
運転中、周囲との意思疎通を図る上で、ウインカーの存在は極めて重要だ。右左折や車線変更の際、方向指示器によって周囲に合図を送ることは法律上の義務である。だが、単にウインカーを出すだけで済む話ではない。「いつ出すか」というタイミングこそが、交通の安全と流れを左右するカギとなる。
●文:月刊自家用車編集部
ウインカーは“周囲への宣言”だ
方向指示器の役割は、右左折や転回、あるいは進路変更の意思を他車や歩行者に伝えることにある。これは単なるルールではなく、交通社会における最低限のコミュニケーション手段とも言えるだろう。
適切なタイミングでのウインカー使用は、他のドライバーや歩行者に「これからどう動くのか」を伝えるサインとなる。つまり、交通の円滑さと安全性を支える“予告”なのだ。
ウインカーを操作する様子
結論から言えば、右左折や車線変更の直前、あるいはその最中にウインカーを出すのは道路交通法違反にあたる。ウインカーが遅れることで、後続車や周囲の歩行者が進路変更に気づけず、事故リスクが高まるのは言うまでもない。
道路交通法施行令第21条第1項では、右左折をする場合、交差点の「30メートル手前」でウインカーを出すことが義務づけられている。さらに、道路交通法第53条第1項では、合図はその行為が終わるまで継続しなければならないことも明記されている。
ウインカーを利用するタイミングは、道路交通法に明記されている
つまり、右折や左折をする場合は、30メートル手前でウインカーを出し、曲がっている最中も点灯を続け、完全に曲がり終えた段階でウインカーを消す。これが法的に正しい操作ということになる。
車線変更時は“3秒前に点灯”が基本
進路変更においてもタイミングが重要だ。具体的には、車線を変更する3秒前からウインカーを点けることが法令で定められている。
この時間的猶予があることで、後続車や周囲の車両が速度調整や進路の確保をしやすくなり、不要なトラブルを回避できるわけだ。
ウインカーを使用するタイミングを理解することで、より一層安全な運転へとつながる
ただし、「30メートル前」というルールが常に最適というわけではない。たとえば時速60キロで走行していれば、1秒間に約17メートル進む。つまり2秒もかからずに交差点に到達してしまう計算だ。この場合、30メートル手前でウインカーを出しても、他車がその意図を察知し、行動を変えるには時間が足りない可能性がある。
視界が悪い場所や、交通量の多い市街地などでは、より早めにウインカーを出して周囲に十分な余裕を与えることが望ましい。ルールは最低限の基準であり、状況によっては“より安全な対応”が求められるということだ。
急なウインカーは迷惑なだけでなく、非常に危険だ。
ウインカーの出し忘れやタイミングの遅れは、合図不履行違反または合図制限違反として処理されることがある。違反点数は1点。反則金は以下の通りだ。
- 大型車:7,000円
- 普通車・二輪:6,000円
- 原付:5,000円
さらに注意すべきは、右左折や車線変更のあとの“ウインカーの消し忘れ”も違反となる点だ。合図が必要な場面では早めに点灯し、動作が終わったら確実に消す──この基本動作を徹底する必要がある。
左折・右折専用車線からの“直進”や急な車線変更もNG
ウインカー関連のNG行為として、意外と見落とされがちなのが左折・右折専用レーンからの急な車線変更や直進である。
たとえば、交差点手前で誤って右折や左折レーンに入ってしまったドライバーが、直進車線へ戻ろうとして急にウインカーを出し、割り込む。こういった行動は非常に危険だ。進路変更前にウインカーを出していたとしても、それだけでは免責されない。交通の円滑を阻害する行為として、道路交通法違反に問われる可能性がある。
こうした急な挙動は、特に交通量の多い交差点でトラブルを引き起こしやすい。前方車両がブレーキを踏んだり、歩行者や自転車と接触しそうになるケースもある。また、後続車がそれを避けようとして別の事故を招くケースも報告されている。
そして、このような危険行為のひとつに挙げられるのが「イエローカット」だ。 イエローカットとは、交差点手前にある黄色い実線(導流帯)をまたいで隣のレーンに割り込むことを指す。これは多くの自治体や交通警察も明確に「交通違反」として取り締まりの対象としている。黄色の実線は、進路変更を禁止している区間であり、これを無視してレーンをまたぐ行為は合図の有無にかかわらずNGだ。
つまり、右折レーンに入ったあとで「やっぱり直進しよう」として黄色の線をまたいで戻る行為――これがイエローカットであり、典型的な危険運転のひとつとされている。
