
コペンが守り続けてきた軽スポーツカーのカテゴリーには、かつては多くの先輩たちがいた。とくにバブルの余韻が残る’90年代に登場したクルマたちは、今も記憶に残る名車だ。
●文:月刊自家用車編集部
バブル生まれの個性派は 華やかな魅力を競った
今でこそ、便利で経済的な日用品として暮らしに溶け込んだ軽自動車だが、モータリゼーション黎明期の日本には、多くの軽スポーツカーの企画があった。高度経済成長によって、“軽自動車なら手が届くかも……”と思えるようになった庶民の期待に応えて、メーカーもさまざまな提案をしていたのだ。
SUZUKIカプチーノ(1991~1998年)
■主要データ(標準仕様・1991年式)
●全長×全幅×全高:3295㎜×1395㎜×1185㎜ ●ホイールベース:2060㎜ ●車両重量:700㎏ ●エンジン(F6A型):水冷直列3気筒DOHCターボ657㏄ ●最高出力:64PS/6500rpm ●最大トルク:8.7 ㎏・m/4000rpm ●トランスミッション:5 速MT ●燃料タンク容量:30ℓ ●10モード燃費:18.0㎞/ℓ ●タイヤサイズ:165/65SR14 ●最小回転半径:4.4m ●乗車定員:2名 ●価格:145万8000円(1991年当時)
マツダが1960年に初めて作った軽自動車は、のちのコスモスポーツを彷彿とさせるスポーツカーフォルムのR360クーペだったし、ホンダも’62年に4輪製品第一号としてオープン2シーターのS360を発表している(ただし、実際に発売されたのは小型車版のS500。S360用のDOHCエンジンは、同年に登場したトラックのT360に積まれた)。
’70年代になっても、ジウジアーロによる流麗なデザインに高性能2ストロークエンジンを積んだスズキのフロンテクーペや、軽自動車初の本格HTを持つダイハツフェローMAXが登場するなど、小さくても夢のある軽スポーツカーは、多くの日本人にとって身近な存在だったのだ。
HONDAビート(1991~1996年)
■主要データ(標準仕様・1991年式) ●全長×全幅×全高:3295㎜×1395㎜×1175㎜ ●ホイールベース:2280㎜ ●車両重量:760㎏ ●エンジン(E07A型): 水冷直列3気筒SOHC656㏄ ●最高出力:64PS/8100rpm ●最大トルク:6.1㎏・m/7000rpm ●トランスミッション:5MT ●最小回転半径:4.6m ●乗車定員:2名 ●10モード燃費:17.2㎞/ℓ ●燃料タンク容量:24ℓ(レギュラー) ●価格:138万8000円(1991年当時)
マイカー時代が本格的に到来すると、人々の関心が小型車以上に移り、軽自動車は市場そのものが存亡の危機を迎えたこともある。が、さらに豊かになった日本人が当たり前にセカンドカーを持つようになると、そこを狙ってふたたび軽スポーツカーのブームが起きた。1991年から1992年にかけて、ホンダのビート、スズキのカプチーノ、マツダのAZ-1という、今も語り継がれる名車たちが生まれたのだ。
MAZDA AZ-1(1992~1995年)
■主要データ(標準仕様・1992年式) ●全長×全幅×全高:3295 ㎜×1395 ㎜×1150 ㎜ ●ホイールベース:2235 ㎜ ●車両重量:720㎏ ●エンジン(F6A型):水冷直列3気筒DOHCターボ657㏄ ●最高出力:64PS/6500rpm ●最大トルク:8.7㎏・m/4000rpm ● 10・15モード燃費:18.4 ㎞/ℓ ●トランスミッション:5 速MT ●タイヤサイズ:155/65R13 ●最小回転半径:4.7m ●乗車定員:2名 ●価格:149万8000円(1992年当時)
9000回転まで回るホンダらしいNAスポーツエンジンをリヤミッドに積んだビート、当時軽自動車最強だったアルトワークス用のツインカムターボを、アルミを多用した専用開発のFRシャシーに積んだカプチーノ、同じエンジンをガルウイングドアを持つスーパーカーフォルムにミッドに積んだAZ-1は、いずれもバブル時代にしか生まれ得なかった、華のある、ぜいたくな軽自動車だった。
スポーツカーといっても、軽自動車の最高出力は自主規制による64PSが上限。280PSもある本格スポーツカーでは、一般ドライバーにはそれを使い切ることは不可能だが、軽スポーツカーなら誰でも全開にできた。
日本車のシャシー技術も完成の域に到達しつつあった時代だけに、各車ともにハンドリングも秀逸で、3車3様の個性のある走りが楽しめたのだ。
※本記事は月刊自家用車2014年6月号掲載記事を再構成したものです。
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