
●文:山本シンヤ ●写真:本田技研工業
- 1 「ホンダは究極の“伝え下手”」凄いハイブリッドを作っていたぞ!
- 2 【次世代小型用e:HEV】「Honda S+ Shift」や「電動AWD」など、新機軸が盛りだくさん
- 3 【次世代小型用e:HEV】エンジンが1.8Lくらいになったくらいの力強さを実感
- 4 【次世代小型用e:HEV】絶妙な後輪の蹴り出し感でコントロール性も向上
- 5 【次期プレリュード】現行e:HEVの最終進化系であると同時に、次世代e:HEVに繋がる“リリーフ”的な役割も担う
- 6 【次期プレリュード】フロントのノーズの入りの良さは、前輪駆動とは思えないレベル
- 7 【次期プレリュード】「性能全振り」ではない絶妙なセットアップで、走りに安心感もプラス
「ホンダは究極の“伝え下手”」凄いハイブリッドを作っていたぞ!
ホンダは4輪事業を始めて60年以上が経つが、その中でHEV(ハイブリッド車)は約4割となる25年の歴史を持つ。1999年に登場した初代インサイト以降、様々なハイブリッドシステムの研究・開発を進めてきたが、その最適解となるのが「e:HEV」である。
このシステムは2012年に発表したスポーツハイブリッドシリーズの中型車用「i-MMD」の進化版だが、組み合わせるエンジンやモーター次第で、コンパクトモデルからミドルクラスまで対応できる多様性を備える。現在は小型用と中型用の2タイプを用意し、おのおの基幹モデルに展開している。
とはいうものの、ホンダは「2040年に世界での販売の全てをBEV(電気自動車)とFCV(燃料電池車)とする」と発表済みで、それを踏まえると、「HEVに一生懸命と言っても、既存技術の熟成で凌ぐのだろう」と勘ぐっていた。しかし、その裏で黙々と基幹となるエンジン、ドライブユニット、制御系を全て刷新した「次世代e:HEV」を開発していたのだ。
このあたりは昨今のBEV失速報道に対して慌ててHEV対応を行なったわけではなく、当初からの「シナリオ通り」に進められていたという。そういう意味では、ホンダは究極の“伝え下手”と言わざるを得えない(笑)。
これらの記事はすでに様々なメディアを通じて発信済みだが、ホンダから「雪道で乗りませんか?」とお誘いが来た。雪道では舗装路以上にクルマの素性が暴露されますが、それでも乗せると言う事は、開発陣も相当に自信があるのだろう。今回は雪のホンダ鷹栖テストコースで次世代小型用e:HEV(AWD)の試作車(現行ヴェゼルに搭載)と、まもなく正式発売と言われる次期プレリュード(Honda S+Shift装着)に試乗することができたのだ。
すでに両モデルとも、サーキット試乗を体感しているが、今回はシビアな路面状況になる雪上で実力ぶりをチェックした。
【次世代小型用e:HEV】「Honda S+ Shift」や「電動AWD」など、新機軸が盛りだくさん
その前にメカニズムをおさらいしたい。
まずは次世代小型用e:HEVだが、エンジンは直列4気筒直噴で排気量は1.5L。今後のグローバル環境規制に対応できるスペックで、どちらも「アトキンソンサイクル」「高速燃焼」「全領域での理論空燃比の実現」「燃費の目玉を40%以上拡大」などが盛り込まれる。
ドライブユニットは同軸構造を採用し、モーターはコンパクトで“高効率”をテーマに開発。バッテリーはエネルギー密度をアップさせた小型高出力パックで、薄型のメリットを活かし、フロント床下配置(現行車のセンタータンク位置で燃料タンクはリア席下に移動)となる。
頭脳となるパワーコントロールユニットは「トランスミッション直載」「リヤ駆動インバーター内蔵」「高密度化」が行なわれ、高効率かつコンパクトに設計。更にリニアシフトコントロール制御の進化版となる「Honda S+ Shift」も採用される。
4WDシステムも大きく進化しており、現行モデルのメカニカル式からリヤモーターを用いた電動AWDに変更。リヤモーターの出力は約50kW(次世代BEV用を水平展開)。現行4WD車と同様の悪路走破性を実現するそうだ。
