![](https://jikayosha.jp/main/wp-content/uploads/2023/09/DSC_1122216.jpg)
9月7日から先行予約が開始されたSUBARUの新型SUV「レイバック」。ベースモデルのステーションワゴン「レヴォーグ」との違いはどこにあるのか? プロトタイプのステアリングを握ることができたので、その模様をお届けしよう。
●文:川島茂夫 ●写真:澤田和久/株式会社SUBARU
操舵に忠実に、かつ穏やかに回頭し、神経質な反応がなく、タフで懐深いフットワーク
機能に関わるSUVの条件は大きくはふたつある。ひとつは悪路走破性、もうひとつはパッケージングである。前者は特殊な条件下での実用の道具としてのSUVの存在理由そのもの。もうひとつも実用性に関わるのだが室内高を高く、荷室容量を配慮したキャビンデザインにしている。最低地上高の増加以上に高い全高設定になるモデルが多いのもこのためだ。
レヴォーグの新バリエーションとして開発されたレイバックは車体パッケージングはレヴォーグと共通。フロントマスクのデザイン変更等で全長が15mm伸びているが、キャビン周りはレヴォーグと共通であり、室内寸法も同様だ。
最低地上高はレヴォーグに対して55mm増の200mm。装着タイヤ半径がレヴォーグ(215/50R17)より30mm弱拡大するのでサス設計による最低地上高増は約25mmという計算である。
たった25mmだがサスのジオメトリーにすればストローク時のタイヤ接地角制御が理想値から離れてしまう。車高が高くなってもジオメトリーを正当にするには取り付け角やアーム長などサス本体の設計変更が必要であり、レイバックのサスもレヴォーグから変更された。もっとも完全新設というわけでもなく、クロストレック用をベースに開発されたもの。最低地上高の値が同じなのも納得できる。
ただ、最低地上高とサスの構造的な変更だけではなくフットワークの方向性がレヴォーグと異なるのも注目すべき点である。一言で済ませるなら乗り心地をより重視したセッティングとなるが、ハンドリング面でも御しやすく安心感の高い特性を狙っている。運転ストレスの軽減はクロストレックやインプレッサ以降、掲げられたスバルのハンドリングのテーマであり、レイバックも同様である。
試乗コースは比較的タイトなコーナーの連続するワインディング。アンダーステア傾向が目立ちやすいコースであり、レイバックも鼻先軽くヒラリという具合にはいかない。それがいい。あくまでも操舵に忠実にかつ穏やかに回頭し、神経質な反応がない。狙ったラインに乗せるために操舵量に神経質になる必要もない。挙動の揺れ返しやオーバーシュートも抑えられている。こういった特性はコーナリング中の減速も容易く、これもラインコントロール性と安心感では有利なポイント。
この試乗コースには途中大きなうねりなど路面の荒れている部分もあり、不用意な速度で入ればフルバンプで跳ね上げられる。がしかし、ラインは乱れない。さすがに一瞬の衝撃はあったものの、すぐに平常を取り戻す。タフで懐深いフットワークでもある。
サスチューニングの要点のひとつは体感ロールの減少。要するに高くなった車高と重心高をドライバーに気取らせない特性。サスチューンそのものはさほどハードではなく、スポーティ売りのモデルに比べるとロールの絶対量も大きめだが、伸び上がるような印象がない。外輪側を沈ませるようなロール感覚であり、定常円旋回中はロール軸の前下がりも意識しない。前後輪共に同じように沈み込ませているのだろう。
沈み込みストローク使いの上手さやストローク速度の抑制は乗り心地の向上にも繋がるが、車軸周りの細かな振動や揺動も少ないので肌触りがいいようなすっきりとした乗り心地に仕上がっていた。
フットワーク全般の個人的な印象ではレヴォーグSTIスポーツe-チューン仕様のコンフォートモードに近く思えた。
搭載パワートレーンはレヴォーグの標準系と同じ1.8L水平対向4気筒ターボ。低中回転域の力強さと低負荷域での扱いやすさ、ターボらしい高回転のパワーを上手にまとめた汎用性の高さが特徴。悠々とした広さはないが、大人4名が長時間のツーリングを楽しむに十分なキャビンスペースもある。
4WDシステムはクロストレックやフォレスター、レヴォーグと同様の電子制御型を用い、リア駆動系容量も同様。ただし、クロストレックやフォレスターが採用する悪路特化型駆動力制御のXモードは今のところ採用されていない。この辺りはオフロードのイメージを余り濃くしないためとのこと。腰高感やクラッディングを殊更に強調してしない外観も然り。スポーツワゴン「レヴォーグ」というブランドのこだわりでもある。
とはいえ実態はクロストレックと同カテゴリーの上位設定モデルなのは間違いない。レヴォーグ由来の高性能をベースにするならダートやラフロードも含めた全天候全路面対応型ツアラーと見るのが一番実態に近い。SUVの標準系ではないが、四季を通して旅を楽しむユーザーには期待の一車だ。
■SUBARUレイバック(プロトタイプ)主要諸元
・全長×全幅×全高:4770mm×1820mm×1570mm
・ホイールベース:2670mm
・トレッド前/後:1560mm/1570mm
・最低地上高:200mm
・車両重量:1600㎏
・乗車定員:5名
・最小回転半径:5.4m
・搭載エンジン形式:CB18
・搭載エンジン種類:1795cc水平対向4気筒DOHC直噴ターボ
・搭載エンジン最高出力:177PS/5200-5600rpm
