
4月13日から販売が開始された日産新型「セレナe-POWER」にいよいよ試乗することができた。新型「セレナe-POWER」2月末の受注開始から4月12日までの間に2万台を超えるなど高い人気を集めている。今回は先代「e-POWER」からの進化を中心に公道インプレッションをお届けします。
●文:川島茂夫 ●写真:澤田和久/日産自動車株式会社
モーター性能向上で、先代より高まった高速域での余裕。同乗者の負担が少ないハンドリングが美点
セレナは振れない。何時だって「モノより思い出。」なのだ。このキャッチは二代目セレナで用いられ、ファミリーカーがどうあるべきか端的且つ象徴的に指し示している。そしてその思いは開発陣にもしっかりと継承され、出来上がったのが六代目となる新型だ。
最上級グレードとして新設されたルキシオンには高速道路でのハンズオフ走行を可能とした「プロパイロット2.0」が採用されるなどクラスをリードする新機能も加わったが、日常用途やレジャーで実践力の高いキャビン機能も充実。サードシートのスライド機能や多様な使い勝手を生み出すスマートマルチセンターシート、ちょっとした積み降ろしに便利なデュアルバックドアなど継承進化。ライバル車に比べると多少床面高が高いのだが、ユーザーの現実に則した実用性の工夫はセレナの美点だ。
ただ、フルモデルチェンジの一番の注目点と言えばやはり第二世代となった「e-POWER」だろう。搭載エンジンを新開発の発電効率特化型の1.4Lとするだけでなく、駆動用モーターを高出力型(最高出力120kW/最大トルク315Nm)にグレードアップ。さらに従来車では標準的な油圧式だったブレーキシステムも回生協調の電子制御式に変更されるなど、全面的に刷新されている。
試乗した印象でも力感が違っている。全開加速で速くなったこともあるが、加速感の高まりや刺激という面ではむしろ抑え気味であり、巡航からの急加速でもドンッと蹴り出されるような唐突な印象はない。応答遅れなくグイッと車速を上げていく。「e-POWER」も登場初期の頃は低中速での瞬発力電動感を演出していたが、改良を経る毎に刺激少ない力強さへと軸脚を移しつつある。電動の特性をドライバビリティの質の向上に振り向けたと考えてもいい。そして新型セレナの「e-POWER」はその最新型だった訳だ。
さらにエンジン/モーターのパワーアップは良質なドライバビリティを発揮する速度域を拡大。新東名120km/h区間での追い越し加速も無理がない。先代から乗り換えた時に実用性能の違いを最も意識するのが高速域での余裕だろう。
余裕とか余力では静粛性の向上も見逃せない。これも量と質のコントロールが巧みだ。全開加速でエンジンの発電量が最大近くになるような状況でもエンジン騒音は圧迫感がない。「高回転で絞り出す」ような気配もなく、体感的には巡航状態より頑張っている程度のエンジン音だった。
エンジンやタイヤ関連の騒音量が少なく抑えられているのが静粛性の第一のポイントだが、騒音の質や音量の大きな変化も抑えられ耳当たりがいい。付け加えるなら車室内の会話明瞭度も高く、セカンドシートとの話がとおりやすい。
走りのもうひとつの要点となるフットワークは歴代モデルでも最も安定性を重視した設定。と述べれば引き締まったサスチューンのようにも思える。単純な硬さで言えばそうなのだが、基本は乗員に優しい乗り心地であり、マニア好みのスポーツ性やファントゥドライブは求めていない。
上下動にもロールにもサスの動き出しは早いがストローク速度を抑制。ストロークするほど締まるような感覚と理解していいだろう。そのため大負荷に対しては腰があるのだが、細かな凹凸に対しては意外とゆったりといなす。体幹のしっかりしたしなやかさとも言える。
操舵初期から回頭も旋回力も応答遅れ少なく、素直に回り込む。ラインコントロールに対する回頭は最小限であり、後輪を軸に前輪で確実に方向を押さえていくのが頼もしくも安心でもある。
こういった操縦性なので旋回力の立ち上がりもマイルド。ロールによる「逃げ」もあって屈曲路での切り返しでも横Gで頭を揺すられにくく、収束や据わりも良好。同乗者の負担が少ないハンドリングでもある。
試乗したのはセレナの看板モデルとなるハイウェイスターVと最上級のルキシオンの2モデル。ルキシオンはフロントサイドウインドウへの遮音ガラスを採用するが、静粛性でハイウェイスターと大きな隔たりなく、プロパイロット2.0と専用の内外装が訴求点。ちなみに同グレードのみセカンドキャプテンシートの7名定員となる。ハイウェイスターVとの価格差は100万円強である。ハイウェイスターVの「e-POWER」車の車両本体価格は368万6100円。ガソリン車(2.0L)の同グレードに対して約42万円高。「e-POWER」車は319万8800円の「X」から設定される。
ルキシオンを除けば新型セレナの価格設定は2.0L級1BOX型ミニバン標準の範疇。一昔前と比べると随分高くなった気もするが、「e-POWER」や先進運転機能の充実を考慮すれば納得できる価格であり、セレナの新旧比較でも快適性や高速での安心感、走りの質感を考えればコスパが高まったと言ってもいい。
そのコスパの真ん中にあるのが乗る人への優しさであり、「モノより思い出。」という訳。新趣向とか新味ではなく時代や技術の進化を反映したセレナらしさを実感できて嬉しくも思えた。
