いまはともかく、将来は強敵になれる理由でいっぱい。ハイエース一強時代に一石を投じるキャンピングカー「キアのEVバン」。どこが凄いのか?│月刊自家用車WEB - 厳選クルマ情報

いまはともかく、将来は強敵になれる理由でいっぱい。ハイエース一強時代に一石を投じるキャンピングカー「キアのEVバン」。どこが凄いのか?

いまはともかく、将来は強敵になれる理由でいっぱい。ハイエース一強時代に一石を投じるキャンピングカー「キアのEVバン」。どこが凄いのか?
横浜キャンピングカーショーで披露された、キアの新型EV「PV5」がベースの「Alva P47UD」。BEV専用骨格による段差のない超低床フラットフロアと、71.2kWhの大容量バッテリーを活かし、サブバッテリーなしで一晩中エアコンや家電が使い倒せる未来のEVバンコンだ。(

韓国・キア(KIA)が日本市場へ本格導入を果たした次世代モビリティ「PBV(Platform Beyond Vehicle)」の第一弾モデル「PV5」。
一般的にはスタイリッシュな配送用EVバンや送迎用EVとして受け止められているが、実はメーカー側として密かに検討していたもうひとつの「本命シナリオ」がある。それこそが、キャンピングカーや車中泊車両への本格展開だ。
国内ビルダーへのベース車両の供給体制が急ピッチで整ったことで、2026年9月に開催された「横浜キャンピングカーショー」では、早くもPV5をベースにしたキャンピングカーを見つけることができた。実際にショーで実車を目の当たりにすると、予想していた以上にキャンピングカーとの相性が良いことが見えてくる。今回はそう感じた理由を解き明かしてみたい。

●文:月刊自家用車編集部

メーカーが「キャンパー展開」を密かに狙っていた理由

キアが提唱する「PBV」とは、韓国の現代(ヒョンデ)自動車グループと起亜(KIA)が提唱している、「単なる移動手段(クルマ)を超えた、用途に合わせて変幻自在に最適化できる次世代モビリティ構想」のこと。

バンモデルのPV5は、開発段階から商用配送だけでなく、レジャー&バンライフも見据えて設計されていて、従来の商用バンとは骨格からして根本的に異なる。シート下にエンジンを積むキャブオーバー構造の国産バンに対し、PV5は短いノーズを持つセミキャブ構造を採用する。そして最大の強みは、内燃機関(エンジン)の制約を一切考慮せずゼロから作り上げられた専用設計にある点だ。

エンジンや巨大なトランスミッション、さらには床下を通る補機類や燃料タンクといった部品が存在しないため、駆動用モーターなどはフロントのノーズ内にコンパクトに収まる。キャビン内への不要な張り出しや凹凸を完全に排除できたからこそ、大容量バッテリーを床下に敷き詰めたフラットな超低床フロアを実現できた。「BEV専用骨格」だからこそ生まれた段差のない自由すぎる空間は、キャンピングカーのビルダーにとって絶好の素体となったわけだ。

国内では輸入元の双日(子会社のKia PBV Japan)を通じた供給ルートが確立されたことで、大手のキャンピングカービルダーも即座に反応。展示されていた「Alva P47UD」の前評判も浸透していたようで、来場した愛好家からも注目を集めていた格好だ。

室内は、スクエアでフラットなEV骨格を活かしたリビング空間が広がる。センターテーブルを囲むU字型のソファーベッドは大人数が快適に寛げるゆとりを誇り、夜間は大人2名が手足を伸ばしてゆったり眠れるフラットベッドに早変わりする。

EV専用骨格がもたらす「圧倒的に広いキャビン」と高い自由度

大手ビルダーのLACモービルが展開する「Alva P47UD」は、未来を走るキャンピングカーを謳う。そのベースとなる「PV5 パッセンジャー」のボディサイズは全長4695mm×全幅1895mm×全高1925mm。全長はハイエースの標準ロングと同等でありながら、全幅を広くとることで、室内にはワゴンモデルならではの圧倒的なゆとりが生まれている。

実車に乗り込んでみてまず驚かされるのが、その優れた空間効率だ。車体寸法の限界まで四隅にタイヤを配置した2995mmという超ロングホイールベースは、低床フラットフロアと相まって足元空間や頭上に驚異的な余裕を生み出している。

さらに乗降性の高さも秀逸で、後席のスライドドアからは低床フロアのおかげで小さな子供から高齢者までスムーズに乗り降りできる設計となっている。

エンジン出っ張りやドライブシャフトのラインが存在しないスクエアでフラットな空間は、後付けの家具や大型ベッドを展開するキャンピングカー架装において、余計な切り欠き加工が不要というメリットもあるようだ。

5名乗車という日常使いの利便性を完璧に維持しながら、リヤには大人2名が手足を伸ばして寛げるフラットベッドや専用キャビネットなどがスマートに配置されているさまは圧迫感がなく、まさに車中泊の素体として理想的であることが実車からもはっきりと確認できる。

BEV専用の超低床フラットフロアだからこそ実現できた、段差や無駄のないベッド展開。かさばる家具や架装があっても、天井高にゆとりがあるため窮屈さを感じない。一晩中エアコンが使える大電力環境と相まって、まさに「動くマイルーム」そのものだ。

