空飛ぶクルマが瀬戸内海を飛ぶ!累計300フライト・427機受注、日本発「SKYDRIVE」実用化へどこまで進んでる?│月刊自家用車WEB - 厳選クルマ情報

空飛ぶクルマが瀬戸内海を飛ぶ!累計300フライト・427機受注、日本発「SKYDRIVE」実用化へどこまで進んでる?

空飛ぶクルマが瀬戸内海を飛ぶ!累計300フライト・427機受注、日本発「SKYDRIVE」実用化へどこまで進んでる?

SkyDriveが開発する「SKYDRIVE(SkyDrive式SD-05型)」は、2026年7月13日、山口県山口市阿知須の山口きらら博記念公園内飛行試験場で、瀬戸内海の遊覧飛行を想定したデモフライトを実施し、最大時速86kmでの安定飛行を披露した。すでに累計300フライト以上を事故なく積み重ね、国内外では427機の受注を獲得している。2028年の商用化を目指す“日本発の空飛ぶクルマ”は、いまどのような段階まで進んでいるのだろうか。

●文:月刊自家用車編集部 ●写真/外部リンク:株式会社SkyDrive

瀬戸内海を舞台にデモフライト! 空から楽しむ新たな観光体験を検証

2026年7月13日、SkyDriveは山口きらら博記念公園内の飛行試験場で、「空飛ぶクルマ」の瀬戸内海遊覧を想定したデモフライトを実施した。

今回の飛行では、観光地での利用シーンを想定し、利用者が自動車でバーティポート(離着陸場)へ移動、そこから空飛ぶクルマへシームレスに乗り換えるという新しい移動体験の流れが検証された。SkyDrive代表取締役CEOの福澤知浩氏は、これを鉄道連携によるシームレスな移動の「道路版」と位置づけている。

実施された2回のフライトでは、パイロットは搭乗せず、自動制御とリモート操縦によって運航された。

・第1フライト(午前8時頃):飛行距離約2,000m(往復)、飛行時間6分20秒、最高速度時速86km、最高高度30m
・第2フライト(午前11時5分頃):飛行距離約1,900m(往復)、飛行時間5分42秒、最高速度時速85km、最高高度25m

視察には山口県知事の村岡嗣政氏、山口県議会副議長の河野亨氏、そして機体製造パートナーであるスズキ株式会社代表取締役社長の鈴木俊宏氏も参加し、観光分野における新たな移動手段としての可能性を確認した。

瀬戸内海の遊覧を想定したデモフライトの様子を、スズキ代表取締役社長、山口県知事が見守った。

「空飛ぶクルマ」は飛行実験から社会実装の検証段階へ

空飛ぶクルマというと、かつてはSF映画に登場する未来の乗り物というイメージが強かった。しかし現在、開発競争の焦点は「機体を浮かせることができるか」から、「安全に継続運航できるか」「社会の中でどう使うか」という実用化の検証段階へと移っている。

SkyDriveは2024年11月に「SKYDRIVE」の初飛行試験を開始し、約1年半で累計300フライトを事故なく達成した。

飛行試験は愛知県豊田市や山口市の試験場にとどまらない。2025年の大阪・関西万博、大阪港バーティポート、2026年2月の東京ビッグサイトなど、実際の社会環境に近い場所でも重ねられており、こうした外部環境での飛行は合計48回に達する。

定時運航を想定したオペレーションや運航判断に関するデータも着実に蓄積されているのだそうだ。2026年6月には、商用化を見据えた時速100kmでの安定した前進飛行にも成功したと発表しており、機体性能の面でも着実にステップアップを重ねている。

大阪港バーティポートでのデモフライトの様子。

東京デモフライトには、約300人が来場。

様々な場所での実証実験を実施。

商用化への課題は「飛ぶこと」から「安全に運航する仕組み」へ

一方で、空飛ぶクルマを実際の移動サービスとして普及させるには、まだ乗り越えるべき課題も残されている。

そのひとつが、航空機としての安全性を証明する「型式証明」の取得だ。

型式証明では、機体の設計や構造、システムなどが安全基準を満たしているか確認される。SkyDriveも2028年の商用化に向け、認証取得を重要な開発目標に掲げている。

また、機体そのものだけでなく、離着陸場所となるバーティポートの整備、飛行ルールや管制体制の構築、量産後の整備体制づくりなど、社会全体で受け入れる環境整備も必要になる。
空飛ぶクルマは、「飛ばせる機体を作る」段階から、「安全な交通インフラとして成立させる」段階へと進みつつあるのだ。

