BEV時代のルーフはガラスになる!?その納得の理由とは
ルーフの大部分をガラス化する「パノラマルーフ」を備える車種が近年増えている。トヨタ「カローラクロス」や「ハリアー」、ホンダ「ヴェゼル」、ダイハツ「タフト」などが代表例であるが、こうした車種が増えている背景にはどんな事情があるのだろうか?
●文:[クリエイターチャンネル] Peacock Blue K.K.
ルーフガラスに起こったイノベーション
ルーフをガラス化することで得られる最大のメリットは、車内に圧倒的な開放感をもたらすことにある。ガラス部分が大きければ大きいほど、その効果も大きくなる。
一方、デメリットも少なくない。コストや重量の増加、強度や耐久性といった点に加えて、快適な車内温度の維持にも課題があった。
パノラマルーフは、光を取り込むことで開放的な車内空間を実現する一方で、通常のルーフに比べて日差しや外気の影響を受けやすいという側面もある。
シェードを閉じることで直射日光が差し込むことは避けられるが、車内に熱がこもることは避けられず、必要以上にエアコンに頼らざるを得なかった。また、大型のシェードを備えることによる重量の増加といった、新たな課題も生じる。
このように、デメリットの方が大きかったことから、これまでパノラマルーフを積極的に採用する車種は少なかった。
ただ、こうしたネガティブな点は、自動車用ガラスを開発・生産するメーカーなどの努力によって解消の兆しを見せつつある。
特に、「Low-Eコート付きガラス」が自動車用途に採用できるようになったことが、パノラマルーフの普及に大きく貢献しているという。
「Low-Eコート付きガラス」は、特殊な金属膜をコートした遮熱・断熱性能が高いガラスだ。これまではおもに住宅用途などに採用されてきたが、自動車用途にも耐えうる性能を担保できるようになったことで、ルーフガラスに採用できるようになった。
必要十分な遮熱・断熱性能を備えたことで、季節や環境を問わず、快適な車内温度を維持することができるようになったわけである。
進むグローバルモデル化も背景に?
また、各車種のグローバルモデル化も一因にあるようだ。
カローラクロスやハリアー、ヴェゼルなどは、日本以外の多くの国や地域でも販売されているグローバルモデルである。
同一車種を大量生産することで得られるメリットは大きいことから、各メーカーの主力車種がグローバルモデル化していくことは必然と言えるが、その結果として、さまざまな国や地域のニーズを満たす必要が生じてくる。
パノラマルーフは中国や東南アジアなどで特に高い人気を得ていることから、これらの車種でパノラマルーフが採用されているのは、そうした国や地域のニーズへと配慮した結果と言うこともできる。
また、グローバルモデル化が進むと各車種が無個性化する傾向があるため、競合車種との差別化を図るためにも、パノラマルーフのような特徴的な装備を備えるといった、メーカー側の狙いもあると言えそうだ。
パノラマルーフはBEVと相性が良い?
今後もパノラマルーフを採用する車種は増えてくるのだろうか?
その答えは「イエス」である。パノラマルーフは世界の自動車業界で進む「電動化」と相性が良いことから、むしろこれまで以上に普及が進む可能性が高い。
「電動化」にもさまざまなレベルがあるが、その代表例はやはりBEVだ。BEVは内燃機関車とは構造が大きく異なるのは言うまでもないが、なかでも、大型のバッテリーを搭載する必要があるという点はBEVの特徴的な点だ。
現在のBEVの多くは、大型のバッテリーを床面に敷き詰める形を採用している。重量物であるバッテリーは、できるだけ低い位置に広く搭載するほうが、安定性やスペース効率の観点から適しているためだ。
一方、それによって生じるのが、居住性の悪化、特にヘッドクリアランスが小さくなるという問題だ。全高を高くすることである程度は改善できるものの、実用性も考えると限界もある。
そこで、ルーフ全面をガラス化するパノラマルーフによって、実際の室内長以上の開放感を与えるという選択肢が生まれるのである。
それに加えて、パノラマルーフによって得られる “未来感”も、BEVが相性がよいと言えそうだ。
最近では、調光機能を備えたパノラマルーフなども開発され、レクサス「RZ」などにも採用されている。ルーフガラス自体に調光機能が備わっていることで、シェードを備える必要がなくなるため、軽量化やヘッドクリアランスの確保にさらに貢献している。
このように考えると、今後多くの車種でパノラマルーフが標準装備、もしくは純正オプションとして採用されることになるだろう。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
よく読まれている記事
全国各地で開催されているキャンピングカーショーやアウトドアイベント。「行きたいけどタイミングが…」「開催場所が自宅から遠い…」など、直接現地に行けない方も多いハズ。そこで本記事では、各イベントで展示さ[…]
料金所で停止することなく通過できるという利便性の高さや割引料金なども魅力で、年々、利用率が上がってきているETC。車載器を搭載する車両も増えてきている。そこで、ETCカード利用時のちょっとしたお役立ち[…]
ディーラーに試乗車が用意される前の先行予約で9000台を超える受注を集めたスズキ・フロンクス。ディーラーレベルでは「納車まで相当お待ちいただくことに……」と嬉しい悲鳴をあげているようだが、そのクラス離[…]
大衆に受け入れられた初代カローラだが、その成功の要因が4速フロアシフトやセパレートシートの採用など、ライバルに先んじたスポーティ志向にあったことはよく知られている。2代目でもサイズアップと装備充実を図[…]
本記事では、全国各地で開催されたキャンピングカーショーやアウトドアイベントで展示されていた注目車両を紹介! 目次 1 ベース車両はトヨタのハイエース ベース車両はトヨタのハイエース ベースの車両はトヨ[…]
最新の記事
- オーテックの名物イベント「AOG 湘南里帰りミーティング2024」が、今年も大盛況だった件
- 今冬、軽ユーザーの救世主! 【新発売】ソフト99 モビルシュシュ「簡単装着の布製タイヤ滑り止めカバー」
- ダイハツ、タフトの一部仕様変更を実施
- すぐに売ってもいいくらいの完成度と滑らかな走り!水素エンジン+HEVのハイエースに乗った!!
- 【1980年代編】当時、街でよく見かけた「時代を表すクルマたち」5選 〜やがて華やかなバブル景気へ〜
- 1
- 2