
10月5日に発表された第三世代となるホンダの新型「N-BOX」。「N-BOX」は軽四輪車新車販売台数で8年連続(2015年度〜2022年度)で第1位を獲得するなど圧倒的な支持を集めている軽自動車だ。それだけにフルモデルチェンジでの走り進化は気になるところ。いち早くテストコースで新型「N-BOX」プロトタイプのハンドルを握ることができたので、試乗インプレッションをお届けしよう。
●文:川島茂夫 ●写真:本田技研工業株式会社
街中や高速で大きくドライバビリティを変化させず、心地よく運転するできる、プラスαの余力感が加わる
新型「N-BOX」
今やスーパーハイト系ミニはファミリーカーの主柱のひとつとして認識すべきだろう。1BOX型ミニバンに迫る室内高を活かしたキャビンは上級のコンパクトクラス以上であり、後席収納時には大きな荷室も得られる。車体サイズに対する実用面の汎用性ならトップレベルにある。そんなスーパーハイト系ミニの弱点は高速性能にある。
新型「N-BOXカスタム」
フルモデルチェンジした新型「N-BOX」のプロトタイプ試乗で得た印象は長距離用途に向けた高速性能の向上にあった。走りの弱点の解消とまではいかないが、快適速度レンジを高めているのは容易に理解できた。
パワートレーンもシャシーもスペックを見る限り先代から大きな変化はない。排気量は660cc未満、業界自主規制もあってターボ車でも最高出力は64PSでしかない。100km/h以上の悠々とした巡航は望むべくもないが、スペックほど非力な印象を受けない。
ペダル踏み込みに対する加速変化や回転数制御が新型の妙味である。例えば、実際の加速性能が良くても、加速中極高回転を維持されれば余力に欠く印象を受ける。多少加速性能が低下しても加速と共に僅かでもエンジン回転数が上昇するように変速制御されていれば余力があるように思えるもの。新型はCVTながらエンジン回転数制御にステップ変速的要素を入れ込むことで上手に余力感を演出している。
新型「N-BOX」
ペダルストロークに対しても同様で踏み込み速度や走行速度等の要件を汲んで適切に制御しているようで速度や走らせ方の得手不得手が少ない。余力はともかく街中や高速で大きくドライバビリティを変化させない。これもある種の演出なのだが、心地よく運転するにはそう言った感性との擦り合わせが大事であり、余裕があるように感じさせる領域の拡大は運転ストレス減に役立つ。
フットワークは低中速で走らせているとスーパーハイト系では標準的な街乗り柔らかな乗り心地重視型。従来型と比べると緩い感じがする。操安から乗り心地に軸脚を移したようにも思えたが、高速コーナリングで印象は大きく変わる。
新型「N-BOX」
高速直進中は低中速で受けた印象と大きく変わらない。ちょっと頼りないかな、というくらいなのだが、コーナーに入り横Gとロールが大きくなるほどに方向性と接地感がしっかりしてくる。120km/h超のコーナリングや高速レーンチェンジも試してみたが、やはりロールするほどに粘りと安定性が増す。先代も軽乗用では高速走行を得意としたフットワークだったが、さらに一歩前進といった感じだ。
欲を言えば高速直進時の据わりをもう一段上げてもらいたいが、主用途となるタウンユースでの乗り心地とのバランスを考える納得。付け加えるなら操舵支援型LKAは全車に標準装備。渋滞対応の全車速型ACC(アダプティブクルーズコントロール)と相まって高速長距離向け運転支援も充実している。
ACC(アダプティブクルーズコントロール)とLKAS(車線維持支援システム)を含むホンダセンシングはフロントワイドビューカメラやソナーセンサーの追加により対象物の検知範囲や精度を向上させた最新型にアップデートされた。従来型から新たに加わったのは誤発進時の近接衝突軽減ブレーキと急アクセル抑制機能(メーカーオプション)くらいだが、上級クラスと比較しても遜色ない安全&運転支援機能を備えている。また、その他の運転支援機能ではホンダ軽乗用では初となるマルチビューカメラシステムがメーカーオプション設定されている。
使い勝手の細かな改良は加えられているが、キャビンスペースは従来型から大きく変化していない。軽乗用枠目一杯設計なので当然だが、センタータンクレイアウトと低床荷室、スライド機能も備えた後席。後席はもちろんチップアップ&ダイブダウンの2ウェイ収納で積載の多様性も継承されている。要するにアドバンテージはそのままである。
新型「N-BOXカスタム」
ただ、インパネ周りの印象は随分と変わっている。メーターは従来型の輪外配置から標準的なステア奧配置となり、助手席前面には横広の棚を奧などリビングルーム感覚のすっきりとしたデザインとなった。ドアトリム肩面やインパネデザインは車体幅や車体軸線の掴みやすさを考慮した設計とするなど、肌身感覚の馴染みやすさを備えている。
車種構成は従来型と同じく標準系とカスタム系の設定でターボ車はカスタム系のみの設定となっている。車椅子対応のスロープが設定されるのも従来型と共通。スロープの電動ウインチに方向修正機能が付くなど改良が加えられているが、レジャー用途での活用も配慮された設計もあり、車椅子仕様の適応用途の拡大を図っている。
