![[はたらくくるま] 熟練の運転ワザで巨大な旅客機の向きも自由自在〈トーイングトラクター〉](https://jikayosha.jp/main/wp-content/uploads/2025/04/015-1.jpg)
空港を訪れた時、窓の外の旅客機を眺めることがあるだろう。その時は、ぜひとも旅客機だけではなく、そのまわりで動き回る“はたらくくるま”にも目を向けてほしい。空港には、街中で見かけないような独特な“はたらくクルマ”が数多く存在しているからだ。本企画では、羽田空港にて日本航空(以下:JAL)の“はたらくクルマ”を取材した。
●まとめ:オートメカニック編集部 ●撮影/文:鈴木ケンイチ
トーイング・トラクター KOMATSU WT-250E:トーバーを使って旅客機を動かす
旅客機を移動するのに“トーバー”を使うのが、トーイングトラクターだ。JALのグランドハンドリング業務を担うJALグランドサービス(JGS)では、羽田空港に小松製作所の車種を中心に約20台を運用しているという。
【KOMATSU WT-250E】寸法:全長7670(GPU含む)×全幅2900×全高2800mm ホイールベース:3300mm エンジン:水冷ディーゼル(コマツSA6D108) 総排気量:7150cc 最高出力:220ps/2400rpm トランスミッション:4速AT 最大牽引力:20000kg 最高速度:33km/h ※諸元値はKOMATSU社の標準モデルのもの
車両を後ろから見たところ。後退時の視界確保のため後ろの窓が大きい。車体後端にあるのが電気供給用エンジンのGPUだ。
トーイングトラクターが旅客機を移動させる仕組みはシンプルだ。トーイングトラクターの後ろにトーバーを6~7cmのピンで接続。トーバーのもう一方を旅客機の前輪に接続する。1本の棒で繋げて旅客機を押し引きする。運転操作はハンドル&2ペダルであって、普通のクルマの運転とほぼ同じとなる。
ただ問題になるのが、トーバーの両側はピンでしか固定されていないこと。旅客機の前輪は左右に自在に動くし、トーバーの車両側もブラブラと自在に動く。つまり、旅客機を移動させたい方向に単純に押せばいいわけではない。トーバー前後の支点と旅客機の前輪のタイヤの向きを考慮しながら、微妙な操作が必要となる。これが難しい。
さらに、トーバーと旅客機前輪との接続部に隙間があるのも厄介な問題だ。そのためじんわり上手に押さないと、旅客機に振動が伝わる。上手な人は、動き出す瞬間が乗客に分からないように、スムーズに押すという。
旅客機がパッセンジャーボーディングブリッジ(PBB)から離れる時は、必ずトーイングトラクターが押している。乗客として旅客機に乗った際には、その動き出しの瞬間に注意してみよう。ガツンと衝撃がくるのか? それともスーッと静かに動き出すのか? ここでトーイングトラクターの運転手の腕前がわかるのだ。
白い2本のトーバーと左奥にトーバーが3本。接続時はタイヤを上にあげる。旅客機ごとに専用のトーバーを使う。
運転席は、前進用と後退用の2種が用意されている。後退用の運転席が存在しない車種もある。
トーイングトラクターがトーバーを用いて旅客機を押して、駐機場から離れているところ(写真は別車種)。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
最新の関連記事(はたらくくるま)
トーイングトラクター TOYOTA L&F 2TD-25:小さくても超ヘビー! 重い理由はボディの鉄板にあり 旅客機に積み込まれる手荷物の入ったコンテナを運ぶ。これも空港での重要な仕事のひとつ[…]
トーバーレストーイングトラクター KALMAR TBL190:旅客機の前輪を抱えて移動させる 空港の“はたらくくるま”「トーバーレストーイングトラクター」、その仕事は旅客機の移動のサポートだ。 旅客機[…]
主役である旅客機を支える独特なスタイルのクルマたち 飛行機に乗って旅をする。その時、多くの乗客がもっとも強く印象づけられるのは、巨大で力強く、そして人間を空へといざなう旅客機という存在だ。 しかし、実[…]
アイガモロボ:雑草を抑制するロボット 自動“抑草”ロボットの「アイガモロボ」。水田に浮かび、スクリューで水をかき混ぜて水を濁らせ、光合成をしにくい環境をつくり、雑草の育成を抑制する。太陽光を電力に、G[…]
日本のコンバインは穂先のみを脱穀する 日本における主食となる米。その収穫において大活躍する“はたらくくるま”が「コンバイン」だ。稲や麦などの穀物を“刈り取り”して“脱穀”、そして“選別”までを1台でこ[…]
人気記事ランキング(全体)
FRのサニーに対して、日産初のFF方式を採用 1970年代を前にして、ヨーロッパから前輪駆動のFF方式の波が押し寄せてくる。この流れを敏感にとらえ、市場に送り出されたのがチェリーだ。車名の由来は日本の[…]
一見すると、何に使うかよくわからないアイテムだが…。 TikTokを始めとしたSNSでバズった話題のカーグッズ。ショート動画で見ていると、かなり便利そうなので気にはなったいたのだが…。実際のところはど[…]
"最後の個性派スポーツ"と評価されたSR311フェアレディ2000 その軽やかな響きとは裏腹に、フェアレディという名は、国産スポーツカーのパイオニアの血統を受け継ぐ伝統の名称だ。その系譜をたどれば、ダ[…]
ヤリスクロス:モデル概要 ヤリスクロスは、ハッチバックのヤリスをベースにしたコンパクトSUV。ヤリスの弱点であった後部座席と荷室のスペースを拡大することで、実用性を大幅に向上させており、手頃な価格設定[…]
コンパクトでも侮れない装備力 F-BOX Squareは、トヨタ・タウンエースをベースに仕上げられた8ナンバーキャンピングカー。街乗りにも馴染むコンパクトな全長と車高1,960mmというサイズ感は、立[…]
最新の投稿記事(全体)
レクサスが次世代スポーツカーの未来像を提示 トヨタ自動車の高級車ブランド、レクサスは8月15日にカリフォルニア州で開催された「ザ・クエイル、モータースポーツギャザリング」にて、次世代のデザイン哲学を体[…]
コンセプトモデル「Acura Performance EV Concept」の進化系 ベースとなっているのは、昨年2024年にカリフォルニアで開催されたモントレー・カー・ウィークで発表された、Acur[…]
一見すると、何に使うかよくわからないアイテムだが…。 TikTokを始めとしたSNSでバズった話題のカーグッズ。ショート動画で見ていると、かなり便利そうなので気にはなったいたのだが…。実際のところはど[…]
GRIDLESS GARAGE LIFEを体現するGMLVAN G-01 GMLVAN G-01は日産キャラバンをベースに、GORDON MILLER MOTORSのアイコンである丸目ライトとテールラ[…]
「トヨタ・2000GT」より先に生まれた「小さなスポーツカー」 「トヨタ・スポーツ800」が発売されたのは1965年です。 それより少し前の1950年代は、戦後からの復興期から徐々に産業が発展しつつあ[…]
- 1
- 2