
日本のモータリゼーションを牽引した一台であるスバル360は、まぎれもなく富士重工業が世に送り出した最初の量産4輪車である。ただしそれには志半ばで潰えた前史があった。しかもそれはほぼ完全なプロトタイプまでが制作されたまさに幻の一台、それこそが初めてスバルの名を冠するはずだったモデル、P-1である。
●文:月刊自家用車編集部
P-1(すばる1500)
試作車とは言いながら実際に登録されて公道を走った個体もあるモデルだけに細部まで完成度は高い。
【主要諸元】
●全長:4235mm ●全幅:1670mm ●全高:1520mm ●エンジン種類:直列4気筒OHV ●総排気量:1485cc ●最高出力&最大トルク:55PS/11.0kg-m
現在の社名の原点ともなった幻の名車
P-1の制作は1951年頃、中島飛行機を母体とする富士精密工業の直4エンジンを搭載した乗用車を、富士自動車工業をはじめとする複数の会社の合同で始まった。とはいっても、開発に携わる技術者はいずれも自動車制作経験のないゼロからのスタート。紆余曲折を経て、航空機譲りのフルモノコックボディに1500㏄エンジンのFRで6人乗りの4ドアセダンという骨格が固まり、計画が進められる中、なんとエンジン供給メーカーであった富士精密がプリンス自動車と合併してしまったのだ。
これにより搭載するはずだったエンジンが使えなくなった。にもかかわらず、計画はとん挫することなく、グループの大宮富士工業の主導で独自エンジンを新開発する方向に転換。そして、1955年、参加6社の合併で富士重工業が誕生する直前に、新開発エンジンを搭載した試作車も完成したのだった。
P-1はこうした入り組んだ開発の経緯から、二種類のエンジンを搭載した試作車が10台以上存在し、中にはモニターを兼ねてタクシー会社や自家用車として供用される車両もあったという。
富士重工業に開発が引き継がれたP-1は、この6車合併を象徴して「すばる」と命名され、自動車技術会による性能調査でも高い評価を得るなど、量産市販が期待されたが、生産設備や販売網作りに莫大な資金を要することから、最終的に経営判断で市販はおろか計画そのものが見送られることになった。
ただ、フルモノコックボディをはじめとする当時の先進技術へのトライや開発プロセスで培われたその技術とスタッフの自信は、後にスバル360という形で結実することとなる。P-1=スバル1500が幻の名車と言われる所以である。
インパネ周りは、すっきりとしたデザインとなり、大型車並みの大径ステアリングを採用した。
中央に配されたスピードメーターは120㎞/hまで刻まれる。
ボンネットは凝った構造のヒンジで開閉し、固定用のスタンドは別体の太いパイプを用いる。エンジンは、大宮富士工業が独自に開発したL4-1型4気筒OHVエンジンが搭載された。
トランク内に設置された予備タイヤのホイールにも同色のカラーリングが施された。
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