌跡を物語る。
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