
2024年秋のビッグマイナー時に最新電動制御をプラスされたことで、走りの力強さや上質感がさらに向上した三菱アウトランダー。今回の雪道ドライブは、進化した最新モデルの実力を図るにはもってこいの舞台だったのです。
●文:竹岡圭(月刊自家用車編集部) ●写真:奥隅圭之/三菱自動車
自分の意思でエネルギーマネジメントができる、世界レベルでも稀有なクルマ
最新アウトランダーの走り味を語り始める前に、まずアウトランダーにしかできないことをおさらいしておきましょう。
まず、急速充電器が使えるPHEVのSUVであること。PHEVだと急速充電に対応しているモデルはまだ少ないので、これだけでも十分魅力的ですが、さらに大容量の電気も取り出せて、V2HやV2Lにも対応しています。輸入車だと急速充電器に対応したEVでもV2Hに対応していないモデルもたくさんあるので、PHEVでこの機能があるのは大きな武器といえます。
さらに、チャージモードを備えていることも見逃せません。セーブモードという“いまある充電量をこれ以上減らさないように走るモード”がついているモデルは意外とありますが、強制的にエンジンをかけて充電するチャージモードを備えるモデルはかなり少ないのが実情です。
これができるメリットとしては、一定のエンジン回転数で走れば、燃費への影響が少ない高速道路では“発電しながら走り”、ストップ&ゴーが多い一般道では“モーターで走る”という具合に、自分の意思でエネルギーマネジメントをしながら走行することができちゃうわけです。
さらにアウトランダーは、走行中にパドルシフトを使って、回生力を簡単に6段階で変えられるのですが、ここまで多段数を走行中に変えられるものは、他では見たことがありません。当然、この機能もエネルギーマネジメントに役立ちますから、自分でドライブを組み立てられる面白味があります。もちろん言うまでもなく、そういうのが面倒だというならばオールお任せもできますのでご安心を。
そして、もうひとつ。チャージモードがあるということは、クルマを止めたままで発電ができるということになるので、アウトドアシーンや有事の際に、発電機としても役立ってくれます。ガソリン満タンなら家庭用の最低限の電源12日分が賄えるとのこと。12日間もの余裕があれば、万が一の場合でも乗り切れるはず。頼もしいかぎりです。ほかにもまだまだ語れることはあるのですが、行数が尽きてしまうので、このあたりで走りの話に進みましょう。
2024年のマイナーチェンジにより、駆動用バッテリーの容量を従来の20kwhから22.7kwhへ増大し、電池単体出力では60%も向上したことで、EVモードでの航続距離は83kmから102km(Mは87km→106km)に向上。電動領域が拡大したことで、より緻密な駆動制御が可能になっている。
電動PHEVでも、伝統4駆の底力を実感
アウトランダーは、7つのドライブモードから自由に走り味を選択できます。三菱と言えば4WDですが、パリダカのような世界一の冒険ラリーと、WRCのような過酷なスピードラリーの両方で培ってきた、しかもトップレベルで勝負してきた豊富な経験値と、そこから得たノウハウを詰め込んだ4WD技術を持っています。これもまた、唯一無二と言ってもいいものです。
今回は雪や氷やシャーベットといったウインター路面でその優れた運動性能を試すことができました。そういったμの低いシビアな場面でも、4輪の摩擦力に合わせてタイヤの能力をバランス良く、最大限に発揮させるS-AWCはさすが! 感心させられる場面ばかりでした。
動力性能が強化されたことも注目したいところ。システム総出力は約20%向上し、社内計測による0-100km/h加速は、従来モデルの10.2秒から8秒以下へと短縮。それでいて、市街地や渋滞でのノロノロ運転でも、加減速でギクシャクせず、一定速を保ちやすいよう、モーターの制御を熟成させているという。
雪道で怖いブレーキ操作とサヨナラできる「スノーモード」
路面に合わせて、ノーマル/グラベル/スノー、そしてオマケでマッドの4つのモードでドライブをしてみたのですが、基本的にノーマルでも十分走れてしまいます。ですが、感動的なのはやはりスノーモード。スノーモードにセットして、いわゆるワンペダルモードのイノベーティブペダルオンにすれば、日常生活で雪に慣れていない私でも、もはや怖いものなし。
冬道に不慣れなドライバーが、雪道やアイスバーンでいちばん怖いシーンは、ブレーキを踏むことだったりするのですが、アクセルペダルを緩めるだけで余裕のある回生ブレーキをコントロールしつつ、しっかり減速できるので、ブレーキペダルに足を乗せることなく、アクセルペダルのコントロールだけで特設コースを回れてしまいます。これは2024年秋のマイナーチェンジで、力強さと回生力がバージョンアップし、よりきめ細かく操れる度が増したことも貢献しているのだと思います。
雪道などの滑りやすい路面でも安心安全に走れる「スノーモード」は、雪が多い地域のユーザーにとってはありがたい機能のひとつ。最新モデルは駆動制御がより緻密になったことで、従来車以上に安心して走れる4WDに進化している。
滑る前に自然に介入してくるS-AWC
ちなみにS-AWCのさまざまな制御は、スノーモードだと早期から薄めに自然に制御が入っている感覚です。常に立ち上がり、半歩踏み出しそうなスタンバイ状態で待っていて、必要になるかならないかのところから、ドライバーに気づかせないようにスーッとサポートに入ってくるような、知らず知らずのうちに助けてもらっていると言えばいいでしょうか。
液体であるガソリンを気体に混ぜて、火をつけて圧縮して爆発させて、その力をトランスミッションに送って…という内燃機関に比べると、瞬時に最大トルクを立ち上げることができるモーターは、制御への反応も5倍以上早いと言われますが、その素早さを上手に使うことで、このような痒い所に手が届くようなフォローができるのだと思います。
スノーモードのような安全重視の走りもできますが、たとえばグラベルモードを選択すれば、通常走行では踏み出し時のアクセルコントロールに繊細さが求められたりはしますが、前へ前へと進ませる駆動力が強まり、アグレッシブに走らせることも可能ですし、マッドモードでは、ぬかるんでいる泥濘地を脱出することが目的になるため、曲がりにくくなってしまったりもします。
走りの爽快感を求める向きには「グラベルモード」も試してみてほしい。電動主体の力強い走りを強く実感することができる。
でもそうやって状況に合わせて、こういう走りが演出したいというドライバーの意思を見事に反映させつつ「あくまでもドライバーが主体。でも万が一の時にはあきらめずに最後まで助ける」という性格の制御は、クルマは人間が操るものと考えているユーザーにとっては、打ってつけの機能だと思います。
どんな性格や成果をもたらす制御を選んだとしても、ツインモーターを生かして必要な時に細かくサッと介入に入ってくれるS-AWCの技術は、アウトランダーのような電動車の方が、より際立つのは間違いないでしょう。有事の際からアグレッシブに楽しみたい場面まで、さまざまなシーンでフレキシブルに活躍してくれるクルマであることを、改めて実感できたのでした。
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