
フォルクスワーゲン ゴルフのマイナーチェンジモデルが、2025年1月10日に国内発売された。現行ゴルフは2021年に日本に導入された第8世代にあたるモデルで、「2021-2022インポートカーオブザイヤー」を得るなど日本でも高く評価されている1台。欧州車はマイナーチェンジでも大きくクルマを進化させてくるだけに、どれほどのアップデートが施されたのだろうか?
●文/写真:鈴木ケンイチ
最新インフォテイメント「MIB4」を採用するなど、機能面を大きく強化
今回導入されるゴルフの改良新型は、第8世代の進化型という意味から「ゴルフ8.5」とも呼ばれている。マイナーチェンジということもあって、エクステリア/インテリア/パワートレーンと、変更点はそれなりに多い。
まずエクステリアで注目なのは、フロントマスクの変貌ぶり。具体的にはヘッドライトとフロントバンパーのデザインが、よりシャープな造形となったほか、VWのエンブレムもイルミネーション付きに変更。ほかにも一部のグレードには、500mのハイビーム照射距離を誇る「IQ.LIGHT」が用意される。
バンパーまわりやリヤコンビライトの加飾も変更されている。
グリルエンブレムにイルミネーション機能が備わっている。
インテリアは、12.9インチの大型タッチディスプレイを伴う新インフォテイメントシステム「MIB4」の採用が大きなトピックス。VWの車載インフォテイメントシステムとして第4世代となる最新システムには、常時通信接続機能を備えるほか、音声による機能操作「IDA(アイーダ)ボイスアシスタント」も搭載される。とくにIDAは完成度が高く、まるで会話するようにインフォテイメントやエアコンなどを操作できるようになっている。
ソフトパットの適用範囲が拡大されるなど、内装加飾のレベルも上がった印象。プレミアム強化も見どころのひとつ。
改良前は10インチサイズだったディスプレイも、12.9インチディスプレイに進化。1タッチ操作でできる機能が増えるなど、操作性も向上している。
改良新型ゴルフのグレード編成は、ガソリン車の「eTSI」、ディーゼル車の「TDI」が主力モデルという位置づけで、ほかにもスポーティグレードの「GTI」、そして最強モデルとして「R」がラインナップされる。
ガソリン車は1.5リッター直列4気筒ターボに小型モーター(14kW/56Nm)を組み合わせる48Vのマイルドハイブリッド、ディーゼル車が2リッター直列4気筒ターボという組み合わせ。ただ、ガソリン車はグレードによって、最高出力が85kW(116ps)仕様と、110kW(150ps)仕様の2つが用意される。エントリーの「eTSI Active Basic」と「eTSI Active」が85kW(116ps)で、プレミアムとスポーティグレードの「eTSI Style」「eTSI R-Line」が110kW(150ps)とパワフルな仕様になっている。ディーゼルターボは、4グレードすべてが110kW(150ps)と変わらない。
ちなみに、サスペンションはフロントが全グレードでストラットなのに対して、リヤは「eTSI Active Basic」と「eTSI Active」がトレーリングアームで、それ以外は4リンク(スタビライザー付き)となる。85kW(116ps)仕様がトレーリングアームで、110kW(150ps)仕様が4リンクというわけだ。
また、ここまでのグレード編成とパワートレーンは、ハッチバック車とステーションワゴンで変わることはない。
価格は以下。
- eTSI Active Basic:ゴルフ349万9000円/ヴァリアント363万9000円
- eTSI Active:ゴルフ379万9000円/ヴァリアント393万9000円
- eTSI Style:ゴルフ443万7000円/ヴァリアント457万7000円
- eTSI R-Line:ゴルフ455万3000円/ヴァリアント465万6000円
- TDI Active Basic:ゴルフ396万円/ヴァリアント410万円