こちらの開発車両はボディこそ現行ヴェゼルになるが、パワートレーンは次世代e:HEVを搭載。
【次世代小型用e:HEV】エンジンが1.8Lくらいになったくらいの力強さを実感
実際走らせるとどうか? 現行e:HEVは慎重なアクセルコントロールでもすぐにエンジン始動してガッカリするが、次世代e:HEVはかなり粘る印象。エンジンが始動しても静と動のギャップは今までよりも抑えられている。常用域ではエンジン回転数をあまり上げることなく加速する。つまり、電動車感は高い。
アクセル開度を上げていくと、現行e:HEVと比べるとエンジンが1.8Lくらいになったくらいの力強さを実感すると共に、音質が濁音多めから粒が揃った印象(エンジンの剛性アップが効いている)になる。加えてより巧みになったエネルギーマネージネントの進化(エンジンの高効率領域拡大でリニアシフトコントロールの幅が広がっている)もあって、逆に電動車らしからぬフィーリングを実感できる。
次世代小型e:HEVは、従来型と同様に1.5Lエンジンベースとなるが、リヤに小型モーターを配する電動AWDということも見どころのひとつ。
ドライブモードを「スポーツ」にすると、常時エンジン始動状態の上にダイレクト感と切れ味あるシフト制御(減速時はダウンシフトも)が加わるイメージ。エンジンと駆動に機械的な繋がりはないのに、直結感と小気味よさを感じることができる。これは先代フィットなどに搭載されていた、DCT内蔵1モーターの「スポーツハイブリッドi-DCD」に近いフィーリングにも思える。
【次世代小型用e:HEV】絶妙な後輪の蹴り出し感でコントロール性も向上
ちなみにこの試験車は、現行ヴェゼルに次世代小型e:HEVを搭載しただけで、走りに関する適合は全く行なわれていない。だがバッテリー位置の変更と電動4WDの効果が走りにも大きく効いているようで、路面抵抗が低い雪道でも、少ない舵角でロールを抑えながらスッーと気持ちよく旋回していく。
巧みになったエネルギーマネージネントの進化もあって、クルマを操る感が高まっていることも特徴。
それもステアリングだけでなく駆動で曲げる事ができる自在性の高さと、後輪の蹴りだし感があり、機械的には直結していないのにもかかわらず、現行のメカ4WDより4輪がカチッと拘束されているかのような安心感がある。どことなくレジェンドに採用されていた「スポーツハイブリッドSH-AWD」に近いと感じたほどだ。
そういう意味では次世代e:HEVは、かつてラインアップされていた3つのスポーツハイブリッドシリーズが持つ各々の強みを、ある意味で全て備えたシステムと言ってもいい。この次世代e:HEVはフルモデルチェンジのタイミングなどで順次投入予定との事だが、個人的には「今すぐ積んで売ってほしい!」と言いたくなる商品性の高さだった。
【次期プレリュード】現行e:HEVの最終進化系であると同時に、次世代e:HEVに繋がる“リリーフ”的な役割も担う
続いて、次期プレリュードに試乗する。こちらの基本構成をざっくりと説明すると、パワートレーンはシビック/ZR-Vなどに搭載される現行のe:HEV(2.0L直噴エンジン+2モーター)に、「Honda S+ Shift」を組み合わせた仕様だ。改めてHonda S+ Shiftを説明すると、e:HEVの特性を活かしながら、ドライバーとクルマの一体感を際立たせる「操る喜び」を追求した新機構で、エンジンとモーター制御による有段変速フィール(アップ/ダウン共に)や、アクティブサウンドコントロールとメーターの連動(視覚/聴覚に訴える)などを行なう。
シャシー周りはシビック・タイプR用をベースに最適化されたモノで、サスペンションはフロント:デュアルアクシス・ストラット、リヤ:マルチリンク、ダンパーは電子制御連続可変ダンパー(ZF製)、タイヤは235/40R19(今回は雪上試乗なのでスタッドレス)などが奢られていた。要するに次期プレリュードは、現行e:HEVの最終進化系であると同時に、次世代e:HEVに繋がる“リリーフ”的な役割も担うというわけだ。
【次期プレリュード】フロントのノーズの入りの良さは、前輪駆動とは思えないレベル
