重いのに素直! 日本市場に本気で挑んできた、キアの最新EVバン「PV5」。想定外の「広さと走り」が侮れない。│月刊自家用車WEB - 厳選クルマ情報

重いのに素直! 日本市場に本気で挑んできた、キアの最新EVバン「PV5」。想定外の「広さと走り」が侮れない。

重いのに素直! 日本市場に本気で挑んできた、キアの最新EVバン「PV5」。想定外の「広さと走り」が侮れない。

700万円台の価格帯に投入された、キアの電動ルートバン「PV5」。高級ミニバンがしのぎを削る日本市場において、この無骨で先進的なBEVバンはどう映るのか?

●文:川島茂夫

FF×低床設計で予想を超える広さを実現

1999年に現代自動車の傘下へ入った起亜(キア)は韓国を代表する自動車メーカーのひとつ。その起亜が日本市場へ参入することとなった。ただし乗用車の主力市場ではなく、ルートバンおよびそのワゴン仕様のBEVという構成だ。ワゴン仕様(パッセンジャー)はレジャー志向のミニバンユーザーの選択肢になり得るが、主流に食い込むのは難しい。BEVである点も含め、ニッチ市場向けのモデルと捉えるのが妥当だろう。

しかしPV5は、BEVの可能性を商用バンのニーズに最適化させた点において、非常に興味深い。特に車両サイズに対する荷室容量の大きさは特筆に値する。

この広さを実現できた背景としては、バッテリー以外のパワートレーン主要部をボンネットおよび前席床下に収めた設計を採用したことが大きい。これにより、低い床面高(リヤゲート部で地上高約42cm)を実現しており、この構造は積載力だけでなく、荷物の積み降ろしや乗降性でも大きな利点となっている。

さらに、床下設計を共通化しつつ、複数のサイドパネルやリヤゲート周りを組み合わせる汎用プラットフォームを採用したことも特徴のひとつ。オーダーメイドでの発注には対応していないが、メーカーが用意した仕様の中からユーザーが用途に合わせて柔軟に選択できることは強みだ。

現在、国内導入されているのは両側スライドドアを備えた5ドアモデルで、5人乗り「パッセンジャー(跳ね上げ式リヤゲート)」と、2人乗り「カーゴ(観音開き式リヤゲート)」の2種類となる。バッテリー容量は51.5kWhと71.2kWhの2通りが設定されている。

起亜の日本参入モデル「PV5 パッセンジャー」。両側スライドドアを備えた5名乗りのワゴン仕様で、バッテリーを床下に配置した低床フラット設計が特徴。レジャー用途にも適した広大な荷室空間と、EVならではの滑らかな走りを両立している。

主要諸元(PV5 パッセンジャー プラス ロングレンジ)
●全長×全幅×全高:4695×1895×1925mm ●ホイールベース:2995mm ●車両重量:2140kg ●乗車定員:5名 ●パワーユニット:交流同期電動機(120kW/250Nm)+リチウムイオン電池(71.2kWh) ●駆動方式:FWD(前輪駆動) ●一充電走行距離(WLTCモード):521km ●ブレーキ:ベンチレーテッドディスク(F)/ディスク(R) ●サスペンション:ダブルウィッシュボーン式(F)/トーションビーム式(R) ●タイヤ:215/65R16 ●価格:769万円

WLTCモードにおける満充電航続距離は、最も重量が重いグレード(パッセンジャー・プラス・ロングレンジ/71.2kWh)で521km、同じボディの51.5kWh仕様で377kmとなるため、長距離レジャー用途まで想定しているならば、71.2kWh仕様がベストだろう。

ちなみにもう一方のカーゴでは、大容量バッテリーの重量増加に伴い最大積載量が減少(51.5kWh仕様:650kg→71.2kWh仕様:550kg)する。前席直後までフラットな床が広がる短中距離輸送においては極めて高い実用性を誇る。

この圧倒的なスペース効率は、BEV構造に加えて駆動方式をFWD(前輪駆動)に限定したことで達成された。後輪駆動系を排除したことで極限の低床化が可能となったわけだが、4WDの設定がないことは、山間部などでの利用において明確な課題となり得る。

商用特化型の2名乗りモデル「PV5 カーゴ」。リヤビューには荷物の積み降ろしに有利な観音開き式ゲートを採用。前席直後から広がる超低床フラットフロアにより、短中距離配送から移動オフィスまで高い業務効率を発揮する新時代の電動バンだ。

後席の座面が低め。乗用ミニバンとは異なるシート配置に違和感あり

パッセンジャーのキャビン実用性については評価が分かれるだろう。

後席は足元、頭上ともに広大で座り心地も良好。後席を展開した時でも、一般的な1BOXミニバンのサードシート格納時やセカンドシート折りたたみ時と同等以上の積載性能を確保している。

