
2024年10月4日にホンダのものづくりセンターにて開催された「Honda 0 Tech Meeting」。2026年からホンダがグローバル市場へ投入を予定している新たなEV「Honda 0シリーズ」に搭載予定の次世代技術がお披露目されたほか、プロトタイプに試乗することもできたので、その様子をリポートしていこう。
●文:川島茂夫 ●まとめ:月刊自家用車編集部
2024年1月に発表されたHonda 0シリーズのコンセプトモデル
本年1月に次世代BEVとしてホンダから発表されたコンセプトモデル2種。ミニバン型の「スペース ハブ」はともかく、フル4シーターの「サルーン」は純コンセプトモデル。そのままのプロポーションやシルエットを市販モデルに展開するのは無理がある、と思っていたのだが、それは早合点にしか過ぎないようだ。
スペース ハブ
サルーン
ホンダ 0シリーズに搭載予定の次世代技術
「Honda 0 Tech Meeting」で公開されたパワートレーン&バッテリーは、とてもコンパクトであり、とくに上下の嵩(かさ)が少ない。新工法を導入して省パーツ数と軽量化を進めたバッテリーパックもモーターと駆動系をひとつにまとめたeアクスルもとてもコンパクトな造りであった。
バッテリーパックはセルを纏めたモジュール(セル数非公表)を13個で構成し、フロア下の大半を覆う。その外縁は見た目にも頑丈なアルミ押出材のフレームが囲う。側突等の衝突被害を考慮した設計だが、フレーム剛性も相当高そうであった。
軽量・薄型バッテリー
ただし、前輪周りのフレームは変形を積極的に活用してタイヤの接地角の最適化を図っている。フレームをサスの一部として用いる弾性設計を部分的に取り込んだと考えていいだろう。なお、前後ともサスにはヘルパースプリングのエアサスを用いている。
サルーンのフレーム 現段階では、サスペンションにはエアサスを採用している。
走行ハード面のもうひとつの特徴はDBW(ドライブワイヤー制御)の全面展開だ。純電動からすれば加減速制御系は当然だが、発表されたゼロシリーズでは操舵系もDBW化され、理論上では加減速やサス稼動、操舵輪切角の統合制御も可能となっている。
そして、eアクスルは現在50kWと180kWの2仕様が用意され、「サルーン」が前後輪とも180kW仕様になるほか、BEV用に前50kW/後180kWの組み合わせ、50kW仕様をHEVの4WD仕様の後輪駆動用への展開が予定されている。これまでホンダの4WD車はe:HEVを含めて機械式を採用していたが、今後はHEVの上級モデルではツインモーター4WDが主力となりそうだ。
プロトモデルに試乗 気になる新EVの実力は…?
そしてこの取材のハイライト、新世代BEVの技術開発プロト車試乗だ。DBW操舵系こそ組まれていないが、前記した一通りのハードと機能が盛り込まれているとのこと。
プロトモデルは、CR-Vベースの「SUVタイプ」とアコードがベースの「セダンタイプ」の2台が用意され、我々は「セダンタイプ」に試乗した。
最も印象に残ったのは際立つスムースさ。スポーツモード設定からの試乗となったが、瞬発力やエンブレ(回生)、転舵応答はスポーツモデル的。荒っぽい操作をしても揺れ返しや神経質な動きは排除されていたが、BEV特有のダイナミックさは少々過剰気味。ホンダの開発陣によるとプロトモデルの段階なので、ノーマルとスポーツモードの違いを分かりやすくしているからだという。
セダンタイプ
ということで、試乗途中からノーマルモードに変更。揺れ返し等の雑味の排除がとても良く伝わってくる。素早く反応するが、加減速でも旋回力でもG変化の繋がりがいい。深いロールからの切り返しでも揺れ返しはほとんど感じないし、Gも挙動もライン制御も狙ったとおり。挙動を抑える補助や補正の操作なしで済んでしまう。
同乗者にもドライバーにも優しく、走り全体が人車一体とストレスフリーを軸に新世代に突入した感があった。ホンダが今進めている走りの哲学を最も高い水準で実現したモデルとも言える。
加速は静かでなめらか。踏んでいったときの伸びもかなり良い。
次世代の技術とホンダが目指しているクルマ造り、2026年のホンダ 0シリーズがますます楽しみになった。
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