【残価設定ローンは、どんな人に向いているの?】 普通のカーローンとの違いを大解説

  • 2023/04/16
  • [CREATOR POST]Peacock Blue K.K.
残価設定ローン

●文:[クリエイターチャンネル] Peacock Blue K.K.

すっかり定着した残価設定ローン、その仕組みは?

車種によっては、ユーザーの半数以上が利用するという残価設定ローンは、現金一括や通常のローン(割賦)とともに、クルマを手に入れる方法のひとつとして完全に定着しています。

1990年代に登場したとされる残価設定ローンは、2010年代以降に輸入車ブランドを中心に導入が進み、現在では国内外ほとんどのブランドで新車購入時に利用可能となっています。

残価設定ローンは、車種ごとに設定された将来の買取額(=残価)を差し引いた金額をユーザーが支払うというのが基本的な仕組みです。ほとんどの場合、残価はその車種ごとに設定されていることが一般的です。

一般的に、残価が高ければ高いほどリセールバリューが高い車種ということができます。車両価格に対する残価の割合を示したものを残価率といいますが、3年後で50%前後、5年後で30%前後が平均的な水準となっています。

たとえば、車両価格が300万円かつ3年後の残価率が50%の車種の場合、ユーザーは300万円のうちの50%、つまり、150万円を3年かけて支払うということになります(金利分をのぞく)。

もし残価率が60%の車種であれば、車両価格は同じ300万円でも、ユーザーの支払額は120万円となります。つまり、残価率の高い車種であればあるほど、お得感を感じることができます。

契約期間が終了した後は、「クルマを返却する」か「残価分を現金で支払うか、ローンを組みクルマに乗り続ける」のどちらかを選ぶことになります。

残価設定ローンの大きなメリットは、月々の支払い額を抑えることができる点です。

たとえば、トヨタ公式サイトで新型プリウスの最上級グレード「Z」(車両価格370万円)のWeb見積もりを行なうと、3年(36回払い)・頭金なしで通常のローンを組んだ場合の月々の支払額は11万5600円(初月のみ11万5714円)となります。

一方、同じく3年(36回払い)・頭金なしで残価設定ローンを利用した場合、月々の支払額は7万1600円(初月のみ7万2118円)となり、通常のローンの比べて月々の支払額を4万円以上抑えることができることになります。

トヨタ「プリウス」

通常ローンよりも総支払額が増えるケースも。残価設定ローンのデメリットとは

ただ、残価設定ローンにはデメリットも少なくありません。

一見お得に見える残価設定ローンですが、金利はあくまでも車両価格全体に対して掛かることから、総支払額が大きくなりやすいという点です。

前出のプリウスの「Z」の場合、3年後の残価は166万5000円となります。それまで支払った分と合わせるとその金額は417万1588円となります。

一方、通常のローンの場合の総支払額は416万1714円となり、残価設定ローンを利用する場合よりもわずかに安くなります。

当然、契約期間が長くなればなるほど差額は大きくなります。プリウスの場合、通常のローンの金利は年率7.8%であるのに対し、残価設定ローンは年率5.8%と割安になっていますが、多くの場合、残価設定ローンの方が金利が高く設定されているため、総支払額はさらにふくらむ傾向があります。

こうした点から、インターネット上には残価設定ローンを「ボッタクリ」とさえ称する声も見られます。

たしかに、新車価格に対して40万円以上支払い額が増えるという意味では、まったくお得ではありません。

また、残価設定ローンは基本的に返却を前提としているため、走行距離や車両の状態に制約があります。通常のローンも金利負担はあるものの、そうした制約はないという点が大きな違いです。

つまり、残価設定ローンは、現金一括よりも多くの金額を支払わなければならないのに対して、走行距離や車両の状態に制約があるため、本当の意味で「自分のクルマ」にしにくいという特徴があります。

残価設定ローンを「ボッタクリ」と称する人の多くは、こうした点を指しているものと見られます。

ぼったくり
インターネット上には残価設定ローンを”ボッタクリ”と批判する声も。

時間をお金で買いたい&クルマに対して受け身でいたい人に

たしかに、総支払額が大きくなりやすいという意味では、現金一括などに対して「損」と言えるかもしれません。

一方、十分な現金が用意できるまでクルマを購入できないと、大きな機会損失がある場合もあります。たとえば、クルマが生活に必要不可欠な地方に住むユーザーや、あるいは地方に転勤が決まったユーザーは、一刻も早くクルマを手に入れなければ、そもそも生活が成り立たないかもしれません。

また、若いユーザーの場合は、安定収入を見込める定職についていたとしても、まとまった現金がないケースが多くあります。その場合は、金利分を負担することで現金が貯まるまでの時間を短縮する、つまり「時間をお金で買う」ことができます。

ここまでは通常のローンも同様ですが、残価設定ローンのデメリットとされることも多い「資産にならない」という点も、ある特定のユーザーにとってはメリットにもなります。

残価設定ローンは返却を前提としているため、契約終了月の直前には販売店担当者から必ず連絡が入ることになります。これはつまり、クルマに対して能動的に動く必要がないことを意味します。

クルマの買い替えや名義変更の手続きなどは、時間に追われている現代人に取っては意外と大きな負担になるものです。その点、残価設定ローンで手に入れたクルマは、支払額が増えることと引き換えに、そうした負担を最小限にすることができます。

これは、「この先、あと何年クルマに乗れるのだろうか…」と考えている高齢のユーザーの方にもメリットになりえます。

逆に言えば、十分な現金が手元にある場合や、クルマを資産としたい場合、あるいはカスタムやチューニングを楽しみたい場合などは、残価設定ローンは不向きということになります。

ちなみに、支払額が抑えられるからと言って、より上位の車種を手に入れるために残価設定ローンを利用することはおすすめしません。もちろん、良いクルマを手に入れることで人生が豊かになるケースもあるため一概には否定できませんが、金利負担や手元現金のバランスを考えると、あくまでも自身の予算に合わせたクルマ選びをすることが重要です。

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