スモール2BOX離れした良質な走りに脱帽! スズキ・スイフト 試乗インプレッション

標準排気量1.3L前後のスモール2BOXは、乗用登録車としては最小クラスとなるカテゴリー。スイフトは、このカテゴリーの基本原則「リーズナブルな実用車」であることを追求し続けているモデルだが、今回フルモデルチェンジで登場した新型は、走りの安心感も巧みにプラス。良質な実用車を求めるユーザーにとって、見逃せないモデルになりそうだ。

●文:川島茂夫●写真:奥隅圭之

使いやすさにこだわった、実用パッケージングの魅力は不変

近年、このクラスはSUV系の台頭の影響もあって、スタイリングや2名乗車を重視して開発されるモデルが増えているが、スイフトは初代モデルから一貫として、後席居住性や荷室積載性を考慮した実用重視のパッケージングを貫いている。

新型の室内高は2BOX車としては大きめの1225mmを確保しており、さらにキャビン後半の絞り込みを抑えたルーフラインや、大きめの開口部を持つリヤサイドドアがもたらすメリットもあって、成人男性が無理なく4名乗車で移動することが可能。後席の乗降性も歴代モデル同様に良好だ。

さらに注目したいのは、一新されたパワートレーンや、安全&運転支援機能(ADAS)&車載IT(コネクト機能)などの進化ぶりだ。特にパワートレーンのアップデートは、新型の大きな武器になっている。

パワートレーンはエンジン/ミッション共に一新され、1.2LのNAエンジンは完全新開発されている。エンジンバリエーションはエンジンのみの標準仕様と、ISGを用いたマイルドハイブリッドの2タイプ。今回試乗したのはスイフトの主力となるマイルドハイブリッドを採用した最上級グレード「ハイブリッドMZ」になる。

外側へ張り出したフェンダーにより、走りを想起させる造形をアピール。バックドアサイドスポイラーの採用や、フロントストレイク、フロントバンパー、ホイール形状などを最適化したことで、先代より空気抵抗を約4.6%低減している。

ドライバーを中心に角度を傾けるようにオーディオ、エアコンパネル、スイッチ類を配置したコックピット風のレイアウト。センターディスプレイをダッシュ上に配置する最新トレンドも取り入れている。

通常時の荷室容量は265L(VDA値)。シート格納はシンプルなシングルフォールディング式。格納時に床面に少々段差が生じるが、スモールクラスとしては最大級の広さを確保する。

新開発エンジンとCVT、電動アシストが絶妙のマッチング。数値以上の力感がある

試乗してまず驚いたのは、レスポンスや立ち上がりの良さだ。搭載する1.2Lエンジンの最大トルクは11.0kg・mでしかない。車両重量が1トンを切るといっても、数字的には余裕はないはずなのだが、緩加速や緩やかな登坂を登っていく程度ならば、巡航ギアをほぼ維持したままこなしてくれる。

アクセルを小さく踏み込んだ程度でも、素早くトルクが立ち上がっていくさまは、走行性能の余力感を感じるには大きなアドバンテージ。エンジンとミッション(CVT)を統合制御することで回転数を抑えていくトルクオンデマンド制御と、電動アシストの相乗効果が上手に効いていて、スペック以上の力感を感じさせてくれる。

ただ、クルマが急加速を強いられる状況では、パワースペックが示すとおりの加速性能であり、最大加速への到達時間もかかる。エンジン回転数の上昇も大きく、5000回転近く回しても快速とは言い難い。エンジン回転数を抑えて、小さなペダル踏み込みに綺麗に反応してくれる小気味の良さが、このクルマの真骨頂といえるだろう。

なお4名乗車でも、少し鈍する印象が強まるが、この感覚は変わらない。余力感は大きく低下することなく、気持ちよく走ってくれる。スズキ車の中でもマイルドハイブリッドの使い方が最も上手いという言い方をしてもいいだろう。ちなみに全開加速でエンジンを高回転まで回しても、威圧的な騒音振動がないことも好感が持てた。

後席の広さはスモールクラスの中では圧倒的といっていいレベル。リヤドア開口部も大きく、乗り降りも容易。実用車の基本原則を踏襲したパッケージングも魅力のひとつ。

欧州仕様のアシをベースに、磨き抜かれたフットワークにも注目

フットワークは硬め。サスチューニングは欧州仕様寄りの日本専用設定とのこと。しっかりした車軸設計がもたらす、収束や据わりのいいストローク感は、走りの質や洗練さを感じさせるもので、操舵や加減速に神経を使わない操縦感覚も含めて、安心感にも優れた特性だ。ただ、路面のひび割れやパッチ等の路面の細かな段差には少々神経質な一面も併せ持つ。

ただ、速度が高くなるほどに頼もしさを増すフットワークは、このクラスとは思えぬほど。軽量小型車でありがちな煽られ感も感じにくく、ハンドリングも降り心地も落ち着いて走ることができる。

歴代モデル同様にタウンカーとしても優等生だが、高速長距離走行をより難なくこなせるように進化しているのが新型スイフトの強み。さらに停車維持機能付全車速型ACCや前走車追従走行ライン制御機能を備えたLKAなど、運転支援機能も上級クラス並みにアップデートされたことも心強い。200万円前後の価格設定や、走りの汎用性を考えると、実力モデルが揃うこのクラスの中でも、コスパの高さはトップクラスだ。

走りの質感向上も見逃せないが、進化したデュアルセンサーブレーキサポートⅡの採用もトピックス。検知カメラは従来型システムよりも画角が広がり、検知対象も自転車や自動二輪車が追加。より実践的なシステムに進化している。

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