
●文:川島茂雄(月刊自家用車編集部)
走りはどんなクルマなの?:レヴォーグよりもコンフォート志向が強め、家族も納得できる高速ツアラー
スバル レヴォーグレイバック(以下レイバック)は、レヴォーグをベースにサスペンションまわりのセッティング変更することで、SUV風の味付けをプラスしたモデル。
その成り立ちはインプレッサ→クロストレックの関係と同じだが、完全に独立したモデルとして成立しているクロストレックに対して、レイバックはまだレヴォーグの中のバリエーションモデルという性格が強め。
レヴォーグに比べると、車高を55mm上げて最低地上高も200mmを確保しているが、スバルSUVでお馴染みの悪路走破支援「X-MODE」は非装着。スバルのAWDシステムは走破性能に優れており悪路も無難にこなしてくれるが、クロストレックやレガシィアウトバックに比べると、オンロード寄りのモデルといえる。
応答性に優れるハンドリング感覚と乗り心地の良さを両立。上級プレミアムにふさわしい良質な走りを楽しめることが強み。
そのキャラを裏付けてくれるのが、サスチューンがレヴォーグに比べるとかなりマイルドの味付けになっていること。レヴォーグと同様に高速ツーリング性能を売りにするモデルであることは間違いないが、路面からの突き上げ感を上手にいなすコンフォート性を意識したセッティングとしたことで、サスの硬さを嫌がる家族(とくに奥さん)の不満を上手に解消できているという。
リフトアップやクラッディング処理の影響で、レヴォーグよりもボディサイズは若干大きくなるが、見た目の印象はまさにレヴォーグそのまま。既存ユーザーからの買い替えも視野に入れているのだろう。
エンジンは1.8Lターボで十分?:厚めのトルクが低回転域から発生。ターボとは思えぬほど扱いやすい美点が光る
ターボ=高性能と思うユーザーもいるだろうが、レイバックに搭載される1.8Lターボは少し印象が異なる。
過給器が付いたことでNAエンジンよりもパワーやトルクは優れているが、それ以上の強みといえるのが扱いやすさ。最高出力177ps/最大トルク30.6kg-mを発揮するが、注目したいのは最大トルク。1600〜3600回転という広い回転域で発生することもあって、低回転域でのコントロール性にも優れており、ごく浅いアクセル踏み込みでも力強さを感じることができる。
トルクで引っ張っていく感覚が車格以上の余力を感じさせてくれることも好印象を覚える部分。まさにダウンサイジングターボのお手本のようなエンジンなのだ。
パワーユニットは、最高出力177psを発揮するCB18型1.8Lターボを搭載。低中速域から自然に盛り上がってくる出力特性は、レイバックのキャラにお似合いだ。
雪道の実力は?:冬の道は得意中の得意。安心感に富んだ走りは大きなアドバンテージ
まさに冬の道は得意中の得意。ドライ&ウェットが混在するシャーベット路はもちろんのこと、踏み固められてアイスバーンになった路面でも、低負荷域域でのコントロール性の良さは健在で、まさに意のままにという言葉がしっくりとくる。AWDの出来の良さがもたす、安心感を強く感じる走りは、レイバックを選んで良かったと思えるセールスポイントといえる。
ちなみに今回の雪道試乗では、同コースをクロストレックS:HEVと走ったのだが、レイバックの方がフットワークはしなやか。上級モデルらしい余裕の高さも印象的だ。
レヴォーグが持つ基本性能の高さに、SUVの便利さや気軽さを上手に織り込んだ味付けは、これまでスバル車に漠然とした敷居の高さを感じていたユーザーにも、自信を持ってオススメできる。乗ってみると、狙いと違いは一目瞭然。オールシーズン/オールロードで活躍できる良質なツアラーなのだ。
買い得感はあるのか?:電子制御サスペンションにこだわらないなら、レイバックは一番手の選択になる
レイバックの標準グレードとなるリミテッドEX(399万3000円)。レヴォーグのSTIスポーツ系と異なり電子制御ダンパーは装備されていないが、フロントパワーシート/縦型ディスプレイオーディオ/高速道路上の渋滞時ハンズオフ機能まで対応するアイサイトX/ハーマンカードン製オーディオなどは標準装着されている。利便系装備の水準は、上級グレードのSTIスポーツEX(441万1000円)に匹敵する。電子制御ダンパーを除けば、十分なプレミアム性が感じられる装備と内装が与えられているといっていい。
レヴォーグ1.8Lターボ車との価格差は、中間グレードのGT-H EX(379万5000円)とは約20万円高、上級グレードのSTIスポーツEXとは約42万円安になる。装備内容と価格を比べると、レイバックはコスパの面でもかなりの優等生なのだ。
コンソール中央部に縦型ディスプレイを配置するスバル最新モデルに共通するスマートなレイアウトを採用。
キャビンまわりの基本形状と機能はレヴォーグとほぼ同じ。前後シートはトリコット/ファブリック地が標準だが、メーカーOPで本革シート(写真)も選択可能。プレミアムの演出もなかなか巧み。これも人気を集める理由になっている。
十分な広さを持つ荷室も見どころのひとつ。抜群のユーティリティ機能は使い勝手にこだわるユーザーにも安心してオススメできる理由になっている。
追加された特別仕様車「Black Selection」はアリかナシか?:ブラック加飾が好みなら、選んで損なしの買い得グレード
