
東京オートサロン2025のSUBARU/STIブースの一番の目玉車は、 ニュルブルクリンク24時間レースでの経験を通じて得た知見を活かし開発されたSTIコンプリートカー「S210」のプロトタイプだろう。このモデルのどこが凄いのか? 見るべきポイントを解説しよう。
●文:横田晃(月刊自家用車編集部)
STIのチューニングが濃密に注がれた、希少な2ペダルスポーツセダン
スバルのモータースポーツ統括会社、STI(スバルテクニカインターナショナル)の手になる限定コンプリート車は、今やオートサロンの名物のひとつ。2024年のWRX S4 STI Sport♯も、その前年のレヴォーグSport♯も、スバルブースでは黒山の人だかり。それぞれ限定500台は抽選であっという間に完売となった。
今回出展された「S210プロトタイプ」は、その勢いにターボがかかりそうな1台だ。STIのSモデルは、スバルのモータースポーツ活動で得られた知見をフィードバックして、ロードカーの最高峰を目指したチューニングカーのシリーズ。2000年に誕生した初代インプレッサがベースのS201に始まり、レガシィベースのモデルも交えて、今回のS210で通算10台目(2019年の北米向けS209は除く)となる。最後に国内販売されたS208は2017年に登場した、WRX STIがベースのモデルだった。
スバルは、1990年代に連覇を遂げたWRC(世界ラリー選手権)から撤退した2008年からは、世界一過酷なコースとして知られるドイツのニュルブルクリンクサーキットで開催される24時間耐久レースに、WRXで毎年チャレンジしてきた。コロナ禍で欠場した2020/2021年を除いて15回目のエントリーとなる2024年5月30日からのレースでは、クラス優勝もはたしている。
WRX S4がベースのS210は、その優勝マシンのノウハウを注ぎ込んだ2ペダルスポーツセダン。ちなみにレースカーも今では2ペダル車だ。
2.4Lの水平4気筒ターボは、ノーマル比で25psアップの300馬力仕様
2.4Lの水平対向4気筒DOHC直噴ターボエンジンは、ノーマルより25psアップの300ps。ちなみにニュル参戦車は380psのレーシングチューンだ。255/35R19のタイヤサイズはレースカーとは異なるが、それを履くBBS製鍛造ホイールは、微少舵応答/限界性能向上のためにリム形状を最適化し、前後異形となるレーステクノロジーを反映した専用フレキシブルパフォーマンスホイールとなる。
S210のロゴがあしらわれたSTI製フレキシブルドロータワーバーや、サスペンションの取付剛性を高める前後スティフナー、トランスミッションフルードクーラーなど、本気の走りに応える備えも怠りない。
ホイールアーチにはまるでSUVのようなガーニッシュが備わるが、複雑な形状のルーバーが穿たれたそれも、タイヤハウス内の空気をスムーズに排出するレーシングパーツ。ブレンボの対向6ポッドブレーキキャリパーやドライカーボンリヤスポイラーなど、ニュル24時間レースで証明された技術とノウハウが、これまで以上に色濃く再現されているという。
インテリアはレースカーより色気のある仕上げだ。レカロ製カーボンバックレストフロント8ウェイパワーシートは、ナッパレザー&合皮張り。STIオーナメントの備わる本革巻きステアリング/シフトブーツ/シートベルト/エンジン始動ボタンなどには赤いステッチや差し色が使われて、ピアノブラック塗装の加飾パネルと対比を見せ、室内を精悍に引き締める。つまり持つ喜びも満点だ。限定500台ながら、抽選販売というのは偉い!
8年ぶりのSモデルとなるS210は、この夏に限定500台ポッキリが発売される。抽選販売だから急ぐ必要はないが、スバリストと呼ばれる熱心なファンではなくとも、ディーラーに駆け込んでいち早く詳細な情報を仕入れる価値は間違いなくありそうだ。
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