
長野県・苗場スキー場に作られた特設コースで、最新のアップデートを受けたトヨタGRカローラに試乗することができた。2024年8月に世界初公開された“進化型”GRカローラの国内初試乗になるが、雪が踏み固められた凸凹の圧雪路は、そのポテンシャルを知るにはもってこいの舞台。トヨタ自慢の最新ホットハッチの実力はいかに!?
●文:山田弘樹(月刊自家用車編集部) ●写真:トヨタ自動車
カタログモデルに昇格した進化型GRカローラ、ついに国内デビューへ!
Gazooレーシングが、水素エンジンとともに、GRカローラをスーパー耐久の現場で鍛え続けているのはご存じの通りだが、今回の進化型GRカローラには、ここで得られた知見と改良がふんだんに盛り込まれている。
まずパワーユニットとしては、1.6Lの直列3気筒ターボの最大トルクが、2022年に限定500台で発売されたローンチモデルの370Nm/3000~5550rpmから、400Nm/3250~4600rpmへと高められた。ちなみに最高出力は304ps/6500rpmのままだ。
ここで思い出してほしいのは、かつてGRカローラが500台限定の抽選という販売形態から“買えないモデル”として騒がれたことだ。
その状況に対して、当時からトヨタは再販の可能性を示していたが、つまりその約束はきちんと果たされたことになる。ホームページを見ると、工場出荷の目処についてはまだ不透明な部分もあるが、これがカタログモデルとなったことをまずは評価すべきだろう。
2月4日より受注を開始し、3月3日に発売される進化型GRカローラ。これまでは限られた台数に絞り込まれていた限定車という位置づけだったが、この春からはカタログモデルに昇格。走り重視のユーザーにとっては、嬉しい変化といえるだろう。価格は8速ATのGR-DAT車が598万円、6速MT車が568万円。
細部に及ぶ緻密な改良の積み重ねで、走行性能の底上げが図られた
話を戻すと、こうした高出力化に伴い、進化型GRカローラでは各部の冷却性能が強化された。
具体的には、まずバンパー形状を変更し、その右側内部にエンジン冷却用のサブラジエター(RZにメーカーオプション)が配置できるようになっている。
また逆サイドには、GR-DAT車の標準装備として、ATFクーラーが配置される。ちなみにここから入るエアフローはバンパーサイドから排出され、タイヤハウスからの乱流を引き出す効果をも得ている。さらにその内側、ラジエター脇のダクトはブレーキ冷却用ガイドとして機能する。
そしてこのパワーユニットを制御するトランスミッションには、GRヤリスで先行した8速AT「Direct Automatic Transmission」(以下GR-DAT)がラインナップされている。
対するシャーシ側は、かなりマニアックだ。まず前後のショックアブソーバーをリバウンドスプリング内蔵式に変更。併せてスプリングレートも約16%高められ、リヤトレーリングアームの取り付け点も従来よりも上げることで、加速時の沈み込みの抑制をした。
ステアリングコラムとインストルメントパネルリインフォースの締結ボルトも、高剛性な溝付きワッシャータイプに変更し、電動パワステ作動時の歪みを抑えた。同じくロアアームとロアボールジョイントの締結部、リヤショックアブソーバーのアッパー側ボディ取り付け部にも、締結剛性が高いボルトが採用されている。
走らせればすぐに実感できる、剛性感の高さ
今回はこうしたアップデートの効果を探るべくの試乗となったわけだが、用意されたコースの設定がシビアなことにも少し驚かされた。雪壁で仕切られた試乗路はかなり道幅が狭く、まるでラリーコースのようだ。
しかし結論から言えば、こうしたシビアなコースでも、GRカローラの進化はかなりの割合で体感できた。
苗場スキー場に設置された特設コース。進化した4WD制御を体感するには申し分がないが、コース幅が狭いこともあって、今回の進化型モデルの全貌を知るとまではいえなかった。
最初に試したのは、6速MTのiMT車。最初の完熟走行でわかったのは、クルマ全体の剛性感がとても高いことだ。だからいきなり雪の中を走らせても、緊張感よりも安心感が高かった。クルマ全体がしっかりしていて、じつに頼もしいのだ。
GR-FOURの制御モードは、まず「グラベル」から試して、そのあと「トラック」と比べてみることにする。走行モードは「SPORT」で、VSC(ビークルスタビリティコントロール)は「エキスパート」モードだ。