今回はHonda S+ ShiftのON/OFFを試しながら走らせたが、そこで感じたのは「音」の重要性だった。舗装路ではあまり気にしていなかったが、グリップが低い低μ路だと加減速Gの大きさに加えて、回転上昇・下降のスピードも加減速を感じる要素だったんだ……と再確認。コーナリング時も同様の印象で、グリップを探りながらの走行時は音があったほうがアクセルコントロールが楽で、明らかにTCS/VSAのお世話になる機会が少なかった。つまり、Honda S+ Shiftは、本来は気持ちよさ、心地よさなど官能性を高めるデバイスだが、雪道では安心・安全をサポートするデバイスでもあると感じた次第だ。
フットワークは雪道にも関わらず前輪駆動(FF)とは思えないフロントのノーズの入りの良さに驚いた。例えるなら、フロントに5代目のタイプSに採用されたATTS(アクティブ・トルク・トランスファ・システム:左右輪の駆動配分)を素の状態で実現させた感じ。意図的にクルマを振り回しても、リヤのスタビリティの高さは下手なSUVの4WDモデル以上。このドッシリ感は、実際よりもサイズが大きく・重いクルマのように感じたほどだ。ホンダ車で例えるならレジェンドクーペとも?
プレリュードはFF駆動だが、そうと感じさせない安定感がある走りが印象的。目玉装備のひとつ「Honda S+ Shift」もドライバーをやる気にさせてくれる粋な機能であることを確認できた。
【次期プレリュード】「性能全振り」ではない絶妙なセットアップで、走りに安心感もプラス
加えて、ホンダのスポーツ系モデルでは珍しく「性能全振り」ではない絶妙な塩梅のセットアップも効いている。シビック・タイプRは「戦うクルマ」として短時間で旋回を完結させる無駄を削いだハンドリングだが、プレリュードでは、そこに時間(と言ってもごく僅か)を持たせることで、機敏すぎず、でも鈍感ではない絶妙なさじ加減に思える。筆者は「爽快」を超えて「清々しさ」すら感じたが、雪道ではそれに加えて「安心」と「信頼」がプラスされていた。まさに四駆のようなFFか……。
これに次世代e:HEVに採用される電動4WDがプラスされれば、最強の「全天候型ホンダGT」ができそうだが、現行プラットフォームは電動4WDの対応できないようで、ここは残念に思った。
総じて言うと、これまでBEVチームの陰に隠れていたHEVチームだったが、その鬱憤を晴らすかのような強い意志を持つ技術であり、実際にそのようなシステムに仕上がっていた。
そういう意味では久しぶりにホンダらしさを感じたが、「Honda S+ Shift」はともかく「次世代e:HEV」と言うセンスの欠片もないネーミングはどうしたものか。個人的には「eVTEC(エレクトリック・ヴァリアブル・エネルギーマネジメント・コントロールハイブリッド)」にして欲しいが、せめて「現行のシステムとは次元が違うよ」と言う事が一目で解るサブネーム、もしくはロゴデザインの採用をしてはどうだろうか。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(ホンダ)
納期と条件が揃った奇跡のタイミング ともにホンダのコンパクトSUVだが、ヴェゼルはハイブリッド車が中心、WR-Vはガソリン車のFFモデルのみ。価格もWR−Vは200万〜250万円、ヴェゼルは300〜3[…]
多様なライセンス商品を、一つのプラットフォームに集約 これまでホンダが認定するライセンス商品は、おのおののライセンシー企業が独自のECサイトなどを通じて販売するケースが大半を占めていたこともあって、顧[…]
車内のUSBポート不足を解消! 純正のような仕上がりで違和感ゼロ! 普段の生活において、我々は多くの電子デバイスに囲まれて行きている。スマートフォンやノートPC、タブレットやゲーム、最近はアイコスなど[…]
プレリュード譲りの新制御「S+ Shift」搭載 シビック e:HEV RSは、昨年発表されたプレリュードに続き新制御技術「Honda S+ Shift(エスプラスシフト)」を採用。 高効率なハイブリ[…]