この冬に追加された「Black Selection」(424万6000円)は、黒を基調としたホイールなど同特別仕様専用の内外装のドレスアップが与えられたことがポイント。標準グレードのリミテッドEXよりも約25万円ほど高くなるが、20万円相当のOP装備(本革シートと電子ルームミラー)が標準装着されるため、実質的な価格差は6万円見当だ。
バッヂ/ホイール/シートカラーなどの内外装のブラックカラー代と考えるならば納得できる価格だが、性能や機能は変わらないので、ここは純粋な趣味志向の問題になる。個人的には特別仕様の「Black Selection」の方が精悍でプレミアム感も増したように感じられる。見た目を気に入れば、かなり買い得な1台だろう。
特別仕様車「Black Selection」は、インテリアの本革シート/ドアアームレスト/ピラートリム/ルーフをブラックアウトしたほか、エクステリアもブラック塗装の18インチアルミホイール/ドアミラー/ラスターブラック塗装を施したLAYBACK/シンメトリカルAWDリヤオーナメントなどを採用することで、ブラックイメージを強調。より上質さを際立たせた1台に仕立てている。価格は424万6000円。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(レイバック)
内外装を黒で染め上げた、1ランク上のレイバックを投入 今回の一部改良で、「Limited EX」をベースとした特別仕様車「Black Selection」を新設定。 特徴としては、インテリアの本革シー[…]
最新の関連記事(SUV)
最新技術の積極投入で、最先端のミドルSUVに進化 6代目となる新型フォレスターは、スバルの現行モデルが採用している最新技術と装備、デザインエッセンスを取り入れることでさらなる進化を実現。フルインナーフ[…]
BYDシリーズ第4弾となる新型クロスオーバーSUV 「BYD SEALION 7」は、高い評価を得ているEVセダン「BYD SEAL(ビーワイディー シール)」を基盤として設計されたSUV。 国内仕様[…]
荷台をまるごと交換するFTポーターエンデューロ 三菱のトライトンは、国内市場では珍しいピックアップトラックタイプの車両だ。また、SUVのように悪路走破性の高いため、アングラー(釣り人)からの注目度や人[…]
約30万円のパワーサイドステップを装着しても、価格アップは10万円に抑えた 今回導入される「ラングラー アンリミテッド サハラ パワーサイドステップ」は、「アンリミテッド サハラ」をベースモデルに、新[…]
特別なサウンドシステムで、音にこだわったキャビンを実現 ランドローバー・ディフェンダーは「不可能を可能にする」というブランドコンセプトをもとに展開されているランドローバーの中核モデルのひとつ。 そのブ[…]
人気記事ランキング(全体)
シートサイドのスペースを有効活用できるUSB付きポケット 車のシートサイドや、シートとコンソールにある隙間などはデッドスペースになっていることが多い。小銭などの小物を落としてしまうことも多く、一度落と[…]
ベース車両はスズキ エブリイワゴン 今回紹介する軽キャンパーのベースとなったのは、スズキの「エブリイワゴン」。コンパクトさと高い実用性で、キャンパーから注目を集めている車両だ。イベントで展示されていた[…]
ただものじゃない、激シブかっこいいプロボックス プロボックスは街でよく見かけるポピュラーな、トヨタの商用車のひとつ。そんな地味な、いかにもビジネス用途一点張りのプロボックスがSUV風の外観と、おしゃれ[…]
余裕のある室内空間を効率良く活用 ホンダのステップワゴンは、最大で8名が乗車可能な人気のミニバンで、現行モデルは初代から数えて6代目となっている。スタイリッシュなエクステリアデザインと、実用性の高さか[…]
世界で1台の車がつくれるStyle_iDの豊富なメニューでカスタマイズ ジャパンキャンピングカーショー2025のホワイトハウスのブースで展示されていた1台が、フリードクロスター HV メトロキャンパー[…]
最新の投稿記事(全体)
軽トラックTN360のボディを取り去ったフルオープンマルチパーパスカーだった ホンダZの誕生と時を同じくして鮮烈なデビューを飾ったのが、個性の塊とも言えるバモスホンダである。ベースとなっているのは、主[…]
ワイパーの拭きムラ・スジ残り、ビビリがでたら交換時 車のワイパーは常に過酷な環境にさらされている。強烈な日差しなどによる温度差や、オゾン・紫外線などの影響により日々劣化しているので、雨天時の安全確保の[…]
N-BOXカスタムの一部グレードに、LEDフォグライトとフォグライトガーニッシュを追加設定 今回実施される一部改良では、N-BOXカスタムの一部グレードに、LEDフォグライトとフォグライトガーニッシュ[…]
最新技術の積極投入で、最先端のミドルSUVに進化 6代目となる新型フォレスターは、スバルの現行モデルが採用している最新技術と装備、デザインエッセンスを取り入れることでさらなる進化を実現。フルインナーフ[…]
余裕のある室内空間を効率良く活用 ホンダのステップワゴンは、最大で8名が乗車可能な人気のミニバンで、現行モデルは初代から数えて6代目となっている。スタイリッシュなエクステリアデザインと、実用性の高さか[…]
- 1
- 2