GRヤリスベースの新マシンで開幕戦から高いポテンシャルを見せる![2022年WRC(FIA世界ラリー選手権)]

昨年のヤリスベースのマシンからGRヤリスベースの新マシンに切り替わったTOYOTA GAZOO Racing World Rally Team。2022年WRC(FIA世界ラリー選手権)の第1戦が1月20日から23日、第2戦が2月25日から27日にそれぞれ開催された。そのレースリポートをお届けしよう。

●文:山本シンヤ ●まとめ:月刊自家用車編集部 ●写真:トヨタ自動車株式会社

GRヤリスベースとなったTGRチームの「GR YARIS Rally1」

昨年までのヤリスWRCで実績のある1.6ℓ4気筒直噴ターボに3.9kWhを発生するバッテリーとハイブリッドユニットを搭載。ハイブリッドユニットは加速時に最大で139PSのブーストを発生。システム全体で500PS以上の最高出力を発生する。

コンセプトはモータースポーツで勝つための市販車を作ること

トヨタのモータースポーツ部隊であるTGR(トヨタ・ガズー・レーシング)がWRC(世界ラリー選手権)への復帰から6シーズン目となる2022年。最大の変化はマシンで、これまでのWRカーから新規定車両となる「Rally1」へと変更。このカテゴリーはハイブリッドユニット、非化石燃料の採用など、持続的なモータースポーツ推進のための新たな挑戦が行なわれているが、それに伴いTGRはベース車両をヤリス(先代)からGRヤリスへと変更している。

ドライバーラインナップはエルフィン・エバンス/スコット・マーティン組とカッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン組がフルシーズン参戦、セバスチャン・オジエ/ベンジャミン・ヴェイラス組とトヨタに復帰したエサペッカ・ラッピ/ヤンネ・フェルム組が3台目のGRヤリスをシェアしながらシーズンを戦っていく。

ちなみにGRヤリスは「モータースポーツで勝つための市販車を作る」と言うコンセプトで開発が行なわれたモデルだが、そのモデルをベースにしたラリーカーでモータースポーツへと参戦。つまり、GRヤリスにとって本当の戦いがスタートしたと言ってもいい。

開幕戦のラリー・モンテカルロは例年と異なりほぼドライ路面での開催。記念すべき初陣は全車完走したものの各ドライバー共に電動化されたマシンとの相性に苦労していたようだ。結果はセバスチャン・オジエ/ベンジャミン・ヴェイラス組が総合2位、カッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン組が総合4位、エルフィン・エバンス/スコット・マーティン組が総合21位。特にセバスチャン・オジエ選手は最終日SS16の左前輪のトラブルまではトップだったので悔しい2位だが、「これもラリー」である……。

第1戦 ラリー・モンテカルロ

カッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン組(69号車)が総合4位。続くエルフィン・エバンス/スコット・マーティン組(33号車)が総合21位で完走し、新マシンは全車完走となった。

優勝したセバスチャン・ローブ/イザベル・ガルミッシュ組(フォード・プーマ・ラリー1)に対し、1号車の最終タイムは10.5秒の差だった。

第2戦はシーズン唯一のスノーラリー

3日間に渡り開催されるWRC。第2戦で優勝したカッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン組(69号車)は初日に総合2位。2日目に1位。最終ステージで2番手タイムとなり総合優勝。

第2戦のラリー・スウェーデンはシーズン唯一のスノーラリーである。フィンランドを拠点とするTGRにとって雪道はホームコースのような存在だが、カッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン組が優勝、エサペッカ・ラッピ/ヤンネ・フェルム組が総合3位、エルフィン・エバンス/スコット・マーティン組は途中まで総合2位だったが、SS16でのフロント部損傷の影響でリタイヤとなった。

エサペッカ・ラッピ/ヤンネ・フェルム組(4号車)が総合3位でゴール。途中まで総合2位につけていたエルフィン・エバンス/スコット・マーティン組(33号車)は、ハイブリッドシステムのトラブルでリタイアとなった。

チームはニューマシンであるGRヤリスの初勝利を歓ぶ一方、3台中2台のマシンにハイブリッドシステムのトラブルが起きていた事も認識しており、チームは「カイゼン」のために動き始めている。

ちなみにTGR WRCチャレンジプログラムに参加している勝田貴元選手は、新チーム「TGR WRTネクストジェネレーション」から全戦参戦を行なう。開幕戦モンテカルロでは一時は総合5位まで順位を上げるもコースオフで順位を落としてしまい総合8位。第2戦スウェーデンは序盤タイムロスするも、その後は好タイムを記録して総合4位。昨年のサファリ・ラリー・ケニアの2位に次ぐ好成績を獲得している。

69号車もハイブリッドシステムに問題を抱えていたが、総合2位まで浮上したライバルに対し、最終的に23.9秒まで差を拡大し総合優勝。

69号車のカッレ・ロバンペラ選手(写真左)は父であるハリ・ロバンペラ氏も2001年にラリー・スウェーデンで優勝しており、親子二代での優勝を実現した。


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