
昔憧れたクルマや、所有していたクルマ。もう一度「手にしたい」と思っても、昨今の旧車/ネオクラシックカーは目を疑うような価格帯になってしまったモデルも少なくない。そこで「120回ローンを組んででも買っておきたい国産車」と題して、モデル概要や現在の相場、「実際、買いか否か」などを考察してみた。なお本記事は、NA1のみの設定だった初期型NSXで記事をまとめている。
●文:松村 透(月刊自家用車編集部)
ホンダNSX[NA1] 概要
1990年9月。ホンダから、誰もがひと目でスポーツカーだと分かるフォルムをまとったNSX(NA1型)がデビューした。
ご存知の通り、NSXは量産車として当時世界初となる、オールアルミモノコックボディを採用している。また、エンジン/シャーシ/足まわり、さらにはシートの構造部材に至るまで、各部にアルミ合金が用いられ、大幅な軽量化を実現したのだ。
そのデザインは、超音速ジェット機をイメージしている。キャビンをフロント寄りにレイアウトした、ミッドシップエンジン車ならではのキャノピーデザインが特徴。
さらに、高曲率大型ラウンドガラスを採用することで、ミッドシップレイアウトのスポーツカーにおけるトップクラスの視界を確保している。ちなみに数値上では、水平方向で311.8度という”全方位視界”ぶりだ。
NSXに採用されたエンジンは、新開発の排気量3リッターV6気筒DOHC VTECのC30A型が搭載され、最高出力はNAエンジンながら280psを発揮した(ATは265ps)。
また、4チャンネルデジタル制御式のABS/トランクションコントロールシステム/SRSエアバッグシステムといった、当時としては多くのクルマがメーカーオプション扱いだった(あるいはまだ設定すらなかった)さまざまな安全装備が採用された。運動性能だけでなく、安全性にも配慮が行き届いたモデルだったといえる。
注目すべき点としては、NSXを生産するにあたって栃木県に少量生産の専用工場を新たに建設したこと(2004年4月に閉鎖)。この工場で、1日あたり25台ペースでNSXが生産された。その後、S2000やインサイト(一部モデル)も、この工場で生産されている。
各構造部品のほとんどをアルミ化し、軽量化を図った”インホイール型サスペンション”を採用。4輪ともダブルウイッシュボーンだ。
大型コンソールで前席間を分割し、最適な空間を目指したという”ダブルサラウンドコクピット”を採用。これまでと同等の冷暖房能力を持ちつつ、30%小型化させた新エアコンユニットを縦置きに搭載するなどし、スポーツカーらしい低全高と室内スペース確保に注力。
ホンダNSX[NA1] デビュー時グレードの主要諸元
NSX
- 全長×全幅×全高:4430×1810×1170mm
- ホイールベース:2530mm
- 車両重量:1350kg(MT)/1390kg(AT)
- 駆動方式:MR
- トランスミッション:5速MT/4速AT
- エンジン:水冷V型6気筒DOHC24バルブ
- 排気量:2977cc
- エンジン最高出力:280ps/7300rpm(MT)/265ps/6800rpm(AT)
- 最大トルク:30.0kg-m/5400rpm(MT)/30.0kg-m/5400rpm(AT)
- タイヤサイズ:205/50ZR15(フロント)/225/50ZR16(リヤ)
エンジンはビッグボア×ショートストローク型。センタープラグのペントルーフ形燃焼室などで圧縮比10.2とした“スポーツ型エンジン”だ。キャビンはフロントに大きく前進させレイアウト。さらに、高曲率大型ラウンドガラスの採用も特徴だ。
新車時の価格と中古車の価格帯
ホンダNSX[NA1]
- 生産期間:1990年9月~1997年1月
- 新車時価格:800.3万円〜1035.7万円
- 中古車の価格帯:600万円~1358万円
今回の記事はNA1型のみだった初期タイプ(NSXを1〜4期で分けると1期のみ)でまとめており、タイプRおよびNA2型、1997年のマイナーチェンジ後も残ったNA1型は含まれていない。いわゆる「登場時のNSX(3リッターモデル)」のみの中古車相場ということになる。
意外…といってはなだが、R34のGT-RやA80スープラなどと比較すると、驚くようなプレミア価格とはいえない印象を受ける(それでも高いことに変わりはないのだが)。
基本的にはATが主流でMTの流通量は少なめ。人気があるのは当然ながらMTの方だ。走行距離が10万キロを優に超えた個体も少なくないが、もともと高価なクルマだけに大切に乗り継いでこられた個体も多いと推察する。
それだけに、強気の価格で売られていることも多い。極端に低走行の個体よりも、年式相応かつきっちりとメンテナンスを受けてきたクルマを、選択肢に入れるのはアリだろう。
空力テストの結果、気流に沿うように絞り込んだリヤや長く低いテールエンドに。なだらかに傾いたリヤウインドウも、優れた空力に寄与。
買いか否か:「憧れを現実にする価値は…」
NSXがデビューした当時、800万円オーバーという車両本体価格に驚いたものだ。それでも注文が殺到し、納車まで2年待ちなどと言われた。
