[第2回]子どもの車内置き去り事故はなぜ起きる? 「預けたつもり」が招く“うっかり”の危険性│月刊自家用車WEB - 厳選クルマ情報

[第2回]子どもの車内置き去り事故はなぜ起きる? 「預けたつもり」が招く“うっかり”の危険性

[第2回]子どもの車内置き去り事故はなぜ起きる? 「預けたつもり」が招く“うっかり”の危険性

「自分だけは、子どもを車に置き去りにすることはない。」

ほとんどの人が、そう思っているはず。しかし、実際に起きた車内置き去り事故を調べると、保護者が故意に子どもを残したケースだけではありません。「保育園へ預けたと思い込んでいた」「後部座席にいることを忘れてしまった」といった、“うっかり”による悲劇も少なくないのです。
アメリカの調査では、車内熱中症で亡くなった子どもの54%が、大人が子どもの存在を忘れてしまったことが原因とされています。

本記事は「子どもの車内熱中症」連載の第2回です。第1回では、車内温度が短時間で危険なレベルまで上昇することを紹介しました。今回は、子どもの車内置き去り事故がなぜ起こるのか、その原因と防ぐための仕組みづくりを解説します。 

●編集:月刊自家用車 ●原著:坂本昌彦医師『小児科医が教える子どもを事故から守る本』

なぜ子どもの存在を忘れてしまうのか? 人間の脳にある「記憶のエラー」

車内置き去り事故というと、「買い物中に子どもを車へ残した」といったケースを思い浮かべる人も多いでしょう。しかし、海外の調査では、死亡事故の半数以上が「子どもを乗せていることを忘れてしまった」ことによって起きていました。

日本でも「保育園へ預けたと思い込み、そのまま在宅勤務を始めてしまった」という痛ましい事故が報告されています。

海外ではこの現象を「Forgotten Baby Syndrome(忘れられた赤ちゃん症候群)」と呼び、保護者の愛情や責任感ではなく、人間の脳に起こりうる「記憶のエラー」として研究されています。

人間の脳は、毎日のルーティンを効率よくこなすため、「いつも通り」の行動を無意識に処理する仕組みを持っています。そこへ、

  • 睡眠不足
  • 仕事のストレス
  • 疲労
  • いつもと違う送迎担当
  • 通勤ルートの変更

といった要素が重なると、脳は「今日は保育園へ預けたはず」という誤った記憶を優先してしまうことがあるのだそう。その結果、後部座席に子どもがいることを忘れたまま車を離れてしまう――。これが「うっかり置き去り」が起こるメカニズムです。

「気を付ける」だけで置き去り事故は防げない

こうした事故は、「もっと注意していれば防げた」と考えられがちです。しかし、人間の記憶は完璧ではありません。だからこそ重要なのは、「忘れること」を前提にした仕組みづくりです。

置き去り防止には、次のような工夫ができます。

バッグや財布は後部座席へ置く

財布やスマートフォン、仕事用バッグなど、車を降りるときに必ず持つものをチャイルドシートの近くへ置きます。後部座席を見る動作が習慣になり、置き去り防止につながります。

ぬいぐるみを「子どもが乗っているサイン」にする

子どもが乗っていないときはチャイルドシートへ。子どもを乗せたら助手席へ。助手席のぬいぐるみが目に入ることで、「今日は子どもが後ろにいる」という視覚的なリマインダーになります。

家族や保育園とダブルチェックする

送迎後に家族へ連絡を入れる、登園が確認できなければ保育園から連絡をもらうなど、一人だけに頼らない仕組みをつくることも有効です。

チャイルドシートの位置を見直す

チャイルドシートは、ルームミラーなどで確認しやすい助手席後方への設置が推奨されています。

子どもを置き去りにしない工夫

まとめ|「注意力」ではなく「仕組み」で子どもを守る

車内置き去り事故は、保護者の不注意だけで説明できるものではありません。睡眠不足やストレス、ルーティンの変化などが重なることで、誰にでも起こりうる記憶のエラーが背景にあります。

事故を防ぐために重要なのは、「気を付けよう」と意識することだけではなく、後部座席を必ず確認する仕組みを日常に取り入れることです。

バッグを後部座席へ置く、家族と送迎を確認し合うなど、小さな工夫が大切な命を守ることにつながります。「自分だけは大丈夫」と思わず、誰にでも起こりうる事故として常日頃から対策に取り組んでいきましょう。

次回は、インロックなどによってこどもが車内へ閉じ込められてしまった場合の対処法について解説します。

坂本昌彦 著『小児科医が教える「子どもを事故から守る本」』

熱中症を起こさないことが大切

子どもの不慮の事故による死亡は、少子化の影響もあり、減少傾向ではあるものの、今でも病気を含むすべての死因のなかで上位を占めています。そして、不慮の事故による死者の過半数は4歳以下と、低年齢であることもわかっています。
事故が起こる場所別でみると、もっとも多いのは家庭内で、全体の4割を占めています。事故といえば家の外で起こるものと思いがちですが、そうとは限らないのです。

本書は、総合病院で小児救急を担当している著者が、保護者にむけてわかりやすく、家庭内での不慮の事故を予防するための内容をまとめました。項目ごとに「なぜ危険なのか」「ケガをしたり、事故に遭ったときの対応の仕方」「ケガや事故を防ぐためのポイント」「解説」で構成しています。
とくに「解説」では、事例とともに子どもを不慮の事故から守るための具体的な方法や考え方をアドバイス。「うちの子に限って」ではなく「もしかしたらうちの子にも」と自分ごととして捉え、「まさか!」「こんなことをするなんて!」とならないように、日頃から意識できるようにしましょう。

※本記事は、小児科専門医による書籍『小児科医が教える子どもを事故から守る本』で紹介されている内容をもとに、編集部が車利用時の視点から再構成しました。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。