
2024年9月に登場したシビックRS。ガソリンエンジンに6速MTのみの設定と聞くと、既存のスポーツモデル「タイプR」の廉価版なのかと思えてしまうが、公道試乗をしてみてキャラクターやコンセプトの違いが見えてきた。
●文:川島茂雄 ●写真:奥隅圭之
シビックの新グレードとして追加されたRS(ロードセーリング)
【HONDA シビック RS】 ●全長×全幅×全高(mm):4560×1800×1410 ●ホイールベース(mm):2735 ●トレッド:(mm)1535(F)/1565(R) ●車両重量(kg):1350●乗車定員:5名 ●パワーユニット:1496cc直4DOHCターボ(182ps/24.5kg・m) ●トランスミッション:6速MT ●WLTCモード総合燃費:15.3km/L ●ブレーキ:油圧式ベンチレーテッドディスク(F)/油圧式ディスク(R) ●サスペンション:マクファーソン式(F)/マルチリンク式(R) ●タイヤ:235/40R18
「RS (ロードセーリング)」というグレードは現行モデルではN-ONEとフィットに設定され、シビックは「RS」系統では最上級かつ最新となる。といっても搭載される1.5L4気筒ターボのパワースペックは標準系(LX/EX)と共通。
FF最速の座を求めたタイプRの2.0Lターボに対して最高出力は約150PS、最大トルクは約18kg・mほど低く、絶対的速さを基準にするなら比較対象にもならない。スペックで見るなら標準系の横並びのスポーティモデルなのだ。
操る楽しさを磨いたシビックRS
速さより操り心地にこだわっているのがシビックRSである。例えば専用設定の6速MTには慣性モーメントを従来型から30%減少させた軽量フライホイールを採用。加速性能の上乗せは僅かだとしても、シフティングの操作感向上には効果的。高回転まで回した素早いアップシフトでも気持ちよく決まる。6000回転超までストレスなく周り、軽快な加速感を持続するエンジンと相まって、速さを求めてなくても高回転まで引っ張りたくなる。
スコスコと入るシフトフィールも爽快
シフティングの心地よさのこだわりはダウンシフトにも表れている。タイプRにも採用されているレブマッチシステムを搭載。ダウンシフト時の回転合わせを自動化。空吹かしレスポンスがいいこともあって、これもスパッと決まる。ちなみにドライバーのアクセル操作が優先されるのでヒール&トウ等々のドラテクを駆使するのも可能だが、正直言って苦労してもレブマッチシステムほどぴたりと合わせられないので、試乗の途中からはダウンシフトはシステム任せだった。
レブマッチシステムのおかげで、シフトチェンジは気負うことはない。また、アクセル操作が優先のためドライバー自身でも楽しめる。
なお、レブマッチシステムはノーマル/スポーツ/ECONのいずれのモードでも作動。回転を抑え変速頻度が高い省燃費走行との相性もいい。走行状況に関わらず役立つシステムだ。
どのドライブモードを選択してもレブマッチシステムは作動する。
「こだわり」仕様の専用サスチューニング
RSのもうひとつの特徴が専用にチューンされたフットワーク。スプリングやダンパーだけでなくブッシュ類のチューニングまで踏み込んで仕立てられている。パワートレーン以上の「こだわり」仕様である。
その性能だが、一言で纏めれば近年のホンダ車のフットワークの最新仕様。高速域での安定性を重視したハードウェアセッティングをベースにアジャイルハンドリングアシスト(AHA)でタイトターンのライントレース性を向上させる。もっとも、標準系のフットワークも同様の思想で設計されているので大きな流れでは同じなのだが、更なるステップアップを図ったのがRSなのだ。
乗り心地でも挙動でも不要な揺れ返しや揺動がとても少ない。硬軟の尺度で言えば明らかに標準系より硬く、スポーツモデルらしいのだが、身体に堪えるような突き上げや振動が少ない。さらに言えば標準系では段差通過後に車軸周りの揺動感もRSにはない。
見えてきたタイプRとの違い
RSのハンドリング特性は速度や旋回半径による変化が少なく、どこでもいつでも弱アンダーステア。タイプRに近い特性だが、硬柔の按配が標準系とタイプRの中間。仲間や家族とのツーリングにも無理がないところで纏めているのもRSの美点である。
一方で、タイプRはFF最速を目指したスポーツモデル。2.0LのVTECターボエンジンにスパルタンな足回り。サーキットでのスポーツ走行で、コンマ何秒を削るように造られたモデルであり、リヤシートの空間も十分確保もされているが、日常でのレジャードライブに向いているとは言いづらい。
普段使いなどでは、突き上げ感や乗り心地の硬さが乗員の負担になることも。
価格はガソリンEXの約40万円高、タイプRの約50万円安。なかなか悩ましい価格設定だが、一般用途での使い勝手や経済性と良質なファントゥドライブの両立を求めるならRSはいいバランス。すべてが高水準で纏まっており、タイプRのような極限の速さを求めたモデルと違い、大人なスポーティモデルとも言える。ただ、個人的にはe:HEVのRSが追加されてほしいと思うのだが。
