
旧いクルマは燃費が悪い? 巷ではそんな声もよく聞きます。最近のクルマは燃費が良くて当たり前。でもじつはメーカーが燃費の向上に真剣に取り組み出したのは、おおよそ20年ぐらい前からということをご存知でしょうか? それ以前、とくにバブル絶頂期の1980年代は、燃費よりも出力性能の方が重要。メーカー各社はパワー競争に明け暮れていたのです。そんな旧車の燃費について、実際にしばらく乗っていた筆者の実感と、旧車仲間の声を元にお話しします。
●文:月刊自家用車編集部(往機人)
まずは、旧車で一番人気の「ハコスカ」の燃費はどのぐらい?
あまりにも有名なスカイライン2000GT。2Lの直6エンジン(1968)は105psを発揮。
まずは旧車界のトップアイドル、「ハコスカ」の燃費から見ていきましょう。
ちなみに、ハコスカから後に発売された中上級クラスの日産車のエンジンは、ハコスカと同じ系統のエンジンが搭載されていましたので、この時期の日産車の代表として見てもらってかまわないと思います。
ハコスカこと「日産スカイライン2000GT(GC10型)」は、1968年から1972年まで発売されたモデルです。
エンジンは「L20型」という直列6気筒SOHCの1998ccを搭載しています。インジェクション(燃料供給装置)は当時まだ開発の段階だったため、キャブレター方式を採用しています。ちなみに出力は105psから130psと、今の2Lクラスからすると頼りない数値です。
それでも車両重量は1000kgちょいしかないので、170km/hぐらいは楽々と出せます。そんなハコスカの燃費はというと、じつは当時のカタログでは燃費表記を見付けられませんでした…。
では、ユーザーの実際の体験から得られた実燃費はどうでしょうか?
走り方にもよりますが、平均を取ってみると街中で8〜9km/h、高速では9〜10km/hという感じです。思ったほど悪くないでしょう?
もちろんこれは平均値なので、がんがんアクセルを踏む人の場合はここから2〜3km/h悪い数値になるはずです。そーーっとアクセルを踏む人でも、平均値より良い数値はほとんど聞いたことがありません。
旧車のカスタムで人気が高い「SOLEX」というスポーツキャブレターに交換したクルマは燃費がガタ落ちで、5〜7km/Lというのも珍しくないほど。2Lクラスのエンジンとしては信じられない数値になる場合もあります。
リッターカークラスならもう少し燃費が良くなる、はず…
1972年式のサニークーペ 1200GX。1.2Lエンジンは最高出力83psを発揮。
もうひとつのサンプルとして、旧車のリッタークラス代表、「サニー(B110型)」の例も見てみましょう。
2代目のB110型サニーに搭載されているエンジンは、「A12型」という1171ccの直列4気筒OHVです。こちらもL型エンジンと同様にキャブレター方式で、出力は仕様の違いで幅がありますが、71〜84psです。
このエンジン、じつは意外と侮れません。出力こそ非力ですが、燃費はかなり健闘しているのです。こちらもカタログでは燃費の表記は見つかりませんでしたが、実燃費については知り合いのサニー乗りやミーティングでのリサーチでおおよその数字は判明しています。
あるオーナーは、高速でずっと左車線を90km/h前後で走行し、サービスエリアで給油した際に燃費を計算したところ、14km/Lもマークして、すごくビックリしたそうです。
個人的には、さすがにこれは最高値のはずと思います。ちなみにほかのオーナーから聞き取りした体感値では、平均でも街中で9〜11km/L、高速では10〜12km/Lといった感じ。ひと昔前のマーチ(K12)と条件次第では勝負できる数値だと思います。
これは推測ですが、装着されているキャブレターというのが、子指の径ぐらいの細い通路が2つ付いただけという構造で、そのためアクセルを開けても一定以上に燃料が行かないようになっていたからではないかと思っています。
なお、そのぶん加速は悲しいぐらいに穏やかで、とても追い越し車線に出ようとは思えないでしょう。その点がいまの低燃費車と違う点ですね(笑)。
1970年代半ばからはインジェクション車の時代が到来。はたして燃費は?
旧車の燃費の基準が1970年代半ば以降になると少し変わり、ようやく燃料供給装置が電子制御のインジェクションに切り替わっていきます。
このインジェクションの採用の背景には、昭和51年に施行された排気ガス規制の影響が多分に隠れていますが、機械式のキャブレターが無駄なガソリンを消費していた部分をカットできるようになったため、完全燃焼に近づくことができ、排出ガスの環境汚染成分を減少できるとともに、燃費の向上も果たしました。
だから同じL20型エンジンでも、インジェクションの方がキャブ仕様よりも1〜2km/Lほど燃費がよくなりました。
これは実燃費でも同様の傾向になります。ただ、当初のインジェクション車は、とにかく排出ガスの浄化に比重を置いていたため、出力面では後退せざるを得ず、「牙を抜かれた」と表現されるぐらいにパワーが落ちていたようです(ここ、本当に泣きドコロです…)。
1981年式セドリック200ターボブロアム。145ps/21.0kg-mを発揮するなど、当時としては最高峰の性能を誇った。ただ、燃費に関しては良くはなっていますが…。お察しいただけるとなによりです。
燃費よりも大事なものが旧車にはある。そう考えてください(笑)
このように、旧車の燃費は思ったほど悪くないというのを知っていただけたかと思います。結論からいってしまうと、旧車の魅力は燃費とは別のところにあります。
パワーも燃費も今のクルマにはまるで及びませんが、エンジンをかける瞬間から「ブルン」というエンジンの身じろぎを感じ、エンジンが始動した後も、心地よい振動とまるで息吹のような吸排気音が伝わってきて、機械が動いているのを実感できます。
1981年のL28Eエンジン。初期のインジェクションエンジンは、毎年迫られる環境性能の要求に応えるのが精一杯で、ふたたび出力向上に手をつけられたのは、この時代前後のエンジンからになります。
そして肉厚の高扁平タイヤと可動域の長いサスペンション、バネの効いたシートのクッションなどのおかげで、今のクルマにはない、船に乗っているこのようなゆったりとした乗り心地も旧車ならではの魅力だと思います。
エンジンの鼓動に意識を向けてゆったりとした車体の動きに身を委ねていると、スピードを出して他のクルマより前に行きたいというガツガツとした欲望は影を潜めて、穏やかな気持ちで走りを楽しめるようになっていきます。
今の旧車ブームの根っこには、そういう旧車でしか味わえない醍醐味に惹かれたという面が大きいのです。
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