
普段、各所で見かける工事現場。そこには、様々な工事車両が出入りする。この工事現場の出入り口に敷設する黄色いマット「FODSマット」に注目が集まっている。従来の工法と比較して、大きなメリットを持つこのマット、果たしてどのような機能を持つのか? 詳しく見ていこう。
●文:月刊自家用車編集部
車両についた泥を落とす。従来の砂利工法に代わる「FODSマット」の実力
建設や土木の工事現場において、車両の出入り口対策は周辺環境を守るための極めて重要な任務である。現場から一般道路へダンプカーや重機が泥を引きずって出てしまうと、地域の環境汚染やスリップ事故の原因となるため、法律や施工管理基準によって厳格な対策が求められている。
工事車両のタイヤについた泥などを外に持ち出さないようにすることを求められる。
これまで、この対策として最も一般的だったのが「目の粗い砂利(砕石)を敷き詰める工法」である。粒径20〜40mmほどの単粒度砕石や割栗石を敷き、その隙間に泥を落とす仕組みだが、この従来工法にはいくつかの大きな課題があった。
砂利工法は、砂利の購入・ダンプによる運搬・重機を用いた敷設作業が必要であり、導入までに多大なコストと時間を要する。さらに工事終了後には、泥の混ざった砂利をすべて撤去し、産業廃棄物として処分しなければならない。この「使い捨て」による環境負荷とコストは、多くの施工業者にとって長年の悩みの種であった。
工事車両が外に泥などを持ち出さないよう管理する必要がある。
こうした中、従来の砂利工法に代わる革新的な新技術として今、国内で急速に注目を集めているのが、次世代型泥落としマット「FODS(フォッズ)マット」である。
タイヤを変形させて泥を押し出す新発想
FODSマットは、高密度ポリエチレンで作られた黄色いピラミッド状の突起が並ぶ、強固な連結式パネルである。砂利が泥を「削ぎ落とす」のに対し、FODSマットは「タイヤを変形させて泥を押し出す」という全く新しいアプローチをとる。
FODSマット
大型車両がマットの上を通過すると、独自の立体突起がタイヤの溝を物理的に押し広げる。これにより、溝の奥深くに詰まった粘土質の泥や小石が浮き上がり、マットの隙間へと確実にポロポロと落ちる仕組みである。車両総重量36トンクラスの超大型重機にも耐えうる強靭な設計となっており、日本の過酷な現場環境にも十分対応する。
FODSマットは、タイヤを変形ささせて、付着した泥や小石などを除去する。
砂利工法を圧倒する3つのメリット
FODSマットが従来の砂利工法や自動洗車機に代わって選ばれている理由は、その圧倒的な効率性と環境性能にある。
FODSマットは耐久性が高く、超大型重機にも対応する。
設置・撤去がわずか30分、重機も不要
砂利工法のようにダンプや重機を手配する必要はない。軽量なパネルを並べて連結するだけの手作業であり、作業員2名がいれば約30分で設置が完了する。現場のレイアウト変更に合わせた移設も容易である。
圧倒的なコストパフォーマンスと再利用性
使い捨てだった砂利とは異なり、FODSマットは100万回の通行に耐える極めて高い耐久性を持つ。工事が完了すれば回収し、次の現場、その次の現場へと何度でも再利用が可能である。長期的な資材コストの削減効果は計り知れない。
水も電気も使わないクリーン設計
従来の自動洗車機(湿式)のように大量の水を使用せず、汚泥水を処理するためのノッチタンクなどの付帯設備も不要である。水道や電気が通っていない山奥のインフラ工事や、排水が制限される都市部の現場でもその真価を発揮する。
国内のインフラ工事でも導入が加速
日本国内でも2021年頃からの展開以降、すでに数多くの実績が積み上がっている。
国交省などが管轄する高速道路のトンネル工事(舞鶴若狭自動車道など)をはじめ、長大な鉄道延伸プロジェクトといった大型の公共インフラ現場での採用が目立つ。出入り口の敷地に限りがある現場や、周辺地域への土砂飛散を極力防ぎたい現場において、スペース節約と確実な泥落とし効果を両立できる点がプロの現場で高く評価された結果である。さらに、その利便性は建設業に留まらず、大型トラックが行き交うリサイクル施設や、公道への泥持ち出しを嫌う大規模な農地など、民間分野へも導入の裾野を広げている。
建設業界全体でDX(デジタルトランスフォーメーション)や環境負荷低減(SDGs)が叫ばれる現在、施工のスピードアップとコスト削減、そして高い環境性能を同時に実現するFODSマットは、これからの工事現場の新常識として、従来の砂利工法を過去のものにしようとしている。
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