2024年4月にマイナーチェンジを実施し、発売されたヴェゼル。今回のマイナーチェンジは、WR-Vとの棲み分けが一つのポイントだが、グレード構成の変更と、走りも含めて細部が進化している。そんなヴェゼルをリアルワールドで試乗したので、インプレッションをしていこう。
●文:川島茂夫 ●まとめ:月刊自家用車編集部
WR-Vとの棲み分けによるグレード構成の見直し
ホンダSUVのエントリーモデルとして追加されたWR-V。車種体系面の位置付けの上下関係はあるものの、車体寸法や標準排気量設定はヴェゼルに近く、両車は補完関係にある。今回のヴェゼルのマイナーチェンジのひとつの側面はWR-Vとの棲み分けにあり、グレード展開が変更されe:HEVの全モデルにおいてFFと4WDを設定。ガソリン車は4WDのみで4WD非設定のWR-Vの受け皿的意味合いもある。
また、従来は独立したグレードだった「プレイ」は最上級グレードベースのパッケージ仕様となった。また、中間グレードの「X」向けパッケージ仕様として新たにSUVらしさを強化した内外装の「ハント」を設定。キャラや適応用途の両面で多様性を高めている。
ホンダFFの新世代を感じた”走り”
グレード構成の変更も見所のひとつだが、走りの改良もマイナーチェンジの要点のひとつである。とくにFF車(e:HEV)はサスチューニングを変更し、乗り味が変わった。FF車のフットワークの変更は簡単に説明するなら4WD車に近づけたとなるのだが、個人的にはホンダFFの新世代と思えた。
印象的なのはリアサスの縮みストローク。コーナリングで定常円旋回の移行時にリアが軽く沈み込むようなFR車的な挙動を示すのだ。かといってハンドリングは回頭性優先ではなく、落ち着きのあるラインコントロール性を示す。軽やかで収まりのいい操縦感覚と乗り心地は2BOX車も含めて同車格FF車では高く評価できる。
4WD車でも”走り”の進化を実感
4WD車のサスチューンは従来型を踏襲しているが、4WD制御をオンロードでも積極的に後輪の駆動力を使うように変更。前後輪の差動制限が高まれば操縦性も挙動も収束性が高まり、操縦感覚も乗り心地も収まりのいい重質な味わいが濃くなる。FF車と比べると軽やかさには欠けるが、車格感の点では上位車種らしい味わいである。
エネルギーマネジメント制御が見直され、ストレスフリーに
e:HEVの制御は高速巡航でもパラレル制御域を縮小。具体的には緩やかな登り勾配なら速度域が高まってもシリーズ制御を持続。加速への移行を滑らかにしている。ドライバーにストレスを掛けないドライバビリティを優先した特性であり、山岳部の高速走行の運転しやすさやACCとの相性が向上した。
ガソリンモデルは、e:HEVモデルの走りの洗練感や余裕が高まったため、相対的に車軸周りの振動抑制や動力性能の差を多少意識してしまう。もっとも、1.5LのSUVとしては高く評価できる走りであり、手頃な価格設定もありコスパの優等生とも換言できる。
フィット譲りの多彩な後席収納やコンパクトSUVでは広い荷室など、従来からのキャビン実用性の高さに加えて走りを進化。e:HEVのFFと4WD、ガソリン車の走りのキャラの違いも合わせて魅力は一段とアップした。
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