道幅が狭いこともあって、速度レンジは低めにならざるを得ないため、ギアの守備範囲は入れても2速までだったが、それでもこの6速MTが扱いやすいことは十分に理解できた。ショートストロークかつタッチがしっかりしているから、本気で走らせているような状況でも、正確なシフトが可能だ。
今回の試乗では2速までしか使えなかったが、シフトの入りの良さがとても印象に残った。
雪道だからよく分かるコントロール性の高さ。4WD制御とアシの良さを実感
1.6Lターボは低速からかなり力強いが、それ以上に4WDの制御がトルクをうまく吸収してくれるので、じゃじゃ馬的な扱いにくさはまったくない。アクセルを踏み込めばそのトルクを巧みに4輪に振り分けながら、滑りながらでもモリモリ加速してくれる。それがトレーリングアーム取り付け位置変更の効果なのかは正直わからないが、とても気持ち良い加速だ。
感心したのはブレーキコントロールで、スピードをきっちり殺す感覚はもちろん、フェザータッチでのフロント荷重のキープがとてもやりやすい。
ターンインは、駆動配分を50:50に固定するグラベルモードの方が個人的には走りやすい。車体加速度や車速に応じてトルク配分を60:40から30:70まで可変するトラックモードの方が曲がりやすそうなイメージだが、制御的には挙動を安定させる方向性なのかもしれない。
開発主査の坂本尚之さん曰く、制御モードは、「ドライバーの運転スタイルによって、好みが分かれます」とのこと。一般的にはセオリー通りに荷重移動でクルマを曲げるドライバーだと、グラベルモードを好む傾向のようだ。
ターンミドルで、足まわりが突っ張らないのも見事だった。今回の改良は、富士スピードウェイで言うと100Rのような高速コーナーでリヤの流れを抑えるためのレートアップとのことだったが、低ミュー路でもこれが硬すぎると感じないのは、リヤのスタビライザーを柔らかくしてバランスを取っているからだろうか。
なおかつダンパーにリバウンドスプリングを使ったことで、内輪の接地も上手に保たれている。どれかひとつというよりは、こうしたセッティングのトータルバランスが良いのだと思う。
またGRヤリスより80mm長くなったホイルベースも、その優れた安定性に貢献している。滑り出してからのコントロール性はもちろん、サイドブレーキで曲げた後の挙動も穏やかだ。そしてトラクションをかけ続けている限り、VSCが介入して挙動を抑えてしまうこともなかった。
8速AT「GRーDAT」の有効性は実感。でも6速MTならではの刺激も捨てがたい
最後はGRーDATとの比較だが、これはなかなかに悩ましい。8速のギア比が6速MTに対してどれほど有効かは今回の試乗コースではわからなかったが、それでもパドルシフトはレスポンスも良く、6速MTに対してクラッチ操作が減る分、運転に集中できる。
かつ左足を使えることでより細かいブレーキ操作が可能になるから、慣れているドライバーにとってはGR-DAT車の方が運転の幅は広げられるのではないか。現在対策中とのことだが、MTモードのままレブリミットに当たると、エンジン保護の関係からリタードしてしまう制御が改善されれば、さらにその完成度は高まるだろう。
GRーDAT車はクラッチ操作が省けることもあって、運転操作に集中できることにメリットがある。
ただ、6速MT車の方が運転そのものは刺激的なのだ。ということで今回のようなコースでは、勝敗は五分。だから開発のステージとなった富士スピードウェイで、その走りを確かめたい! と強くリクエストして、今回は締めくくることにしよう。
GRヤリスでも雪上試乗、よく動くアシと乗り心地の良さを改めて実感
ちなみに今回は、2024年1月に先んじて登場した「GRヤリス」でも雪上試乗することができた。
GRカローラとの違いは、ディメンジョンだけでなく、GR-FOURの制御モードや足まわりの細かい部分でも違うが、残念ながら同じコースを走れなかったので、単純に比較はできなかった。
しかし荒れた路面での足さばきには、目を見張るものがあった。とくにダンパーが伸びきってから折り返す領域での追従性の良さ、車体が跳ねず“スッ”と着地する様子と乗り心地の良さには感激した。それだけ車体剛性が高く、足まわりがよく動いているということだろう。
これまでサーキットやグラベルステージを走らせた経験から言うと、ショートホイルベースのGRヤリスは低ミュー路における回頭性が高く、その分だけコントロールするには腕前が必要。かたや路面μが高いサーキットではアンダーステアリングにセットされている印象がある。
