
ファミリーからアクティブなレジャーまで幅広いシーンで選ばれているカローラクロスが大幅改良を実施した。フェイスリフトを含んだスタイリング刷新はもちろんのこと、全車をハイブリッド化したことやGRスポーツグレードの追加など見どころ満載。今回のマイナーチェンジは相当大きなものだけに、新しくなったカローラクロスの実力が気になるユーザーも多いはずだ。ここでは注目すべき進化のポイントを見ていこう。
●文:まるも亜希子 ●写真:澤田和久
フェイスリフトでイメージ一新。都会に映えるスタイリングへ
今回のマイナーチェンジで、フェイスリフトが実施されたカローラクロス。ボディ同色かつバンパー一体成形のハニカム状グリルが与えられたフロントマスクは個性的で存在感が強く、遠くからでも“新しくなった”ことがすぐ分かる変化だ。
トヨタ・カローラクロスグレード&価格【2025年5月モデル】 | ||
グレード | パワートレーン | 価格【FF/E-Four】 |
G | 1.8Lハイブリッド システム最高出力:140PS | 276万円/301万9000円 |
S | 298万円/323万9000円 | |
Z | 343万円/368万9000円 | |
GR SPORT | 2Lハイブリッド システム最高出力:199PS | −/389万5000円 |
大掛かりなスタイリング変更で、従来のイメージを一新。改良型はヘッドランプと連続感を持たせたアッパーグリルの採用やフェンダーまわりの存在感を高めることで、所有欲を満たすデザインを実現している。
ヘッドランプもエッジの効いたランプ形状に代わり、横幅いっぱいに点灯するワイドなターンランプを採用したことで、精悍なイメージを強化。ほかにも左右のヘッドランプをつなぐセンターランプや、細くシャープなテールランプなど、かなりの部分が変更を受けている。ベーシックモデルとしてのカローラのプレーンなイメージが強めだった従来型と比べると、改良型は若々しい躍動感が際立っている。
Zグレードは、1つの光源でロービームとハイビームを切り替えるBi-Beam LEDヘッドライトと、左右のヘッドランプから直線的につながるLEDクリアランスランプを採用。大光量がもたらす視認性に加え、デザインの面でも先進感を上手に表現している。
夜間や見通しの悪い交差点などで発生する、出会い頭の衝突抑制に貢献する「シグナルロードプロジェクション(SRP)」が、日本初採用されたこともポイントのひとつ。これはウインカーやハザードランプと連動し、路面にシェブロン形状が照射される機能で、歩行者や周辺の車両に対して、ごく自然に注意を喚起してくれるものになる。
細かな使い勝手にこだわった、「良改良」ぶりが光る
内装まわりで注目したいのは、使い勝手向上を狙った工夫がプラスされていること。運転席と助手席に挟まれるフロアコンソールがアイランド型に変更され、シフトノブも上質感のある形状に変更された。さらにコンソール奥のトレイは、スマートフォンを2台並べて置ける幅広なスペースが確保されるなど、散らかりにくく使いやすい収納機能を実現している。
インパネは、広がり感を感じさせる水平基調のデザイン。今回の改良でシフトノブ&シフトパネル周辺のデザインも刷新されている。中央には10.5インチディスプレイオーディオが配置される。
アイランド型に変更されたフロアコンソールは、ドライバーの手の届きやすい位置に機能を集約した洗練されたデザイン。ピアノブラック調のパネルにより上質感も演出している。シフト奥には2台のスマートフォンを並列に置くことができるスペースが設けられている。
メーターは視認性と先進性を両立する12.3インチTFTカラーマルチインフォメーションディスプレイを採用。ドライバーが必要とする様々な情報を、鮮明なグラフィックで分かりやすく表示することが可能。
また今回試乗したZグレードには、送風が可能なシートベンチレーション機能が採用されているが、これがかなり効いている。試乗した日は高温多湿で汗ばむ状況が続いていたが、背中側に空気の流れができることで、運転中は常にサラリとした座り心地がキープできていた。上級グレードのZ限定装備とはいえ、明らかにクラス上の快適装備が備わったことは、このクラスのSUVを選ぶユーザーにとっては、大きなアドバンテージに映りそうだ。
前席はサイドサポートを効かせたスポーティシート。Zにはシートベンチレーションも備わるなど、利便機能が強化される。後席も十分な足元スペースとヘッドクリアランスが確保されるなど、大人3人がしっかり座れる実用的なレイアウトを採用する。
シートベンチレーション&シートヒーターの操作スイッチは、シフトレバー手前側に配置される。
全車ハイブリッド化。さらに車体各所にも、走りの質を高める工夫が凝らされている
今回の大幅改良で、ガソリン車が廃止されて、全車ハイブリッド車となったこともトピックの一つ。1.8LハイブリッドのZ・E-Four車を試乗したが、走り出し直後から剛性感と接地感の向上やステアリングフィールの上質感が強まっていることが実感できる。さらに従来型よりも落ち着きとしなやかさのバランスが高まっているので、車格がアップしたようにも思えるほどの変化がある。
試乗後に、このあたりの違いをトヨタの技術陣に確認してみたところ、カローラクロスは2023年の改良でもベアリング変更やサスペンションチューニングなどを実施しているが、今回はサスペンション締結トルクのアップや高減衰ボディ接着剤の採用など、さらに深く細かい部分にまで手を入れたとのこと。また、ルーフマスチックの高減衰化やAピラー内への吸音材の追加、リヤセクションへのウレタンブロックの追加などで、車内の静粛性向上も実現しているという。
主要諸元(Z・E-Four)
全長×全幅×全高(mm):4455×1825×1620 ホイールベース(mm):2640 トレッド【前/後】(mm):1560/1570 最低地上高(mm):160 車両重量(kg):1490 パワーユニット:1797cc直列4気筒(98ps/14.5kg-m)+モーター(F:70kW/185Nm R:30kW/84Nm) ブレーキ:ベンチレーテッドディスク(F)ディスク(R) サスペンション:マクファーソンストラット式(F)ダブルウィッシュボーン式(R) タイヤ:225/50R18
新設定の「SNOW EXTRA」モード。寒冷地のユーザーにはありがたい装備だ
ほかにもカローラクロス改良モデルには、さまざまな機能が追加されているが、個人的に面白いアプローチと思えたのが、車体の外気温やスリップ判定で、自動的にリヤを駆動する電動フルタイム4WD制御がオンとなるトヨタ初となる「SNOW EXTRA」モードの採用だ。
「SNOW EXTRA」走行イメージ。
昨今は都心部でも突然の降雪や豪雨などに見舞われる時代だけに、急の雪道でも高い走行安定性を確保してくれる機能は、ドライバーの安心感につながる。念のため、「SNOW EXTRA」モードに切り替えて一般道で試したところ、他のドライブモードに比べるとやや発進加速が穏やかになる感覚が強まるが、操舵感覚も含めてそれ以外には大きな変化を感じない。十分に冬のドライブで乗用できる塩梅なので、寒冷地のユーザーにとって、重宝できる機能であることは間違いなさそうだ。
発売は8月になるため、今回は「GRスポーツ」を試乗することができなかったが、ハイブリッドシステムは1.8Lエンジンから2Lエンジンベースになることでパワーアップ。さらに足回りは専用チューニングとなるなど、その走りは期待しかない。今から楽しみな一台だ。
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