
若い世代のひとの中では、クルマ好きでも「セドリック(&グロリア)」と聞いてピンとくるのはかなり希少ではないでしょうか。「セドリック&グロリア」は日産の高級セダンの代名詞的な存在で、40年以上にわたって日産のラインナップの重要な部分を支えてきましたが、2004年に製造を終了した10代目でその幕を閉じてしまいました。ここでは、その10代続いた「セドリック(&グロリア)」の中から、日産の歴史に重要な足跡を残した3代目の「セドリック」(グロリアは4代目)にスポットをあててすこし掘り下げていきたいと思います。
●文:往機人(月刊自家用車編集部)
1970年代、トヨタとの販売競争で勝利を収めた「セドリック・グロリア」
日産の「セドリック(3代目・230系)」が発売されたのは1971年です。「グロリア」とは姉妹車として認識されている人が多いと思いますが、シャーシやエンジンを共用するようになったのはこの3代目からです。
初代の「セドリック(30系)」は、それまでライセンス生産で販売していた「ケンブリッジ(オースチン)」に代わる国産の上級車として1960年に生まれました。それから日本の経済成長に合わせて、ボディを大型化して先進のメカニズムを採用した2代目(130系・1965年〜)にモデルチェンジ。そして1966年の「プリンス自動車工業」との合併を経て、1971年に3代目へとモデルチェンジされました。
姉妹車となった「グロリア」は、「プリンス」の最上級セダンとして「セドリック」より1年早く登場しました。合併までは独自の設計で進化が行われていましたが、合併によって「セドリック」と完全統合されました。
この時代の日産とトヨタは、大衆車の「サニー」と「カローラ」、小型車の「ブルーバード」と「コロナ」、高級中型車の「セドリック」と「クラウン」と、主力3クラスで真っ向勝負が行われていました。戦略の上手さや先進装備をいち早く導入することなどによって総合的にはトヨタ陣が優勢を保っていましたが、高級車クラスではこの代の「セドリック&グロリア」が勝利を収めたことで、日産の歴史に、誇れる足跡を残した車種として記録されています。
これは、プリンスと合併したことで「グロリア」の先進性を備えられて商品力が向上したことに加えて、ライバルの「クラウン」がデザイン優先の戦略を採ったことでトラブルが多発してイメージを下げたことによるものだと分析されていました。
日産 セドリック 4ドアセダン(スタンダード)
パーソナルな魅力が強かったハードトップに対し、「実用性」「堅牢さ」「フォーマルさ」を極めた、まさに日本を代表する「高級車」のスタンダードであった。下位グレードに装備された丸型4灯ライトは、官公庁やタクシー、パトカーで採用された。高級志向の強い四角2灯式に比べて「精悍で無骨」な印象を与えていた。
インパネ回りには、広範囲にわたって木目調パネルが貼り巡らされ、アナログ時計が中央に設置されていた。上級グレードは、高級ベロア調モケットを採用。厚みのあるクッションとボタン留めの意匠が、まさにリビングのソファのような座り心地であった。
L26型2.6L直列6気筒エンジン
1971年のマイナーチェンジで追加された2.6Lエンジン。ライバルであるクラウンが2Lエンジンを採用する中、いち早く2.6Lへと排気量アップさせ、余裕のあるトルクをアピールした。写真は、L26型シングルキャブ仕様エンジン。
L26型2.6L直列6気筒エンジン。
今のクルマにはない「ハードトップ」の採用も大きな話題に
若い世代の人には馴染みの無い単語だと思いますが、この代で採用された“ハードトップ”というボディのバリエーションも重要な要素になっています。“ハードトップ”=硬い上部、しっかりしたルーフという意味になります。ルーフがしっかりしているというのは遠回しな表現で、要はドアのサッシュ(窓枠)が無い構造のことです。この“ハードトップ”はサッシュやピラー(柱)が無いため、窓を開けた際に広い開口部が現れ、サッシュタイプとは比べものにならない開放感が得られるという点です。
これが、経済が成長して豊かになっていく時代にマッチして、ヒットする要因となりました。ちなみに「セドリック&グロリア」では在来の2ドアに加えて、国産車では初となる4ドアに“ハードトップ”が設定されました。キャビンが大きい4ドアの“ハードトップ”の開口部は驚くほどの広さで、これが販売促進の大きな要素となったと言って過言ではないでしょう。
4ドア ハードトップ
日本初のピラーレス4ドアハードトップとして1972年に追加されたセドリック。後のハイソカーブームの先駆けとなった。
ピラーのないデザインが印象的。窓を開けると開放感が味わえる。
窓を全開にした時に中央を遮る柱(Bピラー)がない「ピラーレス」構造による開放感と、流麗なスタイリングが人気を呼んだ。
セダンよりルーフが短く、リアデッキが長く見えるプロポーション。後輪の上のフェンダーラインが力強く盛り上がっており、当時のアメリカン・マッスルカーを彷彿させた。当時、クーペの主流であった、屋根にレザー風のビニールを貼る「バイニールーフ(レザートップ)」も採用した。
一部ではつぶされる車輌の代名詞という不名誉な印象も…
現役時代は、ドライバーズカーとして日産のフラッグシップのポジションを努めた「セドリック&グロリア」ですが、とある界隈では“つぶされたり転がされたりするクルマ”としてのイメージがクローズアップされ、ちょくちょくイジられています。2代目辺りから「セドリック&グロリア」はパトカーなどの警察車輌として導入されるようになっていて、一般的にもそのイメージが定着していました。
そうなると“刑事もの”の劇中車としても多く登場する車種となります。この代の「セドリック&グロリア」がイジられる羽目になったのは、「大陽にほえろ」や「西部警察」などの刑事ドラマの流行によるものでした。それまでは捜査中心の渋い展開がメインでしたが、時代が華やかになるにつれてハリウッドのようなカーアクションが導入されるようになり、カーチェイスの際に横転したり爆発したりというシーンが増えるようになります。
その際、現行車を転がしたり爆破したりしていては、さすがに予算を圧迫してしまうので、ほどよく旧すぎず、かつ安価で入手できる型落ちの高級車がよく使われることになります。人気の刑事ドラマは1970年代半ば辺りから盛り上がりを見せていたので、ちょうど良く型落ちの「230型・セドリック&グロリア」がピッタリだったようです。
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