
BYDとしては初となるセダンモデル「SEAL(シール)」。後輪駆動を基本にしつつ、前後のツインモーターが生み出すシステム最高出力は390kWを発揮するなど、BEVの中でも高性能を売りとしている。その走りはどれほどのものだったのだろうか?
●文:川島茂夫 ●写真:編集部
見た目は普通のセダンだが、宿るポテンシャルは想像以上
BYD・SEAL(シール)は、内外装こそ雄弁なデザインで、インパネ中央には超大型センターディスプレイが設けられるなど、ところどころに未来を感じる演出も組み込まれているが、多くの人にとっては、アッパーミドルクラスの普通のセダンに見えるかもしれない。
ただ、そのボディに秘めるパワースペックに関しては、見た目とは違ってかなりの高性能ぶりを売りとしている。今回試乗したAWDモデルは、前輪側は160kWの誘導モーター、後輪側は230kWの同期モーターを用いるツインモータータイプで、そのシステム最高出力は390kWに達する。馬力換算なら512PS仕様。ドライバーを身構えさせるに十分なスペックが与えられている。
海洋生物をモチーフにデザインされたエクステリア。サイズは全長×全幅×全高:4800☓1875☓1460mm。ホイールベースは2920mm。アッパーミドル級に相当するDセグメントモデルになる。価格はRWDモデルが528万円、AWDモデルが605万円。
システム出力は390kWだが、脳筋的なスポーツセダンにあらず
そんな事前知識を仕入れ、少しドキドキしながら乗り込んでみたが、そんな想いとは裏腹に、シールはいたって紳士的な走りを示してくれることに少し驚いてしまう。正直なところ、慎重なアクセルワークが不可欠な脳筋的なスポーツセダンを予想していたのだが、拍子抜けするほど低速、低負荷でのパワーコントロールが容易で、危うさは微塵も感じない。混み合った駐車場でも、交通量が多い市街地走行でも、なんの気負いもなしに、普通に扱えてしまう。
モーターを用いる電動駆動では、低速で強く高速は苦手というのが基本特性だが、シールは速度を高めても、踏み増し時の加速の感触も、トルクの立ち上がりもと伸び感も翳りはない。出足と同様に力強く伸びやかで扱いやすいままだ。
内装にはスエード&レザーのコンビネーションが用いられるなど、アッパーミドル級に見合った豪華なインテリア空間が楽しめる。メインメーターは10.25インチのTFT液晶を採用、視認性に優れることも美点のひとつ。コンソール中央に配置される15.6インチタッチスクリーンは、回転することで縦型ディスプレイとして運用することも可能。音声認識機能なども充実している。
クリスタルをモチーフとした精巧な電動シフトレバーを採用。
武器はパワーのみならず、フットワークの良さにも好感
さらに驚いたのはフットワーク。ツインモーターAWDながら車体の揺れ返しを上手に抑えるセッテイングのおかげで、高速域でもどっしりとした収まりの良さが際立つ。リヤサスの沈み込みも気持ちよく、これがドライビングのリズム感にも繋がり、FR的なコントロール感も楽しめる。
何かに似ているな、という言い方はBYDに失礼だが、そんなことを考えて頭に浮かんだのは“AMG”と“M”だ。
スポーツセダンもしくは高性能ツアラーを代表する両ブランドの走りの魅力に相通ずる味を感じてしまった。FRの良質なツアラーをBEVで成し遂げたといっていい。
そんな視点で価格を見れば、AWDで605万円のプライスはお値打ち。導入記念キャンペーンなら572万円で、各種補助金を考慮すれば実際にはさらにお得だ。WLTC総合モードでの航続距離はAWDは575km、RWDが640km。長距離ツアラーとしてはもう少し後続距離が欲しいが、一般的なドライブ用途には十分だろう。BEVとしての評価だけではなく、良質なツーリングセダンという視点でもかなり魅力的な一台だ。
フロントはダブルウィッシュボーン、リヤはマルチリンクを採用。AWDモデルのみ路面追従性を高める狙いで、可変ダンパーを採用する。
熱安定性に優れたリン酸鉄リチウムイオンバッテリーの「ブレードバッテリー」を採用。安全性が高いことも強みにしている。
大型ガラスルーフは全モデルに標準採用。遮熱と紫外線カット機能に加えて、高い可視光線通過率(4.2%)により太陽光による眩しさも大きく低減している。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(BYD)
BYDの最新技術やブランドビジョン、日本市場への取り組みを発表 今回の出展では、設立3周年を迎えたBYDオートジャパンの乗用車ブースと、日本での運行開始から10年を迎えたBYDジャパンの商用車ブースに[…]
