電動化の影で、ゴルフのディーゼル車が到達した「正解」。ハイブリッドにはない安心感が好ましい【ゴルフTDI試乗】│月刊自家用車WEB - 厳選クルマ情報

電動化の影で、ゴルフのディーゼル車が到達した「正解」。ハイブリッドにはない安心感が好ましい【ゴルフTDI試乗】

電動化の影で、ゴルフのディーゼル車が到達した「正解」。ハイブリッドにはない安心感が好ましい【ゴルフTDI試乗】

現代の自動車市場は用途や嗜好の多様化が進み、かつてのように「この1台がクラスの基準」と呼べるモデルが定まりにくい時代となった。しかし、フォルクスワーゲン・ゴルフのステアリングを握ると、カテゴリーの指標という概念が消滅したわけではないことに気づかされる。1974年の誕生以来、コンパクトカーのベンチマークとして君臨し続けてきたゴルフは、最新の8.5世代においても、その本質を微塵も失っていない。

●文:川島茂夫 ●写真:奥隅圭之

通称「8.5」へ進化。最新ゴルフが突きつける不変の価値

2021年に日本導入された8代目ゴルフは、2024年にマイナーチェンジを実施。内外装や機能装備が大刷新されたことで、通称「8.5」とも呼ばれている。今回試乗した「TDIアクティブアドバンス」は、ゴルフ8.5の中核グレードのひとつで、ゴルフというクルマが持つ普遍的な価値を、改めて突きつけてきた1台だ。

水平基調のラインが際立つ端正なデザインは、一目でゴルフと分かる安心感を持つ。最新の「8.5」では前後ライト周りが刷新され、シャープなLEDヘッドライトや発光するVWエンブレムが、伝統のフォルムに洗練された先進性を加えている。

街中での扱いやすさ、高速域での絶大な安心感、そしてファミリーユースに耐えうる居住性と積載性。それらすべてを高い次元でバランスさせた設計思想は、まさに「ゴルフ以外の何物でもない」という確信を抱かせる。

インパネには、12.9インチの大型タッチディスプレイを配した最新インフォテインメントシステム「MIB4」を搭載。直感的な操作性と視認性、照明付きのタッチスライダーが備わったことで、利便性も向上。先進的なデジタル空間と機能美が高度に融合したコクピットが楽しめる。

人間工学に基づき、長距離走行でも疲れにくいホールド性と快適性を両立したシートも見どころのひとつ。アクティブアドバンスは専用シート表皮を採用し、質感も上々。後席もクラスを超えた膝周りのゆとりを確保し、大人4人が快適に過ごせる居住性と実用的な積載性を兼ね備えている。

ハイブリッドでは得られない「力強さと柔軟性」

このモデルの核心のひとつは、搭載される2L直列4気筒ディーゼルエンジンにある。

最新の排ガス処理システム「ツインドージング」を採用したこのユニットは、最高出力こそ150馬力と控えめだが、最大トルクは4Lクラスのガソリン車に匹敵する36.7kg-mを誇る。特筆すべきは、そのトルクが1600回転という低回転から発生することだ。

2L直列4気筒ディーゼルターボは、2つのSCR触媒を用いる「ツインドージング」技術により、世界最高水準のクリーン性能を誇る。1600rpmから発生する4L車級の太いトルクが、高速巡航での余裕と優れた燃費性能を両立。長距離走行で真価を発揮する。

日常の走行ではアクセルを深く踏み込む必要すらなく、7速DCTが巧みに高いギアを選択し、溢れるトルクで車体を悠々と加速させていく。高回転まで回しても息苦しさはなく、ディーゼル特有の柔軟性と力強さは、ハイブリッド車では決して味わえない独特のドライビングプレジャーをもたらしている。

低回転から湧き上がる大トルクを7速DCTが巧みに捌き、追い越しも合流も至極スムーズ。路面の凹凸をしなやかにいなす足回りと、微振動を抑えた静粛性が相まって、速度が増すほどにフラットな乗り味が際立つ。距離を走るほどに信頼が増す、質の高い走りだ。

シャシーの完成度も特筆に値するもの。路面からの入力をしなやかにいなし、不快な揺れ戻しを徹底的に排除した足回りは、距離や時間の経過を忘れさせるほど質が高い。過度な演出を排した素直なハンドリングは、ドライバーに絶対的な信頼感を与えてくれる。

高剛性シャシーとしなやかな足回りが、不快なロールや揺れ戻しを効果的に抑制。路面を捉える接地感が高く、コーナーでは4輪が吸い付くような安定感を実感できる。歴代ゴルフに共通する走りごたえは、最新8.5世代でも健在。

「アクティブアドバンス」が最も賢い選択である理由

さらに、この「アクティブアドバンス」(価格:450万8000円)というグレードの戦略性がお見事だ。

ひとつ上の「スタイル」(価格:463万8000円)よりも安価ながら、LEDマトリクスヘッドライトやヘッドアップディスプレイを標準装備し、HUD、ナビの標準装着など実用面での機能性はシリーズ随一と言える。

電動化が加速する現代において、長距離走行の適性と経済性を両立するディーゼル車の魅力は依然として色褪せていない。国産の上級ハイブリッド車を検討している層にとって、このゴルフTDIアクティブアドバンスは、一度は触れておくべき「本質的な一台」だと思う。

VWゴルフ TDI Active Advance
●全長×全幅×全高:4295×1790×1475mm ●ホイールベース:2620mm ●車両重量:1430kg ●乗車定員:5名 ●パワーユニット:1968cc直列4気筒DOHCディーゼルターボエンジン(150ps/36.7kg-m) ●トランスミッション:7速DCT ●駆動方式:FF ●WLTCモード総合燃費:20.8km/ℓ ●ブレーキ:ベンチレーテッドディスク(F)/ディスク(R) ●サスペンション:マクファーソンストラット式(F)/4リンク式(R) ●タイヤ:235/45R17

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