「これが未来のクルマか!?」ルノーの流線型EVデモカーは、航空機のテクノロジーも採り入れた究極の“移動式実験室”

●文:月刊自家用車編集部 ●写真:Renault

“超イカス”EV実験車「フィランテレコード2025」

「ルノー フィランテレコード2025」は、電力消費と航続距離の新記録を樹立するために開発された電動デモカー。ルノーにとって歴史的な新記録を樹立した1925年の「40CVデレコード」と、同じくレコードブレーカーの1956年製「エトワールフィランテ」にインスピレーションを得たものだ。

空力効率を考慮した全長5120×全幅1720×全高1190mmの流線型のボディは、シングルシーターを採用し、重量わずか1000kgを実現。新素材/新技術をテストするための移動式実験室であり、独自の摩擦低減タイヤ/ステアバイワイヤ/ブレーキバイワイヤを搭載した。

ステアバイワイヤ技術は、ステアリングホイールとステアリングラックモーター間の電子リンクに依存するため、ドライバーがハンドルを切るとシステムは中央のECUに電気信号を伝達、前輪だけでなくエンジン/ブレーキ/サスペンションなどの他の部品も使用して、車体をもっとも効果的に回転させる方法を決定する。

リチウムイオンバッテリーは、セニック Eテックと同じ87kWh容量が積まれ、セルトゥパック技術により高効率かつ省スペースを実現。車体重量1000kg中の600kgはバッテリーウェイトだ。

車体を構成するネジ類は航空機の製造技術からヒントを得ており、空力フェアリングから軽量シャーシまですべての機能がエネルギー効率を最大化するように設計されている。

シートはテクニカルテキスタイルで覆われた薄いカーボンブレードで支えられるなど、1g単位の軽量化策が投入される。コクピットを覆うキャノピーは前方に跳ね上げられるように開閉するが、ドライバーの乗降をサポートするためステアリングホイールも帯同する。

全長5120×全幅1720×全高1190mmの細長い流線型ボディは、電力消費と航続距離の新記録を達成するために過去のレコードブレーカーと航空機のテクノロジーを投入して制作された。

フロントとリアのホイールフェアリングは、アピアランスを特徴づけると同時に空気力学的性能に重要な役割を果たし、幅広のサイドホイールフランジとともに車体の途切れない流線型を構成して電力消費の削減に寄与する。

車両の中央より後方に備わるコクピットはシングルシーターを採用。ドライバーを保護し空力を高めるキャノピーはステアリングホイールもろとも前方に向けて跳ね上がる。

コクピットは航空機と宇宙工学にインスピレーションを得ており、細部に至るまでパフォーマンス、快適性、効率性を最大限に高めるように設計された。真横から眺めるとロング&ローのスタイリングが際立つ。

ステアリングホイールはガングリップのような特異な形状。ドライバーズシートはハンモックのようなスタイルのストレッチキャンバスで作られており、軽量設計でありながら最適なサポートを実現。

温故知新で技術をアピールするルノー

ルノーは同じフランスメーカーのシトロエンと比べ、一見すると堅実なクルマつくりを続けているように映るかもしれないが、じつはフィランテレコード2025のインスパイア元になった40CVデレコードや、エトワールフィランテなどの弾けたモデルも数多く製造している。

今回紹介した実験車両に100年前の速度記録車をオマージュするなど、自らのレガシーを大切にして後世に伝えるべく邁進する姿は、エンスージアストならずとも好ましく思えるはずだ。

最近ではEV普及に対してさまざまな意見が交わされているが、電動化にブランドの行く末を賭けたルノーの今後に注目したい。

ルノーが20世紀に速度記録挑戦車として製造した1925年製40CVデレコード(写真中央)と、同じく1956年製エトワールフィランテ(写真右)。フィランテレコード2025のボディカラーは、40CVデレコードにインスピレーションを受けて採用したものだ。

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