
マツダは、都内で開催したマツダ・マルチソリューション説明会2025において、今後マツダが展開する電動化のマルチソリューションを具現化する「ライトアセット戦略」を公表した。
●まとめ:月刊自家用車編集部
バッテリーEV専用工場の新設や生産性向上の施策に加えて、企業価値向上の取り組みも強化
マツダは、2030年までを「電動化の黎明期」と捉えており、マルチソリューションで電動化を進めているが、その具体的な取り組みや内容を示すのが、2025年3月18日に発表した「ライトアセット戦略」になる。
マルチソリューション説明会2025では、マツダの毛籠代表取締役社長が2030年に向けての電動化戦略のプレゼンテーションを行った。
- 2030年までの電動化投資1.5兆円がインフレの影響で2兆円規模となる見込みを、電池投資などの最適化により、総額1.5兆円程度に抑制。その内、電池投資は、全ての電池を自前調達する想定にインフレ影響を加味した7500億円から、協業を活用することにより、半減できる見通し。
- ものづくり領域では、独自の開発・生産プロセス革新である「マツダものづくり革新2.0」を展開。開発領域においては、より複雑な開発に対し、既存リソース水準を維持しつつ、生産性を3倍に向上させ対応。
- 2027年に導入予定のバッテリーEVについては、協業・パートナーシップによって、従来の開発と比較し開発投資を40%、開発工数を50%低減する見通し。
- 生産においては、既存資産を活用してバッテリーEVとエンジン車を混流生産することにより、バッテリーEV専用工場新設と比較し、初期設備投資を85%低減、量産準備期間を80%低減。
- 低投資で高い資産効率を確保の上、競争力ある技術・商品を提供。資本コストを上回るリターンを創出することで、持続的な成長を実現。
自動車業界が100年に一度の変革期を迎える中、マツダは、持続可能な技術開発と経営の柔軟性を両立させるとともに、「走る歓び」を次世代に適応させながら進化させ続け、ユーザーの日常に移動体験の感動を届けるとしている。
電動化投資の効率化も実施予定。インフレの影響で2兆円規模となる見込みを、電池投資などの最適化により、総額1.5兆円程度に圧縮されるという。
「マツダ ものづくり革新1.0」
- マツダの企業規模で多様なニーズや需要変動に対応する柔軟性と、スケールメリットによる効率性を両立する、マツダ独自の開発・生産プロセス革新を図る。
- 5~10年先に必要となる商品・技術をまとめて企画(一括企画)し、開発部門と生産部門が一体となり、車種間で共通化する固定要素と、各車種の個性となる変動要素を明確にした上で、将来の多様な商品に対応できる標準構造と標準工程を設計(コモンアーキテクチャー)し、汎用設備などを活用した混流生産(フレキシブル生産)することにより、柔軟性と効率性を両立する。
「マツダ ものづくり革新2.0」
- 電動化および知能化時代に、スモールプレーヤーとして開発・生産の柔軟性と効率性をさらに高めるための「マツダ ものづくり革新1.0」の進化。
- バッテリーEV からエンジン車までの開発・生産の一括企画。
- 開発領域では、「マツダ ものづくり革新1.0」で進めたユニット単位のモデルベース開発(MBD:設計開発活動において、実物の試作部品ではなくコンピュータ上で再現した「モデル」にその軸足を置いて活動を進めることで、性能構想、設計、部品試作やテストにかかる時間と手間を大幅に短縮・削減し、効率的に開発を行おうとする開発スタイル)を、AIなどを活用することにより、クルマ全体のモデル化へ進化。さらに、JAMBE(Japan Automotive Model-Based Engineering center:技術の普及促進、企業間・産学間でのモデル流通の仕組み構築を図る「MBD推進センター」の略称)などとの共創により、モデルベース開発をサプライチェーン全体まで拡張し、より高効率な開発を実現。
- 生産領域では、長年培ったマツダの強みである混流ラインに、Automatic Guided Vehicle(AGV):無人搬送車を採用した「根の生えない生産設備」などを導入し、バッテリーEVとエンジン車を混流生産。需要変動に対する柔軟性を確保し、資産効率を向上。
- 取引先との共創により、部品の種類数を最適化し、種類を生む場所を近場に寄せるサプライチェーンの構造変革を推進。
SKYACTIV-Z
- 欧州ユーロ77、米国LEV4、Tier4などの厳しいエミッション規制に適合する電動化時代の基軸となるエンジン。
- 究極の燃焼に近づく燃焼技術で高い燃費性能と走行性能を両立。
- マツダ独自のハイブリッドシステムと組み合わせて、2027年中に次期「MAZDA CX-5」から導入。
- SKYACTIV-Zの燃焼改善技術をラージ商品の直列6気筒エンジンに展開し、ロータリーエンジンのエミッション開発にも活用。
- 今後SKYACTIV-Z含むエンジンユニット数は半数以下、制御ソフトウエアは3分の2に集約。
廣瀬取締役専務執行役員からは「マツダ ものづくり革新2.0」について説明が行われた。注目は次世代エンジンユニットとなる「SKYACTIV-Z」。マツダは今後も内燃機関の開発にも力を入れていくという。
2027年の投入を予定している「SKYACTIV-Z」は、2.5L直列4気筒ガソリンエンジン。実用シーンの広い領域で高い熱効率を達成。パフォーマンスと燃費のバランスの良さに加え、パワースペックを下げることなく世界各地の厳しい排ガス規制に対応する。さらにアフォーダブル(お値ごろ)な価格帯を目指すというので、主力量販モデルへの搭載が期待できそうだ。
「SKYACTIV-Z」は、独自のハイブリッドシステムと組み合わされて、2027年中に次期CX-5から導入される予定。
バッテリーEV
- 自社開発のEV専用プラットフォームは、進化し続ける電池技術の動向を踏まえ、さまざまなタイプの電池を搭載可能で、車型の派生も生み出せる高い柔軟性を確保。
- バッテリーEVにおいても、走らせて楽しい、マツダらしい人馬一体の走りを実現。
- 2027年導入予定の自社開発バッテリーEVはグローバルに展開すべく国内で生産予定。
2027年導入予定の自社開発バッテリーEVは、グローバルに展開すべく国内で生産予定という。
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