乗員全員がリラックスできるラウンドデザインを基調 1999年に初代が登場したインサイトは、4代目となる新型ではハイブリッドの先駆者から装いを変え、新たに電気自動車のクロスオーバーSUV、e-SUVとし[…]
最新の関連記事(SUV)
ホイールベース150mm延長が生んだ余裕の骨格 テスラの主力モデルとなるのが、毎年年間120万台ほどを売る、ミッドサイズSUVの「モデルY」だ。 その「モデルY」に新グレードが追加された。それが3列シ[…]
往年の名モデル「テラノ」が復活 日産自動車は、中国を日本・米国と並ぶ最重要のリード市場と位置づけ、新エネルギー車(NEV)への転換を急いでいる。 北京モーターショー2026では「アーバンSUV PHE[…]
グリル周りがワイルドに!加工不要の専用パーツが登場 今回紹介するアイテムは、Fun Standard株式会社が手がける自動車アクセサリブランド、クラフトワークスの『バグガード』。ランクル250専用のカ[…]
長年、ジープをライセンス生産してきた三菱だからこそ生まれた、オリジナルの4WD車 まったく新しいコンセプトの新型車が世に出るまでには、多くの関門がある。ときにはどれほど出来栄えがよくても、経営陣の理解[…]
米国産「ハイランダー」が新制度で日本で正規販売へ かつて日本では「クルーガー」の名で親しまれたハイランダーは、2001年の初代発売以来、米国で累計360万台以上の販売実績を誇る人気モデル。まずは国内に[…]
人気記事ランキング(全体)
大手カー用品店オートバックスの専売タイヤ。驚きのロープライスを実現 本格的な春を迎え、ゴールデンウィークに突入。クルマを利用して出かける計画を立てている人も多いだろう。そうなると気になるのが愛車の足元[…]
「全く見えない…」サイドミラーの水滴は、安全運転の大敵 雨の日の運転は、晴天時に比べて視界が悪くなったり、路面状況が悪くなったりと、何かと気を使うことが多い。また、雨天時の夜ともなると、光が乱反射して[…]
初代レパードは、日本国内向けの高級GTとして誕生 1986年に発売された「F31系」のレパードは、「レパード」としては2代目のモデルになります。 初代の「レパード」は、北米市場向けモデルの「マキシマ」[…]
現行CX-5とCX-8の間を射抜く絶妙なサイズパッケージ まもなく登場する新型CX-5は、マツダ車らしい走りの質の高さや、スタイリッシュな外観を維持しながらも、居住性と実用性を劇的に向上させたパッケー[…]
RX87(1967年) 先に販売されたルーチェセダンのクーペモデルとして登場したが、実はそのほとんどが専用設計で別物のクルマだった 世界初の量産ロータリーエンジン車、コスモスポーツが発売された1967[…]
最新の投稿記事(全体)
大手カー用品店オートバックスの専売タイヤ。驚きのロープライスを実現 本格的な春を迎え、ゴールデンウィークに突入。クルマを利用して出かける計画を立てている人も多いだろう。そうなると気になるのが愛車の足元[…]
現行CX-5とCX-8の間を射抜く絶妙なサイズパッケージ まもなく登場する新型CX-5は、マツダ車らしい走りの質の高さや、スタイリッシュな外観を維持しながらも、居住性と実用性を劇的に向上させたパッケー[…]
ウィンカー点灯パターンを簡単に変更可能。流れるウインカーも、硬派な通常点滅も思いのまま。本体裏の接続を変えるだけの簡単設定で、愛車の表情を自由自在にコントロールできる。 内部造形にまでこだわったステル[…]
内燃機モデルもまだまだ進化する! 1972年、セリカ用に開発された1.6L DOHCエンジンを、ひと回り小型軽量なカローラクーペに搭載して誕生したTE27型レビン 。モータースポーツで勝つことを宿命づ[…]
ライトバンタイプとミニバスタイプという豊富なバリエーションが用意された 戦後、ルノー車のノックダウン生産で小型車造りを学んだ日野が、1960(昭和35)年に満を持して発売した自社開発の第一号車がコンマ[…]

























