「R」が与えられたスパルタンモデルは、プリンス自動車の忘れ形見ともいえる一台。ライトウェイトスポーツの元祖としても有名│月刊自家用車WEB - 厳選クルマ情報

「R」が与えられたスパルタンモデルは、プリンス自動車の忘れ形見ともいえる一台。ライトウェイトスポーツの元祖としても有名

「R」が与えられたスパルタンモデルは、プリンス自動車の忘れ形見ともいえる一台。ライトウェイトスポーツの元祖としても有名

日産・チェリーは、日産に吸収合併された旧プリンス自動車の技術者が中心となって開発されたモデル。日産初の量産FF(前輪駆動車)で、エンジンは横置きに配置し、その下にトランスミッションを置くレイアウトを採用。丸みを帯びたセミファストバックのフォルムが特徴だった。後期に登場したクーペは、大胆なスタイリングでも評判を呼び、当時の若者から高い支持を得たモデルとしても有名だ。

●文:月刊自家用車編集部

チェリークーペX-1:初代チェリー(E10型)のスポーティグレードとして、1971年に登場。スポーティな走りを追求したグレードで、標準モデルよりもパワフルなエンジンと、それに合わせた足回りが特徴。1973年に追加された「X-1・R」は、このX-1をベースにさらなるチューンアップを施した、よりスパルタンなモデルとなる。

FRのサニーに対して、日産初のFF方式を採用

1970年代を前にして、ヨーロッパから前輪駆動のFF方式の波が押し寄せてくる。この流れを敏感にとらえ、市場に送り出されたのがチェリーだ。車名の由来は日本の国花である「桜」。小型車のサニーの下位クラスとして開発され、若年層や軽自動車からの乗り換えを主なターゲットと考えられていたが、すでに日産はコンパクトカークラスに、FR方式のサニー1200を持っていたため、商品性の違いを明快にするためにも、チェリーはFF方式を採用している。

1970年代のシビルカーを目指して開発され、設計コンセプトだけでなくデザインも大胆さが際立つ一台だが、やはり外せないのがFF方式の採用だ。エンジンを横置きし、その下にトランスミッションを配置する「イシゴニス式」と呼ばれる独創的なレイアウトを実現することで、広いキャビン空間が確保されている。

4ドアセダン1000GL(1970年)

初代サニーの2280㎜より50㎜ 以上長い2335㎜のホイールベース。トレッドも広く、リヤシートの居住性はサニーを大きく上回った。ロングホイールベースは乗り心地の向上にも寄与。

2ドアセダン1000GL(1970年)

4ドアよりも軽量でスポーティな立ち位置。フロントドアは後席の乗り降りのしやすさを考え、4ドアのそれに比べて大型化されている。ハッチバック風にも見えるが4ドア同様独立トランクだ。

キュートなエクステリアデザインでも人気

そのキャッチフレーズは「超えてるクルマ」だった。カプセルシェイプと呼ぶキュートなエクステリアデザインを採用し、サイドウインドウの大胆に切れ上がったアイライン・ウインドウも大きな注目を集めていた。

デビューした時は、2ドアと4ドアのセダン、バンを設定。エンジンは、サニーで好評を博した988㏄のA10型と1171㏄のA12型直列4気筒OHVが選ばれた。これを横置きレイアウトに変更し、その下にトランスミッションを吊っている。イメージリーダーは、A12型エンジンにSUツインキャブを装着したX-1で、このモデルにはフロアシフトの4速MTが組み合わされている。

A12型ツインキャブエンジンは80馬力のハイパワーを発揮。このクラスのレースモデルのベースエンジンとしても使われている。

A10型。988 ㏄ のシングルキャブ。本来FRのサニーに積まれたこのエンジンをチェリーは横置きに積んでいる。

遅れて登場したクーペX-1・Rは、硬派なライトウェイトスポーツ

サスペンションは、ストラットとセミトレーリングアームの4輪独立懸架。クセは強かったが、乗りこなせれば速かった。デビューから1年後の1971年9月に、プレーンバック・スタイルの個性的なファストバッククーペを投入する。そして1973年3月、真打ちのクーペX-1・Rがベールを脱ぐ。この時代の日産車で、オーバーフェンダーとRのエンブレムを付けていたのは、このX-1・RとGT-Rだけであった。

3ドアクーペGL(1971年)

デビューから約1年後に追加された3ドアクーペ。サーフィンラインのスカイラインと同じように、ボディサイドには力強いマッハラインが一閃。後席シートバックは前方に倒せ、広い荷室を実現した。

クーペ1200X-1・R( 1973年)

クーペX-1をベースに、1973年にラインナップされたスパルタンモデル。「R」の称号が示す通り、モータースポーツでの活躍を視野に入れて開発。リベット留めされたFRP製のオーバーフェンダーを纏って迫力あるスタイルも特徴のひとつ。ちなみに設定されたボディカラーは白のみだった。

主要諸元(クーペ1200X-1・R  1973年式)
●全長×全幅×全高:3690㎜ ×1550 ㎜ ×1310 ㎜●ホイールベース:2335 ㎜●トレッド(前/後):1270㎜ /1235㎜ ●車両重量:645㎏ ●乗車定員:5名●エンジン(A12型):直列4気筒OHVツインキャブ1171㏄ ●最高出力:80PS/6400rpm●最大トルク:9.8㎏-m/4400rpm●最高速度:160㎞ /h●最小回転半径:4.6m●トランスミッション:4MT●サスペンション(前/後):マクファーソンストラット独立/トレーリングアーム独立●ブレーキ(前/後):ディスク/ドラム●タイヤ:165/70HR13 ◎新車当時価格(東京地区):65.0万円

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