中央にそびえる大型タッチディスプレイやデジタルメーターがEVらしい近未来感を演出する先進的なインパネ。ステアリングパドルでの回生ブレーキ調整をはじめ、こだわった機能装備も装着される。

「重いのに素直」な走りの良さも強み

単なる「動く部屋」としてだけでなく、走行性能に期待できることも見逃せない。

パワーユニットはフロント側に最高出力120kW(163PS)、最大トルク250Nmを発揮するパワフルなモーターを搭載しており、シームレスで力強い加速感を提供する。上位のプラス ロングレンジ仕様は71.2kWhの大容量バッテリーを備えることで、WLTCモードの一充電走行距離が521kmというアシの長さも誇っている。

さらにフロントサスペンションにアルミダイキャストパーツを奢ったダブルウィッシュボーン式を採用するなど、足回りも凝った造り。ベース車単体でも車両重量は2415kgとベビー級だが、床下にバッテリーを敷き詰めた低重心骨格と出来の良いサスペンションのおかげで、コーナリング時のロールが少ない実に素直で重厚なフットワークを見せる。

出力特性もEV特有の唐突なトルク感を抑えたマイルドな味付けに整えられており、長距離のグランドツーリングでもドライバーを疲れさせない質の高さを備えているのが特徴だ。

このあたりの走りの素性の良さは、先日開催されたメディア向け試乗会でも確認済み。もちろんキャンピングカーとしての架装によって車両重量は増すのだが、低回転から一気に最大トルクを立ち上げられるモーター駆動と低重心骨格の組み合わせなら、重量増加による走りへの悪影響は最小限に抑えられるはずだ。人と荷物を満載したタフな場面でも、余裕がある走りを見せてくれるだろう。

低回転から力強く素直な出力特性で、電動感を誇張しない扱いやすい特性も魅力。床下にバッテリーを配置する低重心設計もあってに2トン超の車両重量を感じさせない素直なハンドリングも好印象を覚える。内燃機モデルとは違った魅力があるのは間違いない。

価格は高めだが「電気製品を使い倒す」キャンパーとの相性は抜群

気になる車両価格は、ベース車の乗用モデル「PV5 パッセンジャー ロングレンジ」は769万円で、今回展示されたLACモービルのコンプリートキャンパー仕様「Alva P47UD」は898万円。一般的なガソリン車のバンコンと比較すると「少々高め」な設定に思えるが、車中泊やキャンプで電気製品を思いっきり使い倒したいユーザーにとっては納得できるケースもあるだろう。

このクルマに搭載されている71.2kWhのメインバッテリーは、後付けの車載用リチウムイオン電池(数百Ahクラス)とは桁違いの性能を持っていて、真夏の夜でもエンジン音や排気ガスを一切気にせず無音の中でエアコンを一晩中稼働させることも容易。当然、快適な室温を保ちながら熟睡することもできる。

さらに100V/最大1500Wの電源が装備されているため、車内で電子レンジ、IHクッキングヒーター、ドライヤー、電気ケトルといった高電力が気になる家電製品も気兼ねなく使いこなせる。車外へ電力を供給できるV2L(外部給電)機能は、キャンプ場でのライティングや調理はもちろんのこと、災害時の非常用電源としても大活躍してくれるだろう。

会場で話を聞いたスタッフからも、サブバッテリーの追加工事や複雑な走行充電システムの組み込み、アイドリングや排ガス問題に頭を悩ませる必要はないことは大きなメリットと教えてくれた。最初から贅沢な電力環境が整っているPV5は、ライトにキャンプ&レジャーを楽しみたいファミリーにとっては理想の一台にもなりうるだろう。

最大1500W出力に対応する車内AC100V電源ソケット。71.2kWhの大容量バッテリーから直接電力が供給されるため、車内で電子レンジやドライヤーなどの高消費電力家電を気兼ねなく使用可能。車中泊やワークスペースの拠点としても優れた一面を持つ。

「Alva P47UD」のベッド下収納は、実用性の高いスクエアな設計。LEDの間接照明が照らす低床フロアには、スライド式のポータブル冷蔵庫やキャンプギアがすっぽり収まる。右側には車内外からアクセスしやすいAC100V&USB電源も完備されている。

現状ではキャンピングカーの未来を示す「試金石」だが…

国内のキャンピングカー市場、特にバンコンの中では、圧倒的な実績とリセールバリューを誇るハイエースの存在感は絶大だ。それだけに、この新しいEVバンコンが日本の消費者たちにすぐに受け入れられるかといえば、正直なところ未知数であり微妙な部分もある。

しかし、選択肢の広がりという視点では、この手の本格派EVモデルがキャンピングカー市場へ投入された意味は大きい。今後、急速充電ネットワークなどのインフラ整備がさらに進化拡充していけば、車中泊やキャンピングカーのベース車には、大容量バッテリーを備えたEVが一番快適で理にかなっている、となる日が来るかもしれない。

そんな未来に向けた最初の試金石として見ても、今回披露された「Alva P47UD」は強いインパクトを放っていた。キャンピングカーの新たな可能性を確認できる一台として、今後の動向が楽しみだ。

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