・搭載エンジン最大トルク:300Nm/1600-3600rpm
・燃料タンク容量:63L
・燃料種類:無鉛レギュラーガソリン
・サスペンション前/後:ストラット/ダブルウィッシュボーン
・ブレーキ前/後:ベンチレーテッドディスク/ベンチレーテッドディスク
・タイヤサイズ:225/55R18
※本記事の文責は当該執筆者(もしくはメディア)に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(レヴォーグ)
3モデルとも設計時期は同世代だが、レガシィベースのアウトバックが少し格上のモデル もともとレヴォーグは、北米市場を意識して大きくなりすぎてしまったレガシィのポジションを埋めるために生まれたモデル。現行[…]
昨年秋に導入されたレイバックが、レヴォーグ選びに幅をもたらしている 2020年秋にでデビューした2代目「レヴォーグ」は、ショートワゴンにも似た軽快なプロポーションを持つスポーツワゴンとして、個性派揃い[…]
アウトドアユーザー大注目のスバルブース 「アウトドアデイジャパン東京」の会場で、多くの来場者が足を運んでいたスバルブースでは、アウトドア仕様となったフォレスターとレヴォーグ レイバックを展示していた。[…]
レイバック独自のサスセッティングで、より万人向けのモデルへ スバルレヴォーグ レイバック価格:399万3000円レヴォーグ レイバック(以下レイバック)が開発された経緯は、インプレッサとクロストレック[…]
アイサイトが新世代型にアップデートし、安全機能をより強化 今回、レヴォーグに実施される改良では、主に機能装備面の強化を実施。具体的には、ステレオカメラに加えて広角単眼カメラを搭載した新世代アイサイトを[…]
最新の関連記事(スバル)
カーボンニュートラル燃料で走るWRX!? スバルは、内燃機関を活用した燃料の選択肢を広げる挑戦として、カーボンニュートラル燃料を使用した車両でスーパー耐久シリーズ2022より参戦。モータースポーツで求[…]
スーパー耐久シリーズの知見を取り入れた「SPORT モード」 今回の改良では、スーパー耐久シリーズに参戦している Team SDA Engineering の取り組みで得た知見から生まれた、MT 車専[…]
「Advance」がベースの特別仕様車「Urban Selection」 特別仕様車「Urban Selection」は、「Advance」をベースに、ブラック塗装のフロントグリルや、ボディ同色のドア[…]
北米で発表された新型フォレスター 北米で登場した新型フォレスターは、SUVの力強さを感じさせるフロントマスクが特徴的で、これまで以上に逞しい外観となっている。その雰囲気から、現行型よりも車格が上がった[…]
マルチパスウェイワークショップで初公開された新開発の2.0L直列4気筒エンジン(左)と1.5L直列4気筒エンジン。 えええっ、3気筒から4気筒へ戻るの? いや、きちんと理由があるんです! 先日開催され[…]
人気記事ランキング(全体)
コスパの高さは最高クラス 外壁や玄関の掃除、洗車などで活躍する高圧洗浄機。人力では落とせない頑固な汚れを落とすことができるため、家庭での使用も増えてきている。しかし、高圧洗浄機は価格が比較的高く、なか[…]
→2人暮らしができるレベルのキャンパーとは ベース車両はトヨタのハイエース ベースの車両はトヨタのハイエース。カスタムの幅が広く、アウトドアを中心としたユーザーに、非常に人気の高い車だ。 ハイエースは[…]
8月1日より、全国各地でフロンクスの実車を展示する、先行展示会を開催 追加した情報は、エクステリア、およびインテリアデザインやカラーラインアップに加え、チーフエンジニアやデザイナーのインタビュー動画な[…]
上級を意識した内外装仕立てで、新たなユーザー層の獲得を狙う 「新しいコンパクトSUVの市場を切り拓く」そんな狙いを持って、この秋インドから日本国内への導入が予定されている新型フロンクス。コンパクトカー[…]
Screenshot 標準車とは全く異なるワクワクするスタイリング、ボディカラーは全9色を展開 本日7月25日にスズキ「新型スペーシア ギア」の先行情報が公開された。現行スペーシアの優れた基本性能の高[…]
最新の投稿記事(全体)
耐水&耐荷重もバッチリ 「ハードシェルソーラーセンサーライト」は、駐車場や庭にピッタリな地面に設置できるソーラー充電式ライト。IPX7の防水性能と耐荷重に優れ、耐荷重約1tで車で踏んでも壊れない頑丈な[…]
ベース車両は日産のNV200バネット ベースとなる車両は日産のNV200バネット。 荷室が広くカスタムの自由度が高い。一方で、キャラバンより小ぶりなため、運転しやすく駐車スペースで悩むことも少ない。4[…]
新型LBX MORIZO RR実力チェック 新型オーラNISMO詳細解説 新型フロンクス先行試乗リポート! 今こそ買いたい!注目モデル10選! 人気ミニバン BEST BUY WLTCモード燃費付き […]
ベース車両はトヨタのハイエース ベースの車両はトヨタのハイエース。カスタムの幅が広く、アウトドアを中心としたユーザーに、非常に人気の高い車だ。 ハイエースはなんと言ってもクラス最大級の荷室の広さが魅力[…]
愛車に個性を持たせよう! カーショップコネクトでは、エプロンや被せるような汎用タイプとは違い、クルマのシート形状ごとに型取りを行って、ジャストフィットするシートを販売している。色やデザインを自由に選ぶ[…]
- 1
- 2