
ハザードランプは、周囲のドライバーに注意を促すための重要な機能ですが、その正しい使用方法について、十分に理解しているドライバーはあまり多くないかもしれません。では、日常的に見かけるサンキューハザード/バック駐車時のハザードランプなどは、ハザードランプの正しい使い方と言えるのでしょうか?
●文:月刊自家用車編集部(ピーコックブルー)
ハザード点灯を義務づけられているのは2つのケースだけ
ハザードランプは、法令上では「非常点滅表示灯」と呼ばれています。日常のさまざまなシーンで使われていますが、実は法令で義務付けられている使用シーンは2つしかありません。
まず1つ目は、道路交通法施行令第18条2項の「自動車(大型自動二輪車、普通自動二輪車及び小型特殊自動車を除く。)は、法第五十二条第一項前段の規定により、夜間、道路(歩道又は路側帯と車道の区別のある道路においては、車道)の幅員が五・五メートル以上の道路に停車し、又は駐車しているときは、車両の保安基準に関する規定により設けられる非常点滅表示灯又は尾灯をつけなければならない」というもの。
そして2つ目は、道路交通法施行令第26条の3の2項による「通学通園バスは、小学校等の児童、生徒又は幼児の乗降のため停車しているときは、車両の保安基準に関する規定に定める非常点滅表示灯をつけなければならない」という規定です。
走行時のハザードランプの使用はグレーゾーン
そうなると、よく見かける“サンキューハザード”や“バック駐車時のハザード”はどうなのでしょうか?
サンキューハザードとは、ほかの車両に道を譲ってもらったときや、協力を得たときに感謝の意を示すためにハザードランプを点滅させる行為のこと。
たとえば高速道路で車線を譲ってもらった時や、駐車場で待ってもらった時などに使われることが多いようです。
そしてバック駐車時のハザードは、後続車に“今から駐車する”ことを意思表示するために使われるハザードランプを指します。
これらの使用方法は多くのドライバーに親しまれており、コミュニケーション手段として浸透していますが、法令には定めのないハザードランプの使い方になります。
そのほか、事故や故障でやむを得ず路上に駐車しなければならないとき、クルマがけん引されているとき、渋滞の最後尾を後続車に知らせるときなどにもハザードランプは使われていますが、実はこれらも本来の使用目的からは外れています。
結論からいうと、サンキューハザードをすることで、ほかの車両に危険を及ぼすようなことがあれば、安全運転義務違反に問われる可能性が出てくるようです。
ただ、このようなハザードランプの使い方は、感謝の意を示すため、あるいはドライバー同士のトラブルを回避するために使われており、それを意味していることも暗黙の了解として広く浸透しているので、取り締まられる可能性は低いでしょう。
ハザードランプを消し忘れたまま走るのは、絶対に止めるべし
ただ、ハザードランプを使用する際は、消し忘れには注意。消し忘れたまま走行しているケースを見かけることがありますが、これはほかのドライバーに誤解を与え、混乱を招く可能性がある危険な行動です。
たとえばハザードランプを点けたまま走行すると、ほかの車両はあなたのクルマが故障していると勘違いし、予期せぬブレーキ/進路変更などを行い、後続車と事故を起こす可能性があります。
そのため、ハザードランプを使用した後は必ず確認し、必要がなくなったら速やかに消すようにしましょう。
また、ハザードランプはエンジンを切っても作動し続けるため、気づかないまま放置するとバッテリー上がりのリスクがあります。
バック駐車時にハザードランプを使用した際も、切り忘れがないか必ずチェックしてください。
このように、ハザードランプの正しい使用方法を理解することは、道路上での安全性を高めるために非常に重要です。
ハザードランプの使用が義務付けられているのは、夜間に道路幅が5.5m以上の道路に駐停車する際と、通学通園バスが子どもの乗降のために停車する際であり、それ以外は本来の使用目的からは外れます。
サンキューハザードやバック駐車のハザードは、あくまでマナーだということを知ったうえで、普段から周囲の安全に配慮した運転を心がけましょう。
※本記事の文責は当該執筆者(もしくはメディア)に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
最新の関連記事(交通/社会問題)
クルマ開発センター フェロー 御沓悟司氏が登壇 今回の安全技術説明会には、クルマ開発センターのフェローに就任し、車両安全技術全般の責任者も務める、御沓悟司氏が登壇。1990年の入社時から現在まで、長ら[…]
