4WDシステムの前後輪トルク配分制御のメカニズムはいろいろとあるが、走行状況に素早く柔軟に対応できるという視点で最良のシステムになるのは、前後に独立した駆動モーターを備える電動4WDだろう。そのメリットを最大限に活かした最新の4WDシステム「e-4ORCE」を採用しているのが、日産エクストレイルの強みになっている。雪道での頼もしい実力ぶりをお伝えしよう。
●文:川島茂夫 ●写真:日産自動車/編集部
圧雪路から新雪、ゆかるみまで、冬のあらゆる路面状況に対応できる万能選手
前後2つの高出力モーターとブレーキが統合制御を行うことで、駆動力を自在にコントロールする電動駆動4輪制御システム「e-4ORCE」。タイヤのわずかなすべりを瞬時に検出し、グリップ限界を見極めながら走行できる特性は、オンロードではもちろんのこと、路面抵抗が激減する濡れた路面や雪道でも安定した走りを披露してくれる。
今回試乗したエクストレイルの4WD車は、全モデル「e-4ORCE」を標準採用。日産の現行ラインナップにおいて、もっともスノードライブに適しているモデルといってもいい。
試乗コースは、標高の高低差が大きめということもあって、10cm前後に圧雪された路面もあれば、一部アスファルトが見えるような溶けかけの路面まで、雪国でよく見かけるコンディション。
そんな状況下で存分に試した雪道でのエクストレイルの運転感覚は、素直の一言に尽きる。スタッドレスタイヤのグリップ力の限界の範囲なら、力学的に正しく導くような制御をごく自然に行ってくれることが強く印象に残る。グリップ変化の予兆の捉え方や、e-4ORCEの制御介入も早めに細かく駆動制御が行われることで、雪面から感じる違和感も少ない。
アクセル/ブレーキを強めにかけたりするような少し荒っぽい運転をしたとしても、スタッドレスタイヤのグリップ力の限界を超えない限りはシステム側が均すような制御を行ってくれるので、雪道でのセオリー(急なハンドル操作やアクセル/ブレーキ操作をしない)に則った運転をしていれば何の問題もない。
唐突なスリップに身構える必要もなく、ドライバーの精神的な疲労はかなり軽減してくれる。
だが、システムを過信しすぎて調子づくのは禁物だ。路面とタイヤのグリップ限界を超えてしまえば、加減速も曲がることもできなくなるのはFF(FR)駆動のクルマと同じ。しかも、車体スリップアングルなどを適切に制御できるということは、バランスよく4輪のグリップ力を使えるという意味であり、限界を超えた時はグリップ力に余裕があるタイヤがない状態になってしまうということ。オーバースピードなら速度とグリップ力が釣り合う旋回半径に沿って、ラインが大きく膨らんでしまう危険がある。けっしてe-4ORCEは魔法のツールではないのだ。
FFとe-4ORCEの価格差は約30万円ほど。選ぶ価値は大きい
とはいえ、しっかりと道路と路面の状況を把握できていれば、雪道の運転は快適そのもの。加減速の感覚や操舵のコントロールの塩梅は、ドライ路面と大きく変わらない。轍による方向性の乱れも少なく、直進は落ち着いて走ってくれるし、コーナーでのアンダーステアやオーバーステアに不安がる必要もない。常識的な範囲で運転している分には、雪景色や会話を楽しむ余裕も生まれるはずだ。
e-4ORCEに限らずとも、最近のe-POWER車は、電動の即応性や高精度のトルク制御を用いることで、乗員に感じられないほどの微細な制御を行っている。前後に駆動輪を持つ4WD車なら、その安定感はさらに高くなるというわけだ。
エクストレイルの場合、FF車とe-4ORCE車(4WD)の価格差は装備揃えのグレードで比べると約30万円ほど。雪路での性能差だけでなく走りの質や操安性でもe-4ORCEにはメリットがあるだけに、降雪地域のユーザーでなくても、e-4ORCE車は選ぶ価値が高い。魅力的な選択肢になってくれるはずだ。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(ニッサン)
1985年東京モーターショー・日産ブースの主役は、丸い2灯ヘッドランプの可愛いヤツだった ちょっと古い話だが、「時代と寝た女」とは、写真家の篠山紀信氏が山口百恵さんの引退に際して彼女を評した名言だった[…]
ホンダNSX[NA1/NA2] 生産期間:1990年9月~2005年12月 新車時価格:800.3万円〜1035.7万円 中古車の価格帯:635万円~5930万円 1990年9月デビュー。クルマ好きで[…]
