
ハイブリッド車とバッテリーEV車のメリットを上手に融合しているプラグインハイブリッド車。ハイブリッド車と比べると少し価格が高めゆえに見逃しているユーザーも多いだろうが、宿る性能をじっくり見ていくと、なかなか買い得であることが分かる。ここでは注目して欲しい3つのプラグインハイブリッド車をお教えしよう。
●解説:川島茂夫/編集部
高性能だけが売りじゃない。普段使いでも便利に、経済的に使えることも大きな魅力
上級モデルを中心に採用が進むプラグインハイブリッド車(以下PHEV)。駆動メカニズムの細かな考え方は異なるが、国内で販売されているPHEVは、ハイブリッド車(以下HEV)と同じエンジン+モーターの基本システムに、少し大きめの走行用バッテリーと外部充電機能を備えていると考えていい。
外部充電に対応していることを除けば、走行システムはほぼHEVに等しいが、PHEVとHEVで大きく違うのが、EV航続可能な距離の長さ。HEVの中にも電動走行モードを持つモデルはあるが、総じて純電動で走れる距離は極めて短い。一方、PHEVは大容量バッテリーを搭載することで、航続可能距離を伸ばしており、現在販売されているPHEVの大半は、満充電でのEV後続距離はWLTCモードで70km超というのが標準的だ。
エンジン+モーターのシステム合計出力が優れているだけではなく、通勤や買い物などのタウンユースはEV走行、レジャーなどの中長距離用途はHEV走行と、フレキシブルに対応できることもPHEVの強みになっている。必然的に価格はHEVよりも高くなってしまうが、自宅に200Vコンセントを設置できるユーザーならば、より経済的にPHEVのメリットを満喫できるだろう。
ミツビシ・アウトランダーPHEV【オンロードもオフロードも良質な走り。経済性も含めたバランスの良さはトップ級】
価格帯:484万1100~570万5700円。
PHEVに興味を持つユーザーの中には、BEV(バッテリー式電気自動車)の走りを楽しみたい、あるいはその使い勝手を試したいと考えているユーザーも少なくないはず。
その視点で最もBEVに近い運用ができるのが、ミツビシ・アウトランダー PHEVだ。
採用するハイブリッドシステムはエンジンを発電機として用い、発電機とバッテリーから供給される電力によりモーターを駆動するシリーズ式をベースとしている。エンジン駆動機構も備えているため、高速巡航時はパラレル式制御を行うが、基本はモーター主体の純電動走行で、前後輪に独立した高出力型モーターを搭載している。PHEVとしては珍しく急速充電にも対応しており、満充電EV航続距離は85km。BEVに限りなく近い感覚で使いたおすこともできる。
精密な速度制御が可能な電動の利点を活かして操安性の向上を図ったS-AWCを備えるなど、舗装路、悪路を問わない走行性能も一級品。このクラスでも珍しい3列シート仕様も選べるなど、PHEV以外の魅力もしっかりと備えたモデルだ。ちなみにアウトランダーほどのキャビン実用性を求めないならば、一回りコンパクトなボディで、同様の走行システムを採用しているエクリプス クロス PHEVも要チェックすべき1台だ。
エンジン直動機構を備えるため、高速走行時の燃費の落ち込みが少ないこともメリット。
トヨタ・RAV4 PHV【街中からレジャーユースまで、幅広いステージで活躍できる万能タイプ。HEV走行時の経済性もピカイチ】
価格:563万3000円。
同じSUV系のPHEVとして、もう1台注目したいのが、RAV4 PHVだ。電動感はアウトランダー PHEVには及ばないまでも、HEV走行時の燃費はクラス最高水準で、走行状況によってはHEVモデルを上回るほどの実用燃費を示すほど優秀だ。リヤ側にも駆動モーターを備えるE-Fourを採用しており、レジャーユースも得意。満充電EV航続距離は95kmと、短距離主体の普段使いはできるだけ電動走行でこなしたいというニーズにもしっかりと応えてくれる。
ちなみにハード的に姉妹車関係にあるハリアーにも、同システムを採用したPHEVモデルが用意されている。レジャーはほどほどでオンロード主体というならば、こちらを選んでもいい。
駆動方式は、リヤ側に駆動モーターを備えるE-Fourを採用。ラフロード性能が高いことも強みのひとつ。
トヨタ・プリウスPHV【PHEVモデルとはして最安クラス。コスパ視点ならば最有力候補】
価格:460万円。
SUVではサイズ的に厳しい、あるいは燃費を最重視するユーザーにイチオシしたいのが、プリウスPHVだ。満充電EV航続距離はRAV4 PHVには及ばないものの87kmと、他車を含めたPHEVの中でもトップクラス。さらにHEV走行時のWLTC総合モード燃費は、クラストップレベルの26.0km/Lを記録するなど、HEVとしても優秀だ。価格も本格的なPHEVシステムを搭載するモデルの中では、かなりリーズナブルな設定になっていることも見逃せない。
それでいて走りも良質。エンジン出力はプリウスのHEVモデルと同じだが、モーター出力と合算されるシステム合計出力は223PSを発揮するなど、HEVモデルより1ランク上の動力性能が与えられている。HEVモデルよりも中高速域の加速性能が強化されているので、高速ツーリングを重視するユーザーにもオススメできる。ちなみにOPのソーラー充電システムは、1年間でEV走行に換算すると1200km分に相当する電力を生み出すことができる性能を持つ。屋外に駐車しているだけで、毎月100km分のEV走行電気代を節約できる計算も成り立つ。人気殺到で納期が長め(最新情報では、ソーラー充電システム未装着車で12か月程度)になっているのはネックだが、待つ価値があるモデルだ。