やがてバブルが崩壊し、相次いでキャンセルが出たことなどにより、安定した資産を持つクルマ好きの手に渡ることとなった。
屋根付きのガレージで大切に保管され、セカンド/サードオーナーと代替わりをしても”過保護”にされてきた個体が多いのだろう。
いっぽうでモディファイされた個体も多く、後期型の6速MTに換装されたクルマもある。また、一部の純正部品が欠品/製造廃止となりつつあるので、信頼できる主治医の目処がつくようなら、思い切って手に入れる価値はあると考える。
V型6気筒エンジンは横置きに、トランスミッションは側方配置とするなど工夫して生まれたパッケージング。オールアルミボディとすることで、ホワイトボディ重量は210kg。スチールボディに比べ140kg、軽量化を果たした。
今回紹介したのは初期型。1997年2月からは3.2LのNA2が登場したが、3.0LのNA1も2005年の生産終了までラインナップされていた。なお2001年の12月からは各グレードのヘッドランプがリトラクタブルではなく固定型に。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。※中古車価格は大手検索サイトをもとにした2024年11月時点調査のものです。
最新の関連記事(旧車FAN | ホンダ)
自動車業界を震撼させた通産省の業界再編法案 近代日本の産業の多くは、俗に「護送船団方式」と呼ばれる国の指導下で成長してきた。銀行や保険会社の利率や商品構成が、つい最近までどこも同じだったように、国の保[…]
世界一の二輪技術を注いだ暴れん坊として誕生 前述のように、「ホンダ・S500/S600/S800」は、オートバイメーカーだったホンダが初めて4輪の乗用車としてリリースしたモデルです。 このモデルが初め[…]
高回転まで気持ちよく回るNAエンジン 日本人というのは、制約があってこそ創意工夫の実力を発揮する民族なのかもしれない。狭い国土に人がひしめき、多くが山岳地で耕作面積も狭ければ資源にも恵まれないというな[…]
軽自動車でも豪華で個性的なクルマが求められた時代。それを象徴するモデルとして誕生 1980年代の軽自動車市場は、1979年デビューのスズキ アルトなどの経済的な商用車がリードした。しかし、1989年に[…]
日本人のマイカー観を大きく変えた2BOX どの国においても、モータリゼーションの黎明期に誰もが憧れるのは、堂々としたステイタスを表現できるセダン。日本においても、初代サニーやカローラを筆頭とするマイカ[…]
人気記事ランキング(全体)
ベース車両はダイハツのアトレー ダイハツ・アトレーは、主に商用バンとして開発された経済的な車両だ。軽自動車の規格内でありながら、効率の良いスペース活用で広い室内空間を確保。荷物の運搬を前提に開発されて[…]
ベース車両はミツビシのデリカD:5 ベースとなる車両は、三菱(ミツビシ)のデリカD:5。悪路走破性に優れた4WDシステムを搭載しながら、乗り心地や室内の快適性も確保されていることで、ミニバンの中でも人[…]
自動車業界を震撼させた通産省の業界再編法案 近代日本の産業の多くは、俗に「護送船団方式」と呼ばれる国の指導下で成長してきた。銀行や保険会社の利率や商品構成が、つい最近までどこも同じだったように、国の保[…]
ベース車両はスズキのエブリイ ベースとなる車両はスズキのエブリイ。燃費の良さや、運転のしやすさが際立つ軽自動車であるにもかかわらず、広い車内空間を誇る人気車だ。 シンプルでコンパクトな外観は、街乗りで[…]
ベース車両はハイゼットトラック ベースとなる車両はダイハツのハイゼットトラック。国内の一次産業から建設業や配送業など、さまざまなシーンで活躍している人気の軽トラックだ。広い荷台には様々な荷物を載せて運[…]
最新の投稿記事(全体)
「RACEモード」や「AMGダイナミックエンジンマウント」をGLC 43に初採用 今回導入される2つのモデルは、エクステリアは、マット塗装の迫力ある外装色に専用加飾としてブラック&レッドのアクセントを[…]
装備設定の変更で、人気のブラック系パーツ&ホイールが、全グレードにOP設定 今回導入される「レンジローバー・イヴォーグ」2026年モデルでは、PHEVモデルの「P300e」に「S」と「DYNAMIC […]
大人数でもOK! ベース車両はトヨタのハイエース ベースの車両はトヨタのハイエース。大型の荷室は、快適な車中泊空間や収納スペース、キッチンやベッドなどのレイアウトに柔軟に対応可能。カスタムの幅が広く、[…]
車の足元は暗くて見にくい、そんな時のコンパクトライト 車の座席の下は暗くて、何か物を落とすと見つけにくい。例えば夜、足元に小銭を落とした際などは、車内はとても暗くて、次の日の明るい時間にならまいと見つ[…]
ベース車両はトヨタのハイエース ベースの車両はトヨタのハイエース。堅牢な作りと高い信頼性で知られる商用バンの代表格。カスタムの幅が広く、アウトドアを中心としたユーザーに、非常に人気の高い車だ。 ハイエ[…]
- 1
- 2