低年式車でこそやって欲しい! クルマ買い取りで限界まで〝高取り〟させる「交渉テクニック」&「パワーワード」

●文:松本隆一

複数の買取店の担当者(バイヤー)に同じ時間に集まってもらう、ガレージオークションが極めて効果的

松本:今回のテーマは、前から予告していた「ガレージオークションに上手なやり方」だったね。

ーーさっそく〝ガレージオークション〟について説明してください。

松本:実は〝ガレージオークション〟って言葉、月刊自家用車が使っているだけで、一般的な言葉じゃないんだ。

――〝ガレージセール〟って言葉は聞きますよね。

松本:それは「不要になった家具や電化製品などに値札をつけて、自宅のガレージや玄関先、庭先に出して売る」ことだけど、ここでいう、ガレージオークションとは〝似て非なるもの〟と考えていただきたい。

――簡単にいうと?

松本:複数の買い取り専門店のバイヤー(仕入れ担当者)をユーザーの自宅に集めて、それまで乗ってきたクルマ(中古車)の競売(オークション)をおこなうことだね。その際、自宅の車庫でセリをすることが多いため〝ガレージオークション〟と名付けたわけだ。

月刊自家用車本誌でお馴染みの松本隆一氏。新車購入ひとすじ40年以上のキャリアを持つ「値引きの神様」であり、これまでに多くのユーザーの新車購入をサポートしてきている。毎週火曜日の12時~17時に(一部休みの日もあり)クルマの購入に関しての電話相談(03-5830-0267)も実施しているので、新車購入で困ったことや、気になるクルマの値引き額の目安、効果的な商談テクニックを知りたいならば遠慮なく相談して欲しい。ちなみにメールでの相談にも対応している。https://form.run/@jikayosha03まで。

同じ時間で競い合ってもらうから、ディーラー下取りより、高値になるのは必然

――なるほど。新車に買い替えるときは、新車ディーラーに下取りに出すのが一般的ですが、最近は買い取り専門店に売却するケースも多くなっていますよね。

松本:たしかに、下取りに出すほうが手っ取り早く、手間がかからないけれど「損得勘定をしっかりやりたい!」というなら、買い取り専門店にも査定させて比較することが不可欠だね。実際、買い取り専門店のほうが高くなるケースも多いので、これを無視したら大きな損をしてしまうよ。

――松本さんが買い替えるときはかならずガレージオークションをやっていますよね。これまでの成果はどれくらいですか?

松本:いままで買い替えの際に4回ほどガレージオークションをやっているけど、下取りには出さないで、すべて競売を勝ち抜いた買い取り専門店に売却しているよ。新車ディーラーが提示してきた下取り額に比べて、一番差がついたケースでは21万円高、一番低いケースでも9万円高だった。

ランドクルーザーシリーズのようなマニアから絶大な人気を持つモデルは、ガレージオークションは効果的。買い取り専門店のバイヤーもカーオークション取引での強さを知っているので、ぜひとも欲しいと本気で競ってくる。ディーラーの下取り額を提示して、一番高いところに売却するというだけで、限界に近い金額を引き出すことができるだろう。

高年式車は特に効果大だが、低年式車でも試す価値はあり

――ガレージオークション、おそるべし!(笑)。松本さんの場合、新車から3~4年で買い替えているから差額も大きくなると思いますが、低年式車でも差がつきますか?

松本:やる価値はあると思うよ。下取りではほぼほぼゼロ査定だったクルマに5万円以上の値がつくこともあるね。最近では中古車の海外輸出が盛んにおこなわれているので、日本の中古車市場では商品価値がない低年式車でも輸出ならしっかり値がつくケースも多いよ。

――ガレージオークションはどういうタイミングでやるんですか?

松本:いきなりそこにいくわけにはいかない。最初から説明させてくれ。

――わかりました、聞きましょう。

松本:まず買い替えが決まったら、狙いの新車を取り扱っている正規ディーラーと商談を開始する。値引き交渉が終了して注文書にサインする直前に「下取り車は出さない場合もある。下取り車がなくなった場合の支払い条件を確認したい」と申し込むんだ。

――そのへんをわかりやすく具体的にお願いします。

松本:たとえば、車両とオプション、諸費用の総額が300万円で、値引きが30万円、下取りが70万円だったとすると、支払い総額は200万円だが、下取りを出さなかったら70万円が消えるから、支払い総額は230万円ということになる。さらに下取り費用と下取り査定料が計上されていたら、これも差し引く。費用額が合計2万円だったら、下取り車なしの支払い総額は228万円となるわけだ。ここまではOK?(笑)

――なんとか大丈夫です(笑)