- TDI Active Advance:ゴルフ450万8000円/ヴァリアント466万9000円
- TDI Style:ゴルフ463万8000円/ヴァリアント477万8000円
- TDI R-Line:ゴルフ475万3000円/ヴァリアント485万6000円
幅広い速度域で力強い、モーターアシストの恩恵は明らか
今回試乗したのは、ステーションワゴンの「ゴルフ ヴァリアント eTSI Active(393万9000円)」だ。
運転席に乗り込んだ時にまず気づくのは、12.9インチサイズとなったセンターディスプレイの存在感の大きさだ。改良前は10インチであったことを考えると、画面サイズは2回りも大きくなっている。最新のMIB4インフォテイメントシステムの操作感は日本のカーナビ風になっており、とても使いやすい。これはとても嬉しい改良点と思える。
ほかにもインパネまわりの加飾感も好ましいところ。視覚的にも触った感触も上質な雰囲気が高まっており、エントリーグレードの寂しさみたいなものは、微塵も感じさせない。
さっそく走り出してみると、キャビンが極めて静かなことに気づく。煮詰められたNV性能の向上なども大きいのだろうが、エンジンの音が気にならない。メーターのディスプレイ表示を見るかぎり、アクセルを戻すとすぐにエンジンが停止して、コースティング状態になっていることが分かる。それでいてアクセルを踏み込むと、ピョン! とばかりにタコメーターの針が飛び上がり、一瞬でエンジンが再始動するのだが、そのときにブルンという振動も一切ない。
エンジンが再始動すると、速やかにトルクの盛り上がりも感じられることも印象的で、このあたりはモーターアシストが上手に介入するな、というのが率直な感想。48Vという高電圧でスターター&ジェネレーターを駆使する、48Vマイルドハイブリッドの強みといえそうだ。
デジタルメータークラスター”Digital Cockpit Pro”は全グレードに標準装備。
挙動は穏やかなタイプ。路面の凹凸をキャビンに伝わらせないフラットライド感が強めで、乗り心地はかなりよい。これは高速走行でも同じ傾向で、抜群の安定感を感じさせてくれる。このあたりの絶妙な味付けも好ましい。
今回の試乗車は、パワートレーンの最高出力はもっとも小さい85kW(116ps)であるし、タイヤももっとも小さな16インチで、リヤサスはトレーリングアーム。走りに関してはそれほど期待していなかったのだが、街中から郊外、さらには高速道路の移動でも、まったく不満は感じない。逆に「これぐらいがいいな〜」と思えるほど、快適な走りが楽しめるモデルに仕上がっている。
基本性能の高さという土台に、マイナーチェンジという化粧直しで質感が大幅アップしたのが「ゴルフ8.5」。ケレン味のない良いクルマだ。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(フォルクスワーゲン)
STREET VWsは空冷フォルクスワーゲン専門誌。 根強いファンをもつビートル、バス型のタイプII、カルマンギアなどがターゲット。VWはドイツで誕生したが、理想的な大衆車に仕立て上げたのはアメリカ。[…]
「ピュア ポジティブ」が体現する、新しいフォルクスワーゲン 「ID.クロス コンセプト」は、人気の「T-クロス」クラスに属する電動コンパクトSUVとして、その手頃な価格帯が注目を集める。デザイン責任者[…]
可愛らしいワーゲンバスを、現代風にオマージュ 試乗したのは、ロングホイールベースモデルの「ID.Buzz Pro Long Wheelbase」。全長4965mm、全幅1985mm、全高1925mmと[…]
「MEB」を採用する、ID.ファミリーの第2弾モデル 今回導入される「ID.Buzz」は、長年「ワーゲンバス」の愛称で親しまれてきたフォルクスワーゲン「Type 2」のヘリテージを継承しつつ、最新の電[…]