一見では理想的に思えるが、パワートレーンを前方に配置したことで前席位置が高めで、後席の座面地上高が相対的に低くなっている。一般的な乗用ミニバンのように後席側を高くして見晴らしや開放感を確保する設計とは逆の配置であるため、室内幅に余裕があっても商用車に「乗用シート」を載せた感は拭えない。

直線的な水平基調でクリアな前方視界を確保したインパネ周り。12.9インチの大型ナビディスプレイと7.5インチのデジタルクラスターを配置し、視認性と操作性を両立。パッセンジャー仕様では質感の高いレザー調キャメルブラウンシートが上質感を加える。

パワートレーンを前方に配置したことで見晴らしの良い高めの着座位置を実現したフロントシート。キャメル×ネイビーの上質な合皮シートにはパワー調整機構も備わる。Aピラーのアシストグリップや高いアイポイントにより、運転のしやすさも抜群だ。

広大な足元空間と低床フラットフロアが印象的なPV5パッセンジャーのセカンドシート。大人3人が並んでもゆとりある室内幅を確保し、座り心地も良好。前席背面のグリップや低い床面高のおかげで、子育て世代から高齢者までスムーズに乗降できる。

後席を使用した状態でも圧倒的な荷室スペースを確保するPV5パッセンジャーのラゲッジ。低い開口部地上高とスクエアで広大なフラットフロアにより、重い荷物やアウトドアギアの積み降ろしもスムーズ。レジャーから普段使いまで高い実用性を誇る。

低重心が効いた好感触なハンドリング

走りに関しては、外連味のない仕上がりが好印象だ。低回転から力強くアクセルに忠実でありながら、過敏な反応を抑えたコントロールしやすいチューニングが施されている。

電動感(瞬発力)を過剰に誇張せず、扱いやすさを最重視したドライバビリティだ。ステアリングのパドルにより回生ブレーキの強度を3段階で調整できるが、蓄電量9割以上ではバッテリー保護のため最弱に制限される。

ハンドリングは予想以上に好感触。重量物であるバッテリーを床下に敷き詰めた低重心設計のおかげで、2tを超える車重を感じさせない素直な操縦性を実現している。サスペンションはカーゴの方が積載を考慮して硬めだが、車軸周りの振動収束などの総合的なまとまりはカーゴの方が優れている。

静粛性については、エンジン音がないBEVならではの静けさを享受できる反面、ロードノイズなどの室内騒音や外音の透過感が目立ちやすい。音量自体は内燃機関の商用バンより抑えられているものの、音質面での遮音対策は乗用BEVほど徹底されておらず、ここはバンとしての運用効率を優先した結果と言える。

価格(ロングレンジ仕様)はパッセンジャーが約770万円、カーゴが約680万円。同価格帯にはアルファード/ヴェルファイア等の高級ミニバンが存在し、乗用車としての質感や快適性ではそれらが勝る。
しかしPV5の真価はそこではない。圧倒的な低床・大容量スペースと電気自動車ならではの先進性を活かし、ハイエースやキャラバンのように「自分好みの空間を創り出して愉しむ」新たな選択肢として評価すべき一台だ。

床下に重量物のバッテリーを敷き詰めた低重心設計により、2tを超える車重を感じさせない素直で重厚な走りを実現。アクセル操作に対して自然に反応するモーターの出力特性と相まって、フラットで扱いやすいドライバビリティを発揮する。

ステアリング周りに主要機能を集中させたコックピット。右奥のコラムレバーにシフトセレクターとパワースイッチを配置し、センターコンソールの省スペース化に貢献。左右のパドルで回生ブレーキの強度(3段階)を手元で直感的に調整可能だ。

俯瞰映像と鳥瞰CG表示を同時に映し出す高精細モニター。画面下部にはエアコンやシートヒーター等の操作UIが集約されており、画面遷移することなく直感的にコントロール可能。大画面ならではの優れた視認性で取り回しの不安を大幅に軽減してくれる。

ダッシュボード上部に用意された蓋付きのアッパーボックス。

エアコン吹き出し口下に、車両設定用スイッチと電源ポートをすっきりと配置。

ラゲッジ床下に設けられた大容量のアンダーボックス。充電ケーブルや非常用ツール、汚れものの収納に最適。

12.9インチの大型タッチディスプレイに表示されたApple CarPlayの画面。ナビや音楽アプリはもちろん、ChatGPTやCopilotなどの最新アプリにも対応する。

速度やバッテリー残量、航続可能距離などの走行情報をシンプルに集約したデジタル液晶メーター。

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