対してロングホイールベースのGRカローラは、ドライ路面だとリヤの慣性重量が大きい分だけ、それをうまく使いながらニュートラルステア方向にセットされているのではないか。今回GRカローラで改良したリヤサスの話を聞いて、そんな期待が膨らんでいる。
GRモデルとしてはGRカローラの先輩になるGRヤリス。今回の雪路コースでの試乗では、荒れた路面での足さばきの良さが印象的だった。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(スポーツ)
伝統の血統と「究極のスパルタン」 「フェアレディ(貴婦人)」という優雅な名に反し、その中身は一貫して硬派なパイオニアの血脈を継承している。その祖先はダットサンスポーツSPL212にまで遡るが、市販スポ[…]
内燃機モデルもまだまだ進化する! 1972年、セリカ用に開発された1.6L DOHCエンジンを、ひと回り小型軽量なカローラクーペに搭載して誕生したTE27型レビン 。モータースポーツで勝つことを宿命づ[…]
オートサロンで注目を浴びた高性能モデル、まもなく発売へ 「Super-ONE(スーパー ワン)」は、2025年秋の「ジャパンモビリティショー2025」で初公開されたコンセプトモデルを具現化したもので、[…]
なぜ今、アナログなのか Garagisti & Co.が世に放つ「GP1」という解は、効率性とデジタル制御が支配する現代のスーパーカー市場に対する強烈なアンチテーゼだ。彼らが目指したのは、19[…]
機能性を煮詰めた新スタディモデルとして披露 現代の自動車産業は、電動化や自動運転といったCASE(Connected, Autonomous, Shared & Services, Elect[…]
人気記事ランキング(全体)
世界に通じるGTであれ! その証しに挑んだ速度記録 国産乗用車がようやく出現し始めた1950年代前半には、自前のテストコースを持つメーカーは存在しなかった。初代クラウンを開発していたトヨタは警察の協力[…]
大人気軽バンをタフで無骨なクロスカントリー仕様へカスタマイズ キャンピングカー選びにおいて、多くのファミリー層が直面するのがベース車両のサイズと購入費用の問題だ。休日のレジャーには大型のキャブコンバー[…]
愛車に常備して思い立ったらすぐ使える「移動式キッチン」 キャンプ用品をフルセットで用意するとなると、荷物の積み込みや準備だけで大掛かりになり、気軽にドライブへ出かけにくくなってしまう。しかし、トウキョ[…]
意外に多いクルマの死角をカバーするお助けアイテム 自動車は、構造上どうしてもドライバーの目線や純正ミラーだけでは確認しきれない「死角」が存在する。車線変更時の斜め後ろの車両、左折時に巻き込みやすい歩行[…]
GRの世界観を表現する専用の内外装 今回追加されたGR SPORTは、フロント・リヤの専用エンブレムをはじめ、専用デザインのフロントバンパー&ロアグリル、フロントサイドスポイラー、LEDフロントフォグ[…]
最新の投稿記事(全体)
異なる素材を重ね合わせた「2層構造」で、路面から伝わる振動を軽減 エーモンの「サイレントマット」は、異なる役割を持つ素材を重ね合わせた「2層構造」となっている。厚さ約15mmのマットの最下部には、高密[…]
「六輪生活」という、これまでの常識の枠に捉われない全く新しいライフスタイルを提案したホンダ ホンダが1981年に発売した極めてユニークな50ccの折りたたみ式原付スクーター「モトコンポ」。このバイクは[…]
信頼の「BimmerCode」開発チームが手掛けるOBD2接続型ガジェット 世界中のBMWドライバーから絶大な信頼を集めるECUコーディングアプリ「BimmerCode」や「BimmerLink」の開[…]
カペラとファミリアを繋ぐ、ロータリー専用の本格派スポーツ 1971年9月、マツダはボトムラインを担う「プレスト・ロータリー」と、ミドルクラスの「カペラ」の間を埋める戦略モデルとして、ロータリーエンジン[…]
豪華装備より”道具としての完成度” オーストラリアでは、広大な国土や農業・建設業などの需要を背景に、ピックアップは単なる乗用車ではなく、「仕事と生活を支える相棒」として暮らしに根付いている。 その激戦[…]
- 1
- 2




