飛び道具とか大業的な性能や機構はないが、ユーザーの実情を反映した使い勝手や運転感覚を磨き込んでいるのが新型「N-BOX」。スーパーハイト系ユーザーだけでなくタウン&レジャー志向で1.3Lクラス2BOXを狙っているユーザーも一考する価値があるモデルだ。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(N-BOX)
N-BOXカスタムの一部グレードに、LEDフォグライトとフォグライトガーニッシュを追加設定 今回実施される一部改良では、N-BOXカスタムの一部グレードに、LEDフォグライトとフォグライトガーニッシュ[…]
スーパーハイト軽ワゴン選びで、外すことができない実力モデル 運転支援機能も優秀。高速長距離に絶大な強みあり 見た目は他社のスーパーハイト軽ワゴンと大差ないように見えるが、床下に燃料タンクを配置するセン[…]
ベース車両はホンダのN-BOX ベースとなる車両はホンダのN-BOX。 広い車内、軽自動車離れした走行性能、燃費の良さと、優れている点を豊富に持つ車だ。軽自動車としては日本で最も売れている人気車種で、[…]
「日本の生活に寄り添うクルマ」たちが揃う、人気シリーズ ホンダが手掛けるNシリーズは、「日本にベストな新しいのりものを創造したい」という思いから開発がスタートとした軽自動車。 2011年12月に発売し[…]
TV-CMでも大好評のいかつさアップの定番パーツが1位を獲得 (第1位)アクティブフェイスパッケージ 最も注目を浴びたのは、TVCMなどにも登場した「アクティブフェイスパッケージ」。フロントグリルとL[…]
最新の関連記事(軽自動車)
ルームミラータイプの変更で、価格を抑えた特別仕様車 今回導入される特別仕様車T Premium Limited Edition/G Premium Limited Editionは、上級グレードのT […]
天然木×三河家具職人による機能的で温もりのある内装が『ちょいCam』の魅力 『ちょいCam』は、愛知県豊田市の(株)ルートが手がける軽キャンピングカー。内装に天然木を使用し、三河家具職人による丁寧な仕[…]
フィッシングショー大阪の会場で見かけたユニークなモデル 毎年、多くの釣り人で賑わうイベント、フィッシングショー大阪。最新の釣り具の展示、発表や、プロアングラー(プロの釣り人)によるセミナーなどが行われ[…]
天然木だぞ…ボックスの使い方で色々な表情を見せるダイハツ・アトレー ベースになっているのはダイハツのアトレー。軽自動車にもかかわらず荷室が広いのが特徴で、カスタムの幅も広い。 まず車内をみて思うのが「[…]
マツダ スクラムベースの軽キャンパー マイクロバカンチェス(リンエイ) ベースとなる車両はマツダのスクラム。軽自動車ながら広い室内空間が魅力の車だ。シンプルな外観は街乗りにも最適で、普段使いからアウト[…]
人気記事ランキング(全体)
シートサイドのスペースを有効活用できるUSB付きポケット 車のシートサイドや、シートとコンソールにある隙間などはデッドスペースになっていることが多い。小銭などの小物を落としてしまうことも多く、一度落と[…]
軽トラックTN360のボディを取り去ったフルオープンマルチパーパスカーだった ホンダZの誕生と時を同じくして鮮烈なデビューを飾ったのが、個性の塊とも言えるバモスホンダである。ベースとなっているのは、主[…]
ダイハツ・アトレー広すぎる室内スペース。シートをフルフラットにすると巨大なソファのよう こちらの軽キャンパーは、広々空間で人気のダイハツのアトレーがベースとなっている。写真を見てもらえればわかると思う[…]
ショックレスリングとは? 一般の金属とは異なる原子の規則相と不規則相が存在する“特殊制振合金”を採用した金属製のリングで、シート取付ボルトやサスペンションアッパーマウントのボルトに挟み込むだけで、効果[…]
ただものじゃない、激シブかっこいいプロボックス プロボックスは街でよく見かけるポピュラーな、トヨタの商用車のひとつ。そんな地味な、いかにもビジネス用途一点張りのプロボックスがSUV風の外観と、おしゃれ[…]
最新の投稿記事(全体)
純正マットの上に敷くだけで、プラスα効果を実感 クルマのフロアマットって、車内の泥汚れなどを防いでくれる必需品だけど、汚れ防止だけじゃない進化したフロアマットがあるのをご存知? 実はこれ、エーモンから[…]
「アルピーヌ A110 R 70」:世界770台限定の「R」バージョン最終仕様 今年でブランド創立70周年となるアルピーヌ。今回実施されるラインナップ変更では、ブランド設立を記念した「アルピーヌ A1[…]
バッテリーEVにも、スバルらしいアクティブイメージをプラス 発表された新型「トレイルシーカー」は、スバルのグローバルバッテリーEVとしては2番目に登場するe-SUVモデル。スバルとトヨタが、互いに強み[…]
新商品を発売前に公開して消費者の興味を引きつける、効果的なマーケティングであるのは間違いない そもそもティザーとは、英語のTeaserで「焦(じ)らす」という意味がある。ここでいうティザー・キャンペー[…]
軽トラックTN360のボディを取り去ったフルオープンマルチパーパスカーだった ホンダZの誕生と時を同じくして鮮烈なデビューを飾ったのが、個性の塊とも言えるバモスホンダである。ベースとなっているのは、主[…]
- 1
- 2