現行型は高速ツーリング性能も大幅に強化。走り視点でも魅力的なモデルに進化している。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(SUV)
「’41」と名付けられた特別なミリタリーグリーン色を採用 ラングラー ルビコンは、世界で最も過酷な山道と言われるルビコントレイルを走破するモデルとして命名された、ジープのラインナップの中で最も高いオフ[…]
BEVとしての基本性能を大きく底上げ 2021年にスバル初のグローバルバッテリーEV(BEV)として登場したソルテラは、電動駆動の利点を追求しつつ、余裕あるSUVボディや先進の安全装備機能が充実するな[…]
ホイールベース拡大を感じさせない、巧みなパッケージ設計が光る 2012年に登場した初代CX-5は、魂動デザインとSKYACTIV技術を全面採用した、マツダ社内では6世代商品と呼ばれているシリーズの第一[…]
STIと並ぶもう一つの柱として、大きな期待を持ってデビュー ベースとなるプラットフォームは生産もトヨタに委託しているソルテラと共通だが、スバルのBEVとしては初めて自社の矢島工場での生産となるトレイル[…]
クロストレックが「ゴツい」タフ仕様に進化 クロストレックは、コンパクトなボディに本格的なSUV性能とラギッドかつスポーティなデザインを兼ね備え、都会からアウトドアまで幅広いシーンで活用できる多用途性を[…]
最新の関連記事(セダン)
最高のマイバッハを唯一無二の特別装備で、さらなる高みへ この特別仕様車は、究極のラグジュアリーを追求するメルセデス・マイバッハに大自然からインスピレーションを得た特別な要素を組み合わせていることが特徴[…]
仕向け地に合わせて作り分けられた”双生児”の個性 最近では少なくなってきましたが、かつてはいわゆる兄弟車がたくさんありました。トヨタならカローラとスプリンター、日産ならサニーとパルサーとラングレーにロ[…]
コンテッサ1300クーペ(1965年) 高い技術から生み出された美しいクルマは、大きな注目を集めることに 今では、日野自動車が乗用車メーカーだというと、首を傾げる人も多いかもしれない。日本初の国産トラ[…]
コストパフォーマンスに優れた、本格スポーツセダン アルファロメオ・ジュリアは、ブランドの象徴であるトライローブグリルや流麗なボディライン、優れたハンドリング性能を兼ね備えた、イタリアンスポーツセダンの[…]
1989年「レクサス」誕生。最初は「LS」と「ES」の2本立て レクサスの最初の商品は、日本では初代セルシオとして販売されたLSと、カムリのV6エンジン車、プロミネントがベースのES。LSの完成度と比[…]
人気記事ランキング(全体)
車内には、活用できる部分が意外と多い カーグッズに対して、特に意識を払うことがない人でも、車内を見渡せば、何かしらのグッズが1つ2つは設置されているのではないだろうか。特に、現代では欠かすことができな[…]
家族のミニバンが、心地よい旅グルマへ 「フリード+ MV」は、ホンダのコンパクトミニバン「フリード+」をベースにしたキャンピング仕様。もともと使い勝手の良い車内空間をベースに、旅にも日常にもフィットす[…]
ホンダの電動スポーツは「プレリュード」だけじゃない Super-ONE Prototypeは、「e: Dash BOOSTER」をグランドコンセプトに、日常の移動を刺激的で高揚感あふれる体験へと進化さ[…]
薄型キャビンながら広い室内空間を実現 この「Honda 0 Alpha」は、都市と自然の両方に美しく調和し、あらゆる場面で人びとに寄り添うことを目指したSUV。2025年1月のCES 2025で発表さ[…]
ブラック加飾でスポーティ感を演出した、日本専用の上級グレードを投入 2022年より海外で展開している6代目CR-Vは、国内向けモデルとしてFCEV(燃料電池車)が投入されているが、今回、e:HEVを搭[…]
最新の投稿記事(全体)
●先進のプラグインハイブリッドシステムを採用 「SEALION 6」の最大の特徴は、BYDが独自に開発した高効率プラグインハイブリッドシステム「DM-i(デュアル・モード・インテリジェンス)」を搭載し[…]
●SUVの「死角」を減らす注目アイテム 人気のSUVだが、その車高の高さやボディサイズがもたらす「死角」は、ドライバーにとって常に付きまとう課題だ。カローラクロスも例外ではなく、運転席から遠い左前輪付[…]
ホンダの電動スポーツは「プレリュード」だけじゃない Super-ONE Prototypeは、「e: Dash BOOSTER」をグランドコンセプトに、日常の移動を刺激的で高揚感あふれる体験へと進化さ[…]
薄型キャビンながら広い室内空間を実現 この「Honda 0 Alpha」は、都市と自然の両方に美しく調和し、あらゆる場面で人びとに寄り添うことを目指したSUV。2025年1月のCES 2025で発表さ[…]
上質なコンパクトカーに新たな選択肢 プジョー208は、優れた取り回しと洗練されたデザインが評価されているハッチバックモデル。現行モデルは、独自設計のi-Cockpitの採用や、運転支援機能が強化された[…]
- 1
- 2
