松本:で、間違えのないように、新車注文書の備考欄に「下取り車を出さなかった場合の支払い総額は228万円」などと記してセールスマンの判子を押しておいてもらうといい。注文書にサインすると「下取り車は新車ディーラーにかならず売却する」という契約が成立してしまうので、これを「無効にしておく」わけだ。

――注文書って新車の売買契約だけでなく、中古車(下取り車)の売買契約にもなっているんですね。
松本:その通り。ただし、備考欄に前述のように記しておけば、納車の直前まで下取り車を自由に売却できるわけだ。そして、納車が近づいた時点で、いよいよガレージオークションを実施する。具体的には納車日の1週間くらい前がいいね。

セダンやハッチバック系は、国内での中古車需要は限定的ということもあって高価格で取引されるモデルは少ないが、海外も視野に入れれば話はまるで違ってくる。全国各地で開催される中古車オークションでは輸出を前提にしたコーナーが設けられているなど、積極的に取引されている。自分では廃車にするレベルと思っていても、しっかりお金に変えるルートが確立されているモデル(メーカー)もあるので、決めつけずにガレージオークションを試みて欲しい。

インターネットの一括査定を活用すれば、誰でも簡単にガレージオークションが開催できる

――オークションに参加してもらう買い取り専門店はどうやって選ぶんですか?

松本:インターネットの一括査定を利用するのが一番手っ取り早い。「ネット一括査定 クルマ」と入れて検索をかければ、複数のサイトがあがってくるよ。

――たくさんある買い取り専門店にそれぞれ連絡するなんてめんどうですよね。

松本:ここで注意してもらいたいのはバイヤーたちの〝怒涛の攻撃〟だ。

――え? 〝怒涛〟なんですか?

松本:試したことのある人ならわかると思うけど〝怒涛〟という表現がぴったりなんだよ。申し込みシートに必要事項を入れて送信すると、10分もしないうちに買い取り専門店から電話が押し寄せるんだ。キャッチホン設定となっている場合はこれをキャンセルしておいたほうがいい。通話している途中にキャッチがどんどん入ってあわてるよ(笑)。

――まさに〝怒涛〟じゃないですか(笑)

松本:ちなみに、申込シートには「買い取り希望額」という項目があるけど、ここははっきり金額を記入する必要はない。?マークでも入れておけばいいだろう。

――で、買い取り専門店から怒涛の電話がかかってきたら、どうやってさばくんですか?

松本:はっきりと「〇日の〇時に来てください。各店に集まってもらって競売で売却を決めます」と伝えることだ。

買い取り専門店の査定は、短くてもおおよそ20分くらいの時間を見込む必要がある。会社ごとに個別で対応していると、ユーザーの負担は大きくなってしまう。その点、買い取りを希望する会社のバイヤーに同日同時間に集まってもらうガレージオークションならば、立ち会いを1回で済ますことができる。タイムパフォーマンスの面からもオススメだ。

ガレージオークションは、実は買い取り店にもメリットあり

――競売なんていって、嫌がられませんか?

松本:大丈夫。ふたつ返事で了承してくれるよ。こういうやり方で売却するユーザーが多いから、向こうも慣れているからね。なかには「店どうしに結託されませんか?」って心配する人もいるけど、買い取り専門店の競争は激しいので、結託なんてことにはならない。むしろ出し抜こうとしてくることは多々ある。事前に訊ねてきて「いますぐ売ってもらいたい!」って仕掛けてくるわけだ。実際、私も経験があるよ。指定した日の前日に突然訪ねてきて「いくらなら、いまこの場で売ってくれますか?」って熱心に迫ってくるんだ。断ってもなかなか帰らないので、買い取り値を提示させたら、これが低すぎて話にならない(笑)。

ガレージオークションでズバリ、一番大切なのは「最低入札価格」だ。これは新車ディーラーが提示してきた下取り額をベースに決めるといい。たとえば、下取り額が70万円だったら、それ以上の額に設定するわけだが、あまり高くしないほうが賢明だね。10万円高の80万円っていいたいところでも、75万円くらいに設定するほうがいい。

あと、買い取り店サイド(バイヤー)にとっても、ガレージオークションはありがたい面がある。その場でユーザーがクルマを売ってくれるか、それとも見込みがないのか、すぐに分かるので、一日のスケジュールを立てやすい。だから遠慮なく、都合の良い日時を伝えてしまってOK。もし、その時間にこれないというならば、それはご縁がなかったということと割り切っていい。

いざ買い取り専門店に集まってもらったら、ディーラー提示の下取り価格以上ならば売却する、と伝えればOK。その時には納税証明書や自賠責保険の書類など、車両の引き渡しに必要な書類が揃っていることを伝えると、バイヤーのやる気が変わってくる。ユーザーサイドも短期間で決着させる(させたい)という姿勢をアピールするのも、良い結果を引き出すテクニックのひとつだ。