ウインカーを出せばそれでOKと誤解しているドライバーも多いが、ウインカーは優先権を得る道具ではない。あくまで「これから進路を変えようとしています」という意思表示に過ぎず、他のドライバーが譲ってくれてはじめて成立するものだ。
専用レーンに入ってしまったのなら、ルールに従ってそのまま進行方向へ進むのが最も安全な選択肢だろう。たとえルートを間違えたとしても、安全に次の交差点で戻れば済む話だ。その一瞬の無理な進路変更が、事故や違反、あるいは重大なトラブルの火種になるかもしれないという意識を、すべてのドライバーが持つべきである。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(大人気商品)
クルマの内窓掃除が面倒になる理由はクルマの進化にあった 車内のガラス掃除は、外装洗車に比べて軽視されやすい。しかしフロントガラス内側の汚れは、夜間や逆光時に視界を大きく損なう要因になる。にもかかわらず[…]
タッチパネル時代の宿命、車内の指紋汚れ問題 カーナビやディスプレイは、もはやクルマに欠かせない存在だ。目的地案内はもちろん、エアコン操作や各種設定まで担うようになり、触れる回数は年々増えている。その一[…]
ドリンクホルダー不足は意外と深刻な“あるある問題” クルマの中にあるドリンクホルダーは、飲み物だけを置くものではない。小腹を満たすスナック、ボトル入りガム、灰皿、芳香剤など、実際は“なんでも置き場”と[…]
一見すると用途不明。だがSNSの反応は異常に熱い バズったカーグッズの多くは、見た目のインパクトが強かったり、使い方が一見わかりにくかったりする。このGONSIFACHA製スマホホルダーもまさにその代[…]
置くだけで成立するスマホスタンドという潔さ スマートフォンをどう置くか。この小さなテーマのために、これまで何度カー用品売り場をうろついたか思い出せない。エアコン吹き出し口に固定するタイプ、ゲル吸盤で貼[…]
人気記事ランキング(全体)
車種専用設計だから、ピッタリ装着。見た目にも違和感なし カーメイトと言えば、使い勝手の良い様々なカーグッズをリリースしており、多くのユーザーから評価されているブランドとして知られている。今回紹介するの[…]
仕事からプライベートまで、幅広い用途で活躍する「ナバラ」 豪州日産自動車会社がニューモデルを発表。その新型車の名は「ナバラ」。日本では馴染みのないモデルだが、世界の各地では愛される車両で、1986年の[…]
30周年記念車にも適合 ステップワゴン スパーダの力強く伸びやかなシルエットを強調し、フロントフェイスの存在感を高める「バンパーワイドガーニッシュ」。 フロントバンパーに重厚感とワイドな印象を付与する[…]
給油の際に気付いた、フタにある突起… マイカーのことなら、全て知っているつもりでいても、実は、見落としている機能というもの、意外と存在する。知っていればちょっと便利な機能を紹介しよう。 消防法の規制緩[…]
耐久性抜群でスタイリッシュ。便利な開閉式のリアラダー クラフトワークス(Fun Standard株式会社)は、実用性とデザイン性が高い、自動車用アクセサリーを多数リリースしているブランドだ。そのクラフ[…]
最新の投稿記事(全体)
車中泊を安心して、かつ快適に楽しみたい方におすすめのRVパーク 日本RV協会が推し進めている「RVパーク」とは「より安全・安心・快適なくるま旅」をキャンピングカーなどで自動車旅行を楽しんでいるユーザー[…]
良好な日米貿易関係の構築に向けて、日本でも成功しそうなモデルを厳選 カムリ(Camry)、ハイランダー(Highlander)、タンドラ(Tundra)の3モデルは、米国で生産され、彼の地で高い人気を[…]
SUPER GT GT500クラスでは、4連覇という金字塔を目指す 今回発表された2026年のモータースポーツ活動計画では、TGRが目指す「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」と「モー[…]
●車中泊をさらに快適に!新ボディカラーと装備もさらに充実 キャンプや車中泊に使いやすいと好評を得ている日産「NV200バネット MYROOM」。車名の通り、NV200バネットをベースに独自のカスタムを[…]
仕事からプライベートまで、幅広い用途で活躍する「ナバラ」 豪州日産自動車会社がニューモデルを発表。その新型車の名は「ナバラ」。日本では馴染みのないモデルだが、世界の各地では愛される車両で、1986年の[…]
- 1
- 2


