日産の出展概要 日産は、『モビリティの未来が、今ここに。』をテーマに、日産の電気自動車の魅力を向上させる商品やコネクテッド技術を活用した法人向け新サービスなど、下記3つの内容を日産ブースで展示する。 […]
ベース車両は日産のキャラバン ベースの車両は日産のキャラバン。カスタムの幅が広く、アウトドアを中心としたユーザーに、非常に人気の高い車だ。 キャラバンはなんと言ってもクラス最大級の荷室の広さが魅力。普[…]
ベース車両は日産のNV200バネット ベースとなる車両は日産のNV200バネット。 荷室が広くカスタムの自由度が高い。一方で、キャラバンより小ぶりなため、運転しやすく駐車スペースで悩むことも少ない。4[…]
最新の関連記事(SUV)
ランドクルーザー250:モデル概要 新世代ランドクルーザーの中核モデルとして誕生した250シリーズは、悪路走破性に扱いやすさをプラスすることで、オフローダーが必要な人々の生活を支える役割と使命を担って[…]
長年、ジープをライセンス生産してきた三菱だからこそ生まれた、オリジナルの4WD車 まったく新しいコンセプトの新型車が世に出るまでには、多くの関門がある。ときにはどれほど出来栄えがよくても、経営陣の理解[…]
「アルピーヌ」のエッセンスを織り込んだ上級グレード「エスプリ アルピーヌ」を導入 今回導入される新型アルカナはグレード体系を刷新。スポーツシックな個性を強調するデザインの新グレード「エスプリ アルピー[…]
純電動走行の航続距離も拡大、システム総出力も20%向上 今回のビッグマイナーチェンジでの最大のポイントは、メカニズム面のさらなる進化。駆動用バッテリーの容量を従来の20kwhから22.7kwhへ増大し[…]
RAV4 モデル概要:プレミアムキャラの強化でイメージ一新、トヨタ自慢のミドルSUV 現行RAV4の開発コンセプトは「Robust Accurate Vehicle With&nb[…]
人気記事ランキング(全体)
ベース車両はトヨタのハイエース ベースの車両はトヨタのハイエース。カスタムの幅が広く、アウトドアを中心としたユーザーに、非常に人気の高い車だ。 ハイエースはなんと言ってもクラス最大級の荷室の広さが魅力[…]
ベース車両はトヨタのハイエース ベースの車両はトヨタのハイエース。カスタムの幅が広く、アウトドアを中心としたユーザーに、非常に人気の高い車だ。 ハイエースはなんと言ってもクラス最大級の荷室の広さが魅力[…]
ピラーに装着されたエンブレムやバッジの謎とは? 今のクルマはキャビン後部のCピラーには何も付けていない車両が多く、その部分はボディの一部としてプレーンな面を見せて、目線に近い高さのデザインの見せ場とな[…]
国産車と欧米車の方向性の違いを知らしめた多国籍車 いすゞ自動車が巨人GMとの全面提携に調印した1971年から、ベレット・ジェミニの開発は始まっている。 この頃デトロイトのGM本社では、子会社オペルのカ[…]
ホテルより快適かも? トヨタのハイエースがベースのキャンパー ベースの車両はトヨタのハイエース。カスタムの幅が広く、アウトドアを中心としたユーザーに、非常に人気の高い車だ。 ハイエースはなんと言っても[…]
最新の投稿記事(全体)
1985年東京モーターショー・日産ブースの主役は、丸い2灯ヘッドランプの可愛いヤツだった ちょっと古い話だが、「時代と寝た女」とは、写真家の篠山紀信氏が山口百恵さんの引退に際して彼女を評した名言だった[…]
iPhoneやiPadに対応するミラーリングケーブル 今回発売されるミラーリングケーブルは、iPhoneやiPadのUSBタイプCからHDMIタイプA端子に変換し、画面を車載ナビへ映すことができる。 […]
カロッツェリア トゥイーター取付キット 発売される取付キットは、クロームメッキのリングが象徴的にあしらわれた、車室内に溶け込む高品位なデザインを採用しており、ドアミラー裏のパネル部にカロッツェリアの適[…]
ワイヤレス接続可能な大画面ディスプレイオーディオ 「DMH-SF900」は、ワイヤレスで自動的に「Apple CarPlay」「Android Auto」に接続でき、使い慣れたiPhoneや Andr[…]
オンライン対応のサイバーナビ サイバーナビは、同梱もしくは別売のネットワークスティックを接続して車内にWi-Fiスポットを構築できる株式会社NTTドコモ(以下、ドコモ)の車内向けインターネット接続サー[…]
- 1
- 2