BYD初のステーションワゴン 世界初公開された、新型ハイブリッド車「BYD SEAL 6 DM-i TOURING」は、BYD初のステーションワゴンであり、同社が独自に開発したプラグインハイブリッド車[…]
好評の特別装備を追加した買い得な限定モデル 今回発売される「Grateful PINK」シリーズは、小型ハッチバックEV「BYD DOLPHIN」をベースに、カーボン調のインテリアトリムや電動テールゲ[…]
「10年30万kmパワーバッテリーSoH延長保証」を認定中古車まで拡大 BYDオートジャパンは、2025年4月から新車向けに「10年30万kmパワーバッテリーSoH延長保証」を導入しているが、同内容の[…]
特徴的なフロント「オーシャン・エックス」 BYDから日本導入第4弾となる「シーライオン7」が発売された。ちなみに「7」という数字は車格を示しており、シーライオン7は、全長4830×全幅1925×全高1[…]
最新の関連記事(EV)
BEV本格普及に向けて、本気モデルが発売開始 今回の改良では、BEVをより身近な選択肢とするため、「使いやすさの改善」「BEVならではの楽しさの追求」「内外装デザインの変更」を柱とした変更が実施される[…]
EX40初の天然木採用で、極上の室内を演出 特別仕様車EX40 Classic Editionは、EX40 Ultra Single Motorをベースに、ユーザーから人気の高いテイラード・ウール・ブ[…]
スズキのBEV世界戦略車が国内導入 新型eビターラは、2024年11月にイタリア・ミラノで初公開された、スズキのBEV世界戦略車第一弾となるモデル。 「Emotional Versatile Crui[…]
多様なモビリティサービスに対応可能なバッテリーEV。価格は2900万円から 「e-Palette(イーパレット)」は、人々の生活と社会を豊かにする新たな移動体験を創出する、未来志向のプラットフォームと[…]
コルベットCX:究極の高性能EVスーパーカー 未来のコルベット像としてすべてを新設計されたのがコルベットCXだ。見どころは何といっても戦闘機や宇宙船を連想させるキャノピー式のボディ開口部。一般的なドア[…]
人気記事ランキング(全体)
普段使いのしやすさを追求した「ちょうどいい」サイズ感 キャンピングカーに憧れても、運転のしやすさを考えると二の足を踏む人は多い。特に女性ドライバーや家族で使う場合、「軽では狭いけれど、フルサイズは扱い[…]
エアコン使用は燃費に確実な影響を与える 真夏の炎天下、エアコンを使わずに運転するのは現実的ではない。しかし、エアコンを稼働させると燃料消費が増えるのは避けられない。環境省のデータによれば、エアコン使用[…]
グループ全体の未来の方向性を明示、その象徴となるコンセプトモデルを披露 「5ブランドプロジェクト発表」と題された配信では、トヨタ自動車のグループ全体のブランド再構築と、将来的な市場ポジショニングを説明[…]
アルファードの広さと上質さを、そのまま旅の相棒に ベースとなるアルファードは、高級ミニバンとしての快適性と静粛性で群を抜く存在だ。その広大な室内空間を活かして、ゆったりとしたリビングのような空間を実現[…]
家のようなくつろぎをそのままクルマに モビーディックの「COMCAM」は、まるで自宅のリビングをそのままクルマに持ち込んだような快適空間を実現したキャンピングカーだ。ハイエースをベースに、広々とした室[…]
最新の投稿記事(全体)
10年後の未来を先取り体験「Tokyo Future Tour 2035」など、主要プログラム決定 ジャパンモビリティショー2025は「#FUTURE」「#CULTURE」「#CREATION」「#K[…]
電動化技術と四輪制御技術の融合させた電動クロスオーバーを披露 世界初披露となる電動クロスオーバーSUVのコンセプトカーは、都会的なスマートさとSUVの力強さを兼ね備えたスタイリングが特徴。広々とした室[…]
●出展コンセプトは「ブランドを際立てる」 国産メーカーの中でもとくに独自性が強いのがSUBARUの特徴だ。今回のJMSの出展コンセプトもその点を強調したものとなっている。「安心と愉しさ」を土台としつつ[…]
人気の軽バンキャンパー仕様が登場だ クリッパーバン「マルチラック」は、荷室にスチールラックと有孔ボード、専用ブラケット2種、および防汚性フロアを装備したモデルだ。ラックとボードはオリジナルの有孔デザイ[…]
車中泊を安心して、かつ快適に楽しみたい方におすすめのRVパーク 日本RV協会が推し進めている「RVパーク」とは「より安全・安心・快適なくるま旅」をキャンピングカーなどで自動車旅行を楽しんでいるユーザー[…]
- 1
- 2