国内外から427機を受注! 企業が期待する新たな移動サービス

SkyDriveは機体開発だけでなく、商用化後の利用を見据えた事業基盤づくりも進めている。

現在、国内外から累計427機のオーダーを獲得しており、その内訳はプレオーダー354機、機体購入基本合意73機となる。

海外での受注は、ヘリコプター運航会社やチャーター機運航会社など、すでに航空運送事業のノウハウを持つ企業が中心だ。

一方、日本国内では、航空運送事業許可(AOC)を持たない鉄道会社などからのオーダーが多いことが特徴となっている。想定されているのは、鉄道そのものを置き換えることではなく、駅や交通拠点から観光地などを結ぶ「新たな二次交通」としての活用だ。

鉄道駅まで移動した利用者が、そこから空飛ぶクルマに乗り換えて観光地へ向かう――。自動車、鉄道、空の移動を組み合わせた新しい地域交通の姿が期待されている。

海外では、都市部の渋滞回避を目的としたエアタクシーのほか、地方での医療搬送や物流など、既存の航空サービスを補完する用途が検討されている。

フロリダ州マイアミビーチを飛行する「SKYDRIVE」のイメージ。

UAEアブダビの交通システムを統括する政府組織との調印式の様子。

運航サービスまで見据えた体制づくり

空飛ぶクルマは、自動車のように購入すれば誰でも自由に利用できる乗り物ではない。航空機として運航するには、操縦士、整備、運航管理、安全管理など専門的な体制が必須となる。

そこでSkyDriveは、機体を販売するだけでなく、運航会社との連携を進め、購入した企業が実際にサービスとして活用できる仕組みづくりにも取り組んでいる。

2026年7月には、HondaJetやBellヘリコプターのチャーター運航などを手掛けるJapan Biz Aviation(JBZ)と、国内商業運航に向けた業務提携の基本合意書を締結した。

SkyDriveの機体技術と、既存の航空運送事業者が持つ運航ノウハウを組み合わせることで、安全なサービス提供体制の構築を目指す狙いだ。

日本国内における「空飛ぶクルマ」の商業運航に向けた業務提携に関する基本合意書を締結。

海外展開も加速。インドネシアで需要を確認

SkyDriveの取り組みは国内にとどまらない。

2026年6月には、インドネシア最大級のヘリコプター運航会社Whitesky Aviationと共同で、ジャカルタ近郊のヘリポートにて政府関係者や鉱山・農園関係者向けのイベントを開催し、海外で初めてフルスケールモックアップを展示した。

当初はジャカルタ首都圏の慢性的な渋滞解消を目的とした「都市型エアタクシー」構想からスタートしたが、議論は次第に、道路インフラが未整備な鉱山地帯での作業員シャトル輸送や緊急搬送、広大なパーム油プランテーションでの監視・山林火災の早期発見といった、インドネシア特有の地方課題の解決へと広がっている。

現地では、将来的に既存のヘリコプター利用を補完・代替することで、オペレーションコスト削減や排出ガス・騒音問題の緩和が期待されているという。

2026年6月242026年6月24日、インドネシア チェンカレン ヘリポートで行われた展示会には、インドネシア政府関係者、大手鉱山開発企業、 大手農業・プランテーション関係者、航空業界関係者が集まった。

会場の様子。

2028年の商用化へ、「空の移動」は身近になるのか

今回の瀬戸内海遊覧のような観光利用は、空飛ぶクルマの代表的な用途のひとつにすぎない。

SkyDriveが見据える活用範囲はより幅広い。例えば、都市部では渋滞を回避するエアタクシー。地方では災害時の物資輸送、医療搬送、離島や山間部での移動、観光地での遊覧飛行など、既存の交通手段では解決が難しい課題への活用が期待されている。

SkyDriveは2028年ごろの商用化を目標に、型式証明取得や量産化に向けた開発を進めており、具体的なサービス開始地域としては、大阪府や大分県での運航開始が想定されている。

クルマが道路を走る時代から、空を移動手段として活用する時代へ――。

もちろん、安全基準の確立や運航ルール、バーティポートの整備など、実用化にはまだ多くの課題が残されている。

しかし、累計300回以上の飛行実績、427機の受注、JBZとの提携、インドネシアでの需要確認、そして今回の瀬戸内海での観光利用を想定したデモフライトまで、空飛ぶクルマは確実に「夢の乗り物」から「実用化を目指すモビリティ」へと変化しつつある。

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