
街を走行中、「標章車専用」と書かれた駐車場の道路標識を見かけたことはありませんか。この駐車場の正式名称は「高齢運転者等専用駐車区間」と呼ばれるもので、その名の通り高齢者のために設けられた駐車スペースのことです。高齢者専用駐車場が設置された目的は、高齢者が安全かつ快適に施設を利用できるようにするためですが、若者は駐車してはいけないのでしょうか?
●文:月刊自家用車編集部(ピーコックブルー)
病院などのそばに設けられている高齢者専用駐車場に、非高齢者が駐車してはいけないの?
高齢者専用駐車場は、病院/高齢者福祉施設/身体障害者施設/官公庁施設など、高齢者が日常生活で頻繁に利用する施設の周辺道路に設けられており、施設内の駐車場が埋まっている場合でも、近くにクルマが停められるように考慮されています。
高齢者は、身体的な問題や運動能力の低下により、駐車場から施設までの距離が長いと負担がかかってしまうため、施設の近くに専用駐車場を設けることでより快適に利用できるようになっているそうです。
そのため、結論から述べると、高齢者専用駐車場に非高齢者が駐車することは許されていません。
高齢者専用駐車場を利用できるのは「高齢運転者等標章車」のみで、それ以外の車両の駐車は禁止されています。
ただし、ここで言う「高齢運転者等」とは、高齢者だけを指すものではありません。
高齢運転者等には、70歳以上のドライバー/聴覚障害を理由に免許を免除されているドライバー/肢体不自由を理由に免許を免除されているドライバー/妊娠中または出産後8週間以内のドライバーが含まれます。
なお、「駐車禁止等除外標章」の交付を受けている場合は、除外標章を掲示することで高齢者専用駐車場に駐車ができるようになります。
高齢者専用駐車場での駐車違反、反則金は通常よりも2000円高
高齢者専用駐車場に駐車できる車両は、対象が運転する普通自動車に限られていますが、自家用/事業用や台数などの制限はないそうです。
またこれらの条件を満たしていないドライバーが高齢者専用駐車場に駐車すると、罰則が科されます。
具体的には、標章を提示しないで駐車した場合/標章に記載されていない車両で駐車した場合/高齢運転者等以外のドライバーが駐車した場合、ほかの場所より2000円高い反則金/放置違反金が科されるとのことです。
またここで注意したいのは、高齢運転者等以外のドライバーが駐車した場合について。
非高齢者が対象外なのはもちろんですが、出産から8週間以上経過した人/運転免許証の取り消しを受けた人など、標章を交付された事由がなくなった人も駐車ができなくなります。
標章の交付事由がなくなった場合は、住所地を管轄する公安委員会に標章を返納しなければなりません。
これに違反すると処罰される可能性があるため、用済みの標章は警察署/交番/駐在所/地域安全センターのいずれかに速やかに返納しましょう。
また、非高齢者が高齢者専用駐車場に駐車することの問題点は、単なるルール違反だけにとどまりません。
高齢者が駐車する場所を奪うことは、彼らの移動の自由や安全を妨げることになるため、施設から遠い場所に駐車せざるを得なくなった高齢者が、歩行中に事故に遭うリスクが高まる可能性も考えられます。
そのため、非高齢者は高齢者専用駐車場ではなく、通常の駐車スペースを必ず利用しましょう。
このように、高齢者専用駐車場は高齢者の安全と利便性を確保するために設けられた重要な施設です。
若者がこの駐車場を利用すると罰則の対象となるだけでなく、高齢者が安全に施設を利用する機会を奪ってしまうことにもなります。
自らの行動が社会全体に与える影響を考え、高齢者に対する理解と配慮を持つことが、よりよい道路交通環境の実現を目指すための第一歩と言えそうです。
※本記事の文責は当該執筆者(もしくはメディア)に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
最新の関連記事(交通/社会問題)
クルマ開発センター フェロー 御沓悟司氏が登壇 今回の安全技術説明会には、クルマ開発センターのフェローに就任し、車両安全技術全般の責任者も務める、御沓悟司氏が登壇。1990年の入社時から現在まで、長ら[…]
マルチパスウェイ戦略の下で、多様なパワートレーンが併存していくことをふまえた税制とする そもそも現行の自動車税制が何が問題なのかといえば、購入時の“自動車税の環境性能割”は消費税との二重課税。毎年払う[…]
道路管理も先進技術で高度・確実に みなさんも見かけたことがあるだろう、黄色く塗られた高速道路の巡回管理車両。交通管理隊が使用する、「高速道路パトロールカー」だ。その名の通り高速道路上に異物、事故などの[…]
保険料引き上げのおもな理由は「2つ」 そもそも、なぜ保険料が値上がりするかというと、保険各社の「保険金の支払いが急増しているから」だ。交通事故増加などで支払いが増えれば、各社の収支は当然悪化する。これ[…]
自然と速度が落ちていく場所が、大渋滞のスタート地点 お盆シーズンは、長期休暇と相まって帰省や行楽地へ向かうクルマで大渋滞となるのが恒例です。どうしても出かけなければいけないなら、なんとかこの渋滞を回避[…]
人気記事ランキング(全体)
身長180cmでも快適に車中泊できる! 標準ルーフだから街乗りも便利! ファシールバカンチェス ダイネット40は、リンエイプロダクト(本社:埼玉県川越市)の40周年記念車として2025年2月に発表され[…]
車の鍵も家の鍵もこれひとつに収まる 大阪・茨木市の革小物ブランド「クアトロガッツ」が手がけるのは、そのナンバープレートをモチーフにしたオーダーメイドの本革キーケース。愛車の写真を送るだけで、世界にひと[…]
作業者のストレスを軽減、従来比約1.4倍の高回転で時短を実現! KTCと言えば、自動車整備のプロも愛用する、ハンドツールの名門メーカー。そのKTCから、コンパクトなコードレスラチェットが新たに登場した[…]
“GT”として不遇の時代を生きた悲劇のスカイライン スカイラインシリーズとして5代目にあたる「C210系・スカイライン」は1977年に誕生しました。このモデルは「ジャパン」という愛称で呼ばれていて、そ[…]
コンテッサ1300クーペ(1965年) 高い技術から生み出された美しいクルマは、大きな注目を集めることに 今では、日野自動車が乗用車メーカーだというと、首を傾げる人も多いかもしれない。日本初の国産トラ[…]
最新の投稿記事(全体)
陸・海・空のモビリティと夢の力がテーマ 今回のホンダブースの展示では、陸・海・空にわたる幅広いモビリティを披露し、「夢の力」が生み出した多様な技術とコンセプトが示される。 展示の中心となるのは、202[…]
人気の「セレニウムグレー」を、208として初めて採用 「プジョー208」は、日本の街中での取り回しやすさに加え、独創的なデザインと先進運転支援システムを備えることで、多くのユーザーから人気を集めている[…]
センシング能力を強化し、「後席リマインダー」も全車標準装備へ 今回の仕様向上では、走行中に車両や歩行者を検知して衝突回避を支援する「インテリジェント エマージェンシーブレーキ」の左右検知範囲が拡大され[…]
日本初の「車専用」除湿剤が登場!AeroRide90がAmazonで販売開始 梅雨や冬の結露、長期保管車のこもり臭。クルマ好きにとって悩ましい車内環境の問題を解決してくれる、日本初の“クルマ専用”除湿[…]
生誕145周年のピカソ。その革新性に触発された創業70周年の老舗が手がけた特別記念モデル カトーモーターのパブロは、画家のピカソ生誕145周年とカトーモーター創業70周年を記念して作られた特別記念モデ[…]