※本記事の文責は当該執筆者(もしくはメディア)に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(セレナ)
→セレナがベースのキャンパーとは ベース車両はニッサンのセレナ ベースとなる車両は日産のセレナ。 1991年の初代発売以降、家族のためのミニバンとして、ファミリー層を中心に高く支持されてきた。 好評の[…]
NISSAN セレナ(ガソリン車) 納期目安:1~2か月 HONDA フリード 納期目安:1~6か月 NISSAN ノート/ノートオーラ 納車目安:1~2か月 HONDA フィット 納車目安:2~12[…]
セレナが最高の「旅育」を提案 「旅育」とは、家族での外出を通じて、子どもたちが自然や歴史・文化等、その土地でしか得られない本物の体験に触れることで、多様な価値観や感性を育んでいく考え方。コロナ禍を経て[…]
ビルトインタイプは5月19日から発売開始 人気のTV-KITシリーズに、日産セレナ《Nissan Connect ナビゲーションシステム12.3インチワイドディスプレイ装着車 》用がラインナップに追加[…]
人気モデルが絶好調 セレナは、室内空間の広さや利便性の向上に加え、最先端技術やクルマ酔いを軽減する技術を搭載するなど、家族との大切な時間を思い切り楽しむことが出来るミニバンとして人気のモデル。今回発売[…]
最新の関連記事(ニッサン)
→シンプルで高級感あるキャンパーとは ベース車両は日産のキャラバン ベースの車両は日産のキャラバン。カスタムの幅が広く、アウトドアを中心としたユーザーに、非常に人気の高い車だ。 キャラバンはなんと言っ[…]
→ルーフが特徴的なキャンパーとは ベース車両は日産のNV200バネット ベースとなる車両は日産のNV200バネット。 荷室が広くカスタムの自由度が高い。一方で、キャラバンより小ぶりなため、運転しやすく[…]
→サイズ感が魅力のキャンパーとは ベース車両は日産のNV200バネット ベースとなる車両は日産のNV200バネット。 荷室が広くカスタムの自由度が高い。一方で、キャラバンより小ぶりなため、運転しやすく[…]
→セレナがベースのキャンパーとは ベース車両はニッサンのセレナ ベースとなる車両は日産のセレナ。 1991年の初代発売以降、家族のためのミニバンとして、ファミリー層を中心に高く支持されてきた。 好評の[…]
日産ブランドでの販売価格は17万500円。約2000回の繰り返し充電が可能で、長期間使用可能 今回発表されたポータブル電源は、電気自動車の「日産リーフ」で使用されていたバッテリーを再利用して開発されて[…]
人気記事ランキング(全体)
→喫茶店のような雰囲気のキャンパーとは ベース車両はトヨタのタウンエース ベースとなる車両はトヨタのタウンエース。 荷室が広くカスタムの自由度が高い。一方で、ハイエースより小ぶりなため、運転しやすく駐[…]
パイオニアが保有する高度なルーティング技術や走行履歴データを活用し、質の高いルート探索・案内が可能 パイオニアが満を持して投入したスマートフォン専用カーナビアプリ「COCCHi(コッチ)」は、パイオニ[…]
→良さを活かしたプロボックスとは ベース車両はプロボックス ベースとなる車両はトヨタのプロボックス。 商用車として、街で見かけることも多いプロボックス。最近ではアウトドアユーザーからも注目を浴びている[…]
取り回しの良いサイズ感ながら、室内は広々 車内は広々としており、窮屈さは全く感じない。内装は木材がメインで、木目のあたたかさを感じることができる。 入り口脇には冷蔵庫を設置。その上は作業台とシンクにな[…]
愛用している多くのユーザーに感謝を込めて、誕生25周年の記念イベントや特設サイトを開設 「楽ナビ」は初代モデル「AVIC-500」を1998年に発売。音声でのやり取りでルート探索ができる簡単操作を新た[…]
最新の投稿記事(全体)
→お風呂が付いたトレーラーとは 好きな場所でお風呂に入ろう 薄いブルーグレーの外装で、全体的に丸みがかった形が特徴的なトレーラー。ドアはサイドに位置している。 エアコンの室外機は前方に設置している。タ[…]
→喫茶店のような雰囲気のキャンパーとは ベース車両はトヨタのタウンエース ベースとなる車両はトヨタのタウンエース。 荷室が広くカスタムの自由度が高い。一方で、ハイエースより小ぶりなため、運転しやすく駐[…]
愛用している多くのユーザーに感謝を込めて、誕生25周年の記念イベントや特設サイトを開設 「楽ナビ」は初代モデル「AVIC-500」を1998年に発売。音声でのやり取りでルート探索ができる簡単操作を新た[…]
MT車へのアイサイトの追加や、VSC制御の最適化で機能面を強化 今回実施される一部改良では、安全装備の追加設定、走行性能の向上などが図られた。 具体的な改良内容としては、MT車にアイサイトを標準設定し[…]
湘南ベルマーレオフィシャルチームバストミカ 国立競技場で開催となる9月24日(日)川崎フロンターレ戦当日に、場外グッズブースにて「湘南ベルマーレオフィシャルチームバストミカ」が販売される。 2023シ[…]
- 1
- 2