衝撃的なルックスに気筒あたり3バルブを持つエンジン。国産初の4輪アンチロックブレーキやボレロを使ったテレビCMも話題となり、2代目は総生産台数60万台を超える人気車となった。スペシャリティクーペという、いわゆる「デートカー」として名を馳せたモデルである。
●文:横田晃
豊かになった日本の若者にも受け入れられた、スポーツ性と色気
当時の日本の若者に、初代プレリュードが魅力的に映らなかったのは仕方ない。
今見ると端正なフォルムも、当時のセリカやスカイライン、サバンナRX-7などのライバルと比べると「大人」と言えば聞こえがいいが、はっきり言ってオヤジグルマに見えていた。
ほとんどのグレードに電動サンルーフを装備し、高級なコノリーレザーシートも用意した室内は快適だったが、当時のスポーツカーの常道だったずらりとメーターが並ぶコックピット感覚とは程遠く、刺激的な高性能エンジンの設定もなし。
さらに致命的だったのは、プレリュードが採用するFF方式は、スポーツ走行には向かないという当時のメディアの論調だった。
実はその足回りのレベルは高く、目の肥えた批評家からはFFのネガを感じさせない上質なハンドリングと評されたものの、クーペと見れば自動車雑誌がサーキットに持ち込んでタイムを競う世相には、マッチしなかったのも事実だった。
開発されたテストコースの地名を取って、「三次ポルシェ」と呼ばれたサバンナRX-7の前では、優雅な「川越ベンツ」(プレリュードが生産される狭山工場の最寄りインターチェンジは関越道の川越だった)の俗称も、揶揄にしか聞こえなかったのだ。
しかし、急速に発展・成熟していた当時の日本は、その優雅な個性にたちまち追いついた。1982年に登場した2代目プレリュードは、初代の不人気が嘘のように、日本国内でもブレイクしたのである。
極限まで低く設計されたボンネットがもたらす、スポーティなシルエット
2代目プレリュードには、初代で築いた大人のパーソナルクーペという個性に加えて、ホンダらしいこだわりのある付加価値がいくつも与えられていた。最も目につくのは極限まで低められたボンネット。そのために採用された凝ったダブルウイッシュボーンの足回りは、ほとんどロールを感じさせることなく機敏に回頭する、独特のハンドリングも実現させていた。
ヤンエグ層を中心に「デートカー」として歓迎
先代の個性でもあったサンルーフに加えて、日本車初の4輪ABS(当時ホンダはALBと呼んだ)も搭載。さらに助手席のリクライニングレバーを右側にも備え、センターコンソールを低く抑えたインテリアは、当時の流行語だったヤンエグ(ヤング・エグゼクティブ)のデートカーとして歓迎されたのだ。バブル景気に向かって日本中が盛り上がる時代に、大人のための色気のあるクーペというホンダの商品企画は見事にマッチ。CMに使われたラヴェル作曲の「ボレロ」の調べとともに、プレリュードは時代の寵児となった。
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