マルチパスウェイ戦略の下で、多様なパワートレーンが併存していくことをふまえた税制とする そもそも現行の自動車税制が何が問題なのかといえば、購入時の“自動車税の環境性能割”は消費税との二重課税。毎年払う[…]
道路管理も先進技術で高度・確実に みなさんも見かけたことがあるだろう、黄色く塗られた高速道路の巡回管理車両。交通管理隊が使用する、「高速道路パトロールカー」だ。その名の通り高速道路上に異物、事故などの[…]
保険料引き上げのおもな理由は「2つ」 そもそも、なぜ保険料が値上がりするかというと、保険各社の「保険金の支払いが急増しているから」だ。交通事故増加などで支払いが増えれば、各社の収支は当然悪化する。これ[…]
自然と速度が落ちていく場所が、大渋滞のスタート地点 お盆シーズンは、長期休暇と相まって帰省や行楽地へ向かうクルマで大渋滞となるのが恒例です。どうしても出かけなければいけないなら、なんとかこの渋滞を回避[…]
最新の関連記事(クルマ雑学)
車内を快適に! カーエアコンの正しい使い方とは? 車内を快適な温度に保つために必要な、カーエアコンの正しい使い方を4つのポイントから見ていこう。 まずひとつ目のポイントは、カーエアコンの起動タイミング[…]
最初期のヘッドライトは、灯油を燃やすランプ式 クルマにヘッドライトが装着され出したのは1890年頃です。初期の頃は灯油を燃やして光源としていました。その後明るさを高めたアセチレンガスを燃料としたランプ[…]
圧倒的な高性能ぶりでライバルを圧倒したN360だが、当時の世評は世知辛くて…… 1967年春にホンダが発売した軽自動車のN360は、レースでの活躍ですでに世界に名を轟かせていた同社の2輪車用をベースと[…]
FFミニの成功は車体レイアウトの先進性とバーフィールド型ジョイントの開発が大きな要因であった ミニの誕生には、革新的レイアウトが驚きの目をもって迎えられたことには違いないが、多くのメーカーがそれにどっ[…]
世界初のガソリンエンジン車の駆動系 最初の自動車の駆動方式はミッドシップだった 最初の自動車は前輪駆動だった。1769年、蒸気で走る世界初の3輪自動車が現れたが、前1輪を駆動するFF車だった。蒸気機関[…]
人気記事ランキング(全体)
車内を快適に! カーエアコンの正しい使い方とは? 車内を快適な温度に保つために必要な、カーエアコンの正しい使い方を4つのポイントから見ていこう。 まずひとつ目のポイントは、カーエアコンの起動タイミング[…]
見た目では用途がわかりにくい、意外性のあるカー用品 世の中には多種多様のカー用品があり、奇抜なものから思わずおっと唸ってしまうようなアイテムがたくさんある。カー用品のお店やECサイトでカーグッズを探っ[…]
コンパクトに収まるベース仕様 RS1+のベースとなるのは、スズキ・エブリイワゴン。標準設定としてベッドマット、カロッツェリアの楽ナビ、そして諸費用を含む構成になっている。軽キャンピングカーを求める人に[…]
大人が手にする秘密基地 N-VAN コンポの最大の魅力は、まるで子供の頃に夢見た秘密基地を現実にしたような空間にある。助手席側の大開口部とフラットな床が生み出す自由度は抜群で、サイドオーニングを展開す[…]
全方位型のツインタイプの小型ファン 先日、ヘッドレストに装着するタイプの扇風機を愛車に導入したのだが、ファンとしてはオーソドックスな丸型タイプの扇風機も使う機会があったので、便利そうな2種を紹介してい[…]
最新の投稿記事(全体)
最高のマイバッハを唯一無二の特別装備で、さらなる高みへ この特別仕様車は、究極のラグジュアリーを追求するメルセデス・マイバッハに大自然からインスピレーションを得た特別な要素を組み合わせていることが特徴[…]
エンジン&NV性能向上で、快適な移動空間を実現 新型ルークスは、デザインやキャビン空間、走行性能、使い勝手など、全方位で進化。快適な移動空間を実現するため、エンジンユニットは燃費と静粛性を改善し、さら[…]
自宅からではなく「目的地で使う」 ホンダから新たなパーソナルモビリティ「UNI-ONE」が先日発表された。これは、ジャンル的には電動車いすと同等になるが、移動先の「目的地で利用するモビリティ」として利[…]
本日9月19日、トヨタ公式の“気になるサイト”がオープンした。詳しい内容についてのアナウンスはまだないが、何といっても目を引くのは並んだ5つのエンブレム。毎日深夜0時に“新たなメッセージ”が届くという[…]
老舗ビルダーが提案する、軽キャンパーの新たな可能性 近年、車中泊やアウトドアブームの隆盛は著しい。都市生活者のストレス増大やリモートワークの普及が、自然回帰への欲求を刺激していると分析される。 こうし[…]