偶数段と奇数段の2つのクラッチを交互に切り替えるのがツインクラッチ 第3のオートマチックトランスミッションともいえるのがツインクラッチを採用したトランスミッションだ。偶数段と奇数段用の二つのクラッチを[…]
最新の関連記事(ワゴン)
【1967 ランドクルーザー50系】求められるニーズに合わせたバン(ワゴン)仕様の50系を分離独立 1960年に登場した3代目ランドクルーザー(40系)は、24年も生産され続けたロングセラー。その長い[…]
レヴォーグ:モデル概要〈見た目はキープコンセプトながら、中身はまるで別物に進化〉 初代モデル(先代)の大成功を引き継いで登場した現行レヴォーグ(2代目)。エクステリアはキープコンセプト路線を採用したた[…]
艶やかなグロッシーブラックのアクセントが映える特別な1台 今回導入される特別仕様車「XC60 Dark Edition」は、V60やXC40で好評を博したDarkエクステリアを、XC60 B5 AWD[…]
システム最高出力190ps/最大トルク310Nmを発揮するガソリンハイブリッド車のエントリーモデル 2024年2月に国内導入された現行世代の5シリーズツーリングには、これまで48Vマイルドハイブリッド[…]
スバル自慢の正統派ステーションワゴン。2023年にはSUV色を強めたレイバックも追加 2020年秋にデビューした現行レヴォーグは、レガシィの系譜を受け継ぐステーションワゴン。走りの良さや充実の装備機能[…]
人気記事ランキング(全体)
冬のエアコンは“いきなり全開”が一番ムダになる理由 冬の朝は車内が冷え切り、シートもハンドルも硬く感じる。そんな状況で暖房を思い切り上げてしまうドライバーは少なくない。しかし、暖房はエンジンの排熱を利[…]
固着したネジが動かない…作業を止める小さな“壁” どれほど簡単な整備手順でも、一本のネジが固着しているだけで作業は急に難しくなる。サビが食い込み、雨ざらしのボルトが内部で膨張し、樹脂パーツとの隙間に汚[…]
わさびを主成分とした抗菌剤で、エアコン内部のニオイを抑制 エアコンフィルターに装着して除菌消臭効果を格段に向上させるという製品が、自動車部品のグローバルメーカーValeoのわさびデェールだ。この製品は[…]
予想外のトラブルに備える、小さな“安心材料” クルマに乗っていると、どれだけ用心していても避けられない出来事がある。釘を踏み抜くパンクや、走行中の異物接触、さらには路肩での急な停車など、経験した人なら[…]
一見、何に使うかわからないが、活用の幅は広いアイテム 今回紹介するのは、様々なカー用品を多数リリースするカーメイトのグッズだ。商品の写真や装着した写真だけを見ても、どうやって使用するのかわかりにくいか[…]
最新の投稿記事(全体)
目玉の「ミゼットX 大阪Ver.」には、ダイハツの地元を象徴する大阪城マークを採用 出展テーマは“わたしにダイハツメイ。小さいからこそできること。小さいことからひとつずつ。”とし、「わたしにぴったり」[…]
BEVでも「走りの楽しさ」は深化できる このモデルはマスタードライバーを務めるモリゾウ(豊田章男会長)の「クルマ屋が残していくべき技術・技能を次の世代に受け継がなければならない」という強い想いのもと、[…]
モータースポーツを起点とした「もっといいクルマづくり」を結集 今回、TGRが発表した2台のハイパースポーツは、TGRが目指している「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」を深化させ、GR[…]
トヨタのレジェンドモデルが高速走行を繰り広げる! 今回発表された「GR GT」は単なる新しいスポーツカーではない。TOYOTA 2000GT、Lexus LFAと続いてきた系譜を継ぐ、トヨタの思いが込[…]
固着したネジが動かない…作業を止める小さな“壁” どれほど簡単な整備手順でも、一本のネジが固着しているだけで作業は急に難しくなる。サビが食い込み、雨ざらしのボルトが内部で膨張し、樹脂パーツとの隙間に汚[…]
- 1
- 2




