※本記事の文責は当該執筆者(もしくはメディア)に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(試乗インプレ)
細かな部分まで手が入った進化型「GRカローラ」 試乗した雪上コースはわずかな直線があるもコース幅は車幅×1.5倍程度。2速が主体となるRのキツいコーナーが連続する中回転域メインのコースだったが、従来モ[…]
自分の意思でエネルギーマネジメントができる、世界レベルでも稀有なクルマ 最新アウトランダーの走り味を語り始める前に、まずアウトランダーにしかできないことをおさらいしておきましょう。 まず、急速充電器が[…]
世界販売台数の2割を稼ぐ、三菱自動車の戦略モデルに成長 SUVがブームといわれ始めてもはや10年以上が経つでしょうか。小さいのから大きいのまでといったボディサイズはもちろん、これまでSUVなんて考えら[…]
PHEVモデルは、アルファード&ヴェルファイアの頂点に君臨するフラッグシップモデル さっそくアルファードPHEVの試乗車(6人乗り)を外観からチェックしてみると、ハイブリッドモデルとの大きな違いは見つ[…]
カタログモデルに昇格した進化型GRカローラ、ついに国内デビューへ! Gazooレーシングが、水素エンジンとともに、GRカローラをスーパー耐久の現場で鍛え続けているのはご存じの通りだが、今回の進化型GR[…]
最新の関連記事(ホンダ)
新ボディカラー「オブシダンブルー・パール」を追加 今回の一部改良では、「Z」「Z+」のインパネ下部とリヤドアにソフトパッドを追加したほか、「Z+」にブラウンのフルプライムスムースシート装着車を設定する[…]
お台場のパブリックビューイング会場で、F1を生中継 F1日本グランプリの直前もしくは開催期間に実施されるプロモーションイベントでは、レース開催日にはF1日本グランプリのパブリックビューイングが設置され[…]
高回転まで気持ちよく回るNAエンジン 日本人というのは、制約があってこそ創意工夫の実力を発揮する民族なのかもしれない。狭い国土に人がひしめき、多くが山岳地で耕作面積も狭ければ資源にも恵まれないというな[…]
軽自動車でも豪華で個性的なクルマが求められた時代。それを象徴するモデルとして誕生 1980年代の軽自動車市場は、1979年デビューのスズキ アルトなどの経済的な商用車がリードした。しかし、1989年に[…]
日本人のマイカー観を大きく変えた2BOX どの国においても、モータリゼーションの黎明期に誰もが憧れるのは、堂々としたステイタスを表現できるセダン。日本においても、初代サニーやカローラを筆頭とするマイカ[…]
人気記事ランキング(全体)
家庭の水道の蛇口に繋ぐだけで、不純物を除去した純水が使える 洗車時の水洗いでは、水道水に含まれる不純物(ミネラルなど)がボディ表面に残留することで悩んでいるユーザーも多い。 ボディディティーリングのプ[…]
Mモデルを含めた、3つのグレードが導入 BMW 2シリーズ グラン クーペは、プレミアム・スモールコンパクトセグメントに属するモデル。2019年に国内導入された初代モデルは、優雅なデザインと4ドアモデ[…]
トヨタ ハイエースベースのキャンパー ロングトレイン(カトーモーター) ベースとなる車両はトヨタのハイエース。アウトドアを中心としたユーザーに、非常に人気の高い車だ。 ハイエースはなんと言ってもクラス[…]
高回転まで気持ちよく回るNAエンジン 日本人というのは、制約があってこそ創意工夫の実力を発揮する民族なのかもしれない。狭い国土に人がひしめき、多くが山岳地で耕作面積も狭ければ資源にも恵まれないというな[…]
清潔感漂う落ち着いたインテリアに、高機能を詰め込んだ ネストツールズは、自宅のリビング空間さながらを移設するカスタマイズが高く評価されているキャンピングカーブランド。今回紹介する「ラミータ」は、ハイエ[…]
最新の投稿記事(全体)
LXへの特別な思いを持つ松山選手が選んだ、特別な装備が散りばめられた1台 特別仕様車“HIDEKI MATSUYAMA EDITION”は、米国でツアーを共に戦ってきた戦友としてLXに特別な思いを寄せ[…]
レクサスならではの走りの味”Lexus Driving Signature”を貪欲に追求 今回実施される一部改良では、ハイブリッド車の「LX700h」の追加と、「OVERTRAIL+」グレードが設定さ[…]
新ボディカラー「オブシダンブルー・パール」を追加 今回の一部改良では、「Z」「Z+」のインパネ下部とリヤドアにソフトパッドを追加したほか、「Z+」にブラウンのフルプライムスムースシート装着車を設定する[…]
Mモデルを含めた、3つのグレードが導入 BMW 2シリーズ グラン クーペは、プレミアム・スモールコンパクトセグメントに属するモデル。2019年に国内導入された初代モデルは、優雅なデザインと4ドアモデ[…]
お台場のパブリックビューイング会場で、F1を生中継 F1日本グランプリの直前もしくは開催期間に実施されるプロモーションイベントでは、レース開催日にはF1日本グランプリのパブリックビューイングが設置され[…]
- 1
- 2