「今日中に、売却先を決めちゃいます」これが高値買い取りのパワーワード

松本:買い取り専門店が集まってきたら「今回の最低入札価格は〇万円です。それ以上の値をつけられるという方だけ参加してください。査定の時間は1時間です。〇時になったら競売を開始します。落札した店には1週間後に引き渡します」などと伝えるんだ。必要書類を用意しておいて「落札したら、この場で引き渡します」ってやるのも大いに効果的だよ。1週間くらいなら新車ディーラーも代車を用意してくれるだろう。

――もしも、集まったバイヤーが最低入札価格を聞いて「そんな高値はつけられない」っていって、全員が引き上げちゃったら、どうなります?

松本:どうにもならん。オークションは流れってことだ。でも、下取りに出して購入することになるから、損はしないよ。もしも、1店だけ残ったら「最低入札価格で売却が決定」ってことになる。前述の例でいえば75万円だから、下取りより5万円の得ってことになる。もしも、2店以上が参加することになったら、競売がスタートするわけだ。

ガレージオークションには、3つのやり方が存在している

――競売ってどんなやり方を採るんですか?

松本:やり方は3通りだ。まずは入札方式。集まったバイヤーの名刺の裏に入札価格を記して投票してもらう。少しでも高い値を付けたら落札となるからバイヤーが提示してくる入札価格は80万円とか90万円といった、切りのいいきれいな数字ではなく、80万1000円とか90万5000円とか、千円単位できざんでくるケースが目立つね(笑)

――なまなましいですね(笑)

松本:そして、もうひとつはセリ方式。居並ぶバイヤーたちに端から入札価格を声に出していってもらう。スタートは最低入札価格+αだけど、1000円づつあげていくことが多い。私がこの方式でやったとき「めんどうだから1万円単位であげてもらいたい」って頼んだら言下に「そんなことできません!」に断られちゃったよ(笑)。

――端から80万1000円、80万2000円ってあがっていくわけですね。

松本:いや、途中で90万円!とか急にあげることもある。

――おー、スリル満点ですね(笑)

松本:途中で一人、また一人と下りていく。最後は残った二人の対決となるわけだ。途中で下りたバイヤーからは「そんな値で商売になるのか!」なんで声が飛ぶこともあったね。いわれたバイヤーは「大丈夫、大丈夫」なんて応じてた(笑)。

――どんどん値が上がっていくと昂奮しますね。

松本:「もっといけ、もっといけ!」って、大盛りあがりだよ(笑)。最後の対決となって、どちらかがアップすると「あっちゃー」なんて悲鳴があがる。悲鳴をあげながらもアップしてくるけどね(笑)。前回のガレージオークションではその前にも参加していたバイヤーがいて「このあいだは負けたけれど、今回は勝つまで立ち尽くします!」って気合をいれていたね。その言葉通り、立ち尽くして勝利をもぎ取った(笑)。契約のときは握手を求められたよ(笑)

――セリ方式、めちゃおもしろそうですね。

松本:三つ目のやり方は入札とセリのミックス方式だ。名刺に価格を書いて投票してもらい、上位2店とか3店で、セリをおこなうというやり方だ。

――高値がつかない低年式のクルマは入札方式が向いていますよね。

松本:その通り。逆に高値がつきそうな人気車や高年式車はセリ方式をお勧めしたい。以前、月刊自家用車に連載中の「X氏の値引き大作戦」に参加した読者が2年落ちのアルファードの最上級グレード&フルオプションが下取りだったことがあるんだけど、ガレージオークションを実施してセリ方式を採ったら、最終的に新車ディーラーの下取り価格より29万円も高値になったって例があるよ。

――おお、素晴らしい! みなさん、ぜひガレージオークション、試してください!

編集部担当も、数年前にガレージオークションで4年落ちのミニを売却した経験がある。その時に集まってもらったのは4社だったが、名刺の裏に査定金額を書いてもらう方法で、一番高い買い取り店に売却することになった。かかった時間はおおよそ40分ほど。そのときに落札できなかった会社のバイヤーに御礼をいったところ、「すぐに結果が分かったので、ぜんぜん問題ありませんよ。次のクルマの売却のときもご連絡してください」と爽やかな笑顔で去っていったことも印象的。ちなみに落札した会社のバイヤーは、「すぐにでもクルマを引き取りたい」と希望してきたので、契約書類にサインしたのち、その日の夕方にはミニとサヨナラすることに。なお、落札金額は3日後に銀行に振り込まれていた。

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