【平成名車の魅力を再確認】トヨタ ヴォクシー&ノア(3代目)モデルヒストリー

デビューから7年を経過した今でもミドルミニバンのエースとして君臨している現行ヴォクシー&ノア。次期型の噂を耳にする機会も増えているため近々フルモデルチェンジが行われるのは確実だが、直近の登録台数でも8050台(※2021年8月のヴォクシー/ノア/エスクァイアの合算台数)を記録するなど、モデル末期を迎えている今でもその勢いは健在だ。ここではこれまでの歴史を返りながら、ユーザーから支持され続けた理由に迫ってみたい。

●文/まとめ:自家用車編集部(ハラ)

乗員全てが快適に過ごせる新世代のミニバンとして登場

ミニバンという言葉が普及する以前から1BOXワゴンを世に送り出してきたトヨタ。その主力を担うヴォクシー&ノアは、前身のライトエースとして出発した当初こそ商用車ベースのバンの派生モデルという位置づけだったが、キャビン前方を伸ばしたボディ構造の採用や乗員快適性を高める工夫を盛り込みながら進化してきた。

2014年にデビューした現行型は、ヴォクシー&ノアのモデルネームが与えられてから3代目にあたるモデル。先代(2代目)でも広々とした室内空間やサードシートの標準化、多彩なアレンジも可能な荷室スペースなど、ミニバンに求められるニーズを高いレベルを実現していたが、現行型はそれらの魅力に加えて、走行&燃費性能と内装質感を強化。乗る人すべてが快適に過ごせるミニバンとして登場した。

●ヴォクシー

撮影車はヴォクシーハイブリッドのX。現行型はフロントから伸びるキャラクターラインを上手に見せることで、1.5BOXスタイルを変えることなくエモーショナルなスタイリングを手に入れた。

エアロパーツを装着するヴォクシーZS。シンプルな顔つきの標準ボディ車と比べると迫力感がかなり増した印象だ。モデル途中からは、ZSをベースに専用パーツで仕上げた特別仕様車の煌シリーズも投入されている。

●ノア

ノアの標準ボディ車になるG。先代までは精悍さが際立つヴォクシーと、大人びたシンプル意匠のノアというキャラ分けを強く感じたが、現行型はノアのキャラクターがヴォクシー側に寄った印象を受ける。

ノアのエアロ仕様となるSi。大型フロントグリルや左右リップまわりのエアダム意匠でフロントマスクのイメージも大きく異なる。当時、ヴォクシーと間違えるユーザーも多かったという逸話もあるほど。

ハイブリッド車の投入で、ミニバン界の燃費キングに就任

洗練された内外装や低床構造シャシーの採用、安全機能の強化など、あらゆる部分が大きな進化を遂げているが、中でも多くのユーザーから注目を集めたのは、本格的なハイブリッド車がラインナップされたことだ。

ハイブリッド車に採用されたのは1.8リッターのTHS Ⅱ。この遊星ギヤを用いた動力分割機構を持つトヨタ独自のハイブリッドシステムはプリウスを中心とした多くのモデルに採用されているが、ヴォクシー&ノア用はプリウス用に比べて最終減速比を約13%ローギアにしたプリウスα用のシステムをベースに開発されている。カタログ燃費で30km/ℓを楽に超えるプリウスには及ばないまでもJC08モード燃費は23.8km/ℓを記録。ミニバンの車両重量ハンデを感じさせない卓越した燃費性能を発揮する。デビュー当時に編集部が実施した燃費テストでもハイブリッド車は20km/ℓ超えを達成するなど、燃費が良いミニバンを求めるユーザーにとっては、ライバル勢よりもいち早く登場したヴォクシー&ノアのハイブリッド車は救世主的なモデルだった。

ちなみに2リッターガソリン車も最新のバルブマチックエンジンや多段変速の7速シーケンシャルシフトを搭載することで当時のガソリンのミニバンとしては最高レベルの燃費性能(JC08モード燃費14.8km/ℓ〜)が与えられている。

また燃費の良さに隠れがちだが、低重心シャシーとそれに合わせて設計された足まわりも秀逸で、腰の据わった操縦性と歴代でも最も柔らかな乗り心地を持つことも強み。走り自慢というわけではないが、ミニバンなりに走行性能が強化されたことも見逃せない美点だ。

1.8リッターハイブリッドは、プリウスα用をTHS Ⅱをベースに開発。直4エンジン+モーターの組み合わせで99PS/14.5kg・m(エンジン)+60kW/207N・m(モーター)を発揮。車両重量が嵩むミニバンに対応するためローギア化なども図られている。発売当初のJC08モード燃費は23.8km/ℓとなる。

ヴォクシーとノアの関係にも変化あり

スタイリングの変化もポイント。先代までは、ヴォクシーは個性を求めるユーザー向け、ノアは安らぎを求めるファミリー層向けとキャラの違いを明確にしていたが、現行型は両モデルとも洗練されたイメージが強まった。フロントマスクは差別化されて、共に標準ボディ車とエアロ車が選べるが、先代ほどの強烈な違いは感じられない。ノアがヴォクシーに大きく寄り添った印象だ。

キャビンまわりは、低床構造シャシーの採用とウインドウエリア拡大により見晴らしが良くなった前方視界や、ゆとりの室内高がもたらす寛ぎの空間などの機能面の進化に加えて、シートやインパネ、トリムまわりの質感の良さが目を引く。実用車的な味気ない仕上げを感じる部分もあった先代と比べると、意匠パネルやダッシュボードの取り付け精度が良くなり細かな部分も丁寧に処理されている印象が強い。インテリア色はブラック仕様を基調としているが、ヴォクシーは鮮やかなオレンジ/ブラック仕様、ノアはベージュ仕様も選べるなど、多様なニーズにも対応している。サードシートの造りもレベルアップし座り心地も改善。フル乗車時の快適性も高まっている。

中央に2DINスペースを配置するオーソドックスなレイアウト。シフトレバーはインパネに配置される。左がヴォクシーハイブリッドX(ブラック仕様)、右がヴォクシーZSのオレンジ/ブラック仕様。

セカンドシートはロングスライド機構を備えるなど、多彩なシートアレンジ機能も健在。サードシート格納は左右跳ね上げ式だが、座面が薄く設計することで格納時に邪魔にならないように改良されている。

マイナーチェンジは意匠変更が中心。モデル改良はやや消極的な印象

2017年7月のマイナーチェンジで登場した後期型は、薄型のLEDヘッドランプや新意匠のフロントグリルを採用。3モデルとも個性が際立つ顔つきが与えられている。写真はヴォクシーZS。

現行ヴォクシー&ノアは、フルモデルチェンジで飛躍的な進化を果たした上に、モデル通期を通して好調なセールスを記録したこともあってか、その後に実施された数回の商品改良は、装備の追加変更やグレードの追加/再編が中心。2017年のマイナーチェンジの際に内外装のブラッシュアップが行われているが、基本的には大きく変わることもなく発売され続けている。

手頃な価格設定(ガソリン車218万円〜、ハイブリッド車285万円〜 ※2014年デビュー時)や、快適で便利なキャビン&荷室、ハイブリッド車の設定など、多くの武器を持っているヴォクシー&ノアだが、唯一といっていい弱点が安全運転支援機能の物足りなさだ。

2016年1月に衝突回避支援型プリクラッシュセーフティ、レーンディパーチャーアラート、オートマチックハイビームをセットにした「Toyota Safety Sense C」を採用することで安全機能は強化したが、他のトヨタ車に採用が進んでいるLTA(レーントレーシングアシスト)などの運転支援機能はモデル末期の今にいたるまで採用されなかった。ライバルのセレナとステップワゴンは、モデル途中でプロパイロットやホンダセンシングが追加されたことを考えれば残念に感じてしまう。

なお現行ヴォクシー&ノアの派生モデルとして、内外装の上質感を高めたエスクァイアも2014年10月に投入。上級志向のミニバンを求めるユーザーニーズにも応えている。

・主な改良内容
2014年10月
エスクァイアを発売開始

2016年1月
一部改良を実施。安全機能の「Toyota Safety Sense C」を設定

2016年4月
グレード追加。ヴォクシーとノアにスポーティモデル“G’s”を設定

2017年7月
マイナーチェンジを実施。フェイスリフトを含む内外装意匠の変更が中心

2019年1月
一部改良を実施。トヨタセーフティセンスの機能強化(プリクラッシュセーフティが歩行者検知対応に変更)

2014年10月には上級志向を強化したエスクァイアも発売。グレードの数は異なるが、基本骨格やメカニズム、装備類はヴォクシー&ノアとほぼ共通。ガソリン車&ハイブリッド車のパワートレーン設定も同じになる。

現行型はすでにディーラー注文がストップ。次期型の登場は間近

現行ヴォクシー&ノアは今年で7年目を迎えるが、すでにディーラーでの注文はストップしており、次期型の登場まで秒読み段階に突入している。近々登場する新型はボディ設計やパワートレーン、安全運転機能にいたるまで、最新のTNGA技術が投入されるのは確実。現行型の時と同様、もしくはそれ以上の進化を見せつけるだろう。ミニバンを検討しているユーザーは、次期型の動向を見てから次のクルマを決